第7話 誘拐

前回から少し時間が遡る


神無は蒼時と初めて会った公園の近くから2キロ程離れている少し田舎の場所に居た。


田舎といっても超能力者研究で多くの科学が発展したこの世界では、と言う意味だ


雑多な低いビルが立ち並びその町の真ん中にはその雑多なビルがシルバニアファミリーに見える位大きなビルが一つ立っている。


そのビルは日本の航空機器メーカー大手だ


日本の航空機器はまだ世界基準から見ると質は低い、理由は外国との国際分業をしないためだ。


日本には関税自主権が無く国際分業は不利なのだ、よって全て国内で作れる利点はあるものの質が低い面もあるのだ。


そんなビルがある街に神無は来ていた。


そしてそこで神無は蒼時に触れられてとっさに逃げてしまった事を悔やんでいた。


神無は自分の体に超能力が触れれば反陽子爆弾並みの爆発でも超能力なら完全に無効化することが出来る能力を持っている。


その為神無の能力を悪用しようと『ノア』という危険指定テロリストに狙われる羽目になったのだ。


その神無の所為で神無の周りから人は居なくなり、巻き込まれ、蒼時もその一人になるのが怖く逃げ出してしまったのである。


けれど蒼時は戸惑ってはいたけれど『ノア』の連中みたいに怖がったり好奇な目では見なかった。


神無にはそれが嬉しく、そしてまた逃げ出した悔しさが込み上げて来るのだ


(もう、ダメかな?嫌いになっちゃったかな?私が隣に居るなんて言ったのに自分で怖くなって逃げ出しちゃったし。会えるなら会いたいな・・・)


春がまだ始まっていないが季節の移り変わりである強い風が神無のワンピースを強く叩いている


(私って何でこんな何だろ?何で私にこんな能力があるの?教えてよ?)


ただただ神無は疑問を考え続けたが答えは出なかった。


次の日神無は蒼時と初めて会った公園の近くに来ていた


理由は蒼時が心配だったからだ


(私が一番良く知ってる筈なのに何で分んなかったのかな。人が去って行く悲しさを。私の事許してくれるかな?)


そう思い公園の近くに行ったら見覚えのある男3人組が居た


(あれは『ノア』の組織メンバーだ。何で?何でこんな所に居るの?あいつらはイギリス大使館が殲滅した筈じゃ・・・)


神無の考えを笑うように3人組の一人の首筋が神無の目に入った。


その首筋には神話で出てくるノアの箱舟の箱舟の絵が描かれていた。


ノアの組織メンバーは仲間の印に箱舟を自分の体に描く。そしてそれは頭に近くなるほど位は高くなる。


理由は裏切った時にその模様の場所が削り取られるからだ。顔に近づけば裏切れなくなり、裏切れなければ信用出来、位が高くなる。


その昇進方法を神無は知っていた。


そしてその3人組の顔も良く知っていた


神無は一度『ノア』に拉致られている、その救出の為のイギリス大使館による襲撃なのだが今は良いだろう


(あの3人は何をしてるの?)


そう考え神無は3人組に集中した


3人組は神無と蒼時が話していたベンチで何かをしていた。


神無の角度からは良く見えなかった。


(分からないけど危ない。蒼時君に教えなくちゃ!)


反射的に考え決めて神無は走ろうとしたがいきなり足が止まった


(もう、会う事は出来ないんだね。そりゃそうだよね、私と一緒に居たら蒼時君まで危険に晒すんだも。そんな事出来ないよ。だから別れを言ってここから逃げ出させよう、早く走らなきゃ)


そう自分に言い聞かせてるのに足は一向に動かない、そして神無の両目からは涙が零れていた。


(あれ?何で泣いてんの?早く教えて上げなきゃいけないのに。早く教えてこの町から避難させないと。)


しかし神無の足は一向に進まなかった


(早く教えなきゃいけないのに。早く私との関わり合いを消さなきゃいけないのに、前回は簡単に出来たのに、どうして出来ないの?早く消さなきゃいけないのに、私は消したくない。何でこんな気持ちに・・・)


それでも神無は泣きながら蒼時のを探した


神無は泣きはらし、気持ちを固めていた


(もう決めた!蒼時君を危険な目には合わさない)


そうして神無は蒼時の情報を探した


すると神無の目の前には探していた蒼時が居た、そしてその隣には綺麗な顔をした女性と一緒に。


神無がそれを見て神無は一つの疑問に当たった


(こんな幸せそうな蒼時君を連れだしても良いのかな?私の所為で、蒼時君のこの幸せを壊して良いのかな?)


神無は考えを決める事が出来なかった


神無は暗い路地裏で一人丸まっていた


(蒼時君は助けたい。その為にはこの町から出る必要がある、でもそうすれば蒼時君は今の幸せを無くすことになる。全部私の所為なのに、なんで解決できないの?)


神無はその答えの出る筈の無い問いの自問自答を繰り返していた


そしてその自問自答を30分ほどしていたら神無の近くに人が集まっていた


首に箱舟のマークがある男が神無に語り掛けた


「久しぶりだな、嬢ちゃんよ。」


神無は慌てて起き上がり周囲を確認した


「あ、あなたは!」


「覚えていたのかい?嬉しいね。あっ!別にロリコンじゃ無いからね」


相手は笑いながら神無に喋りかけ近づいてきた


「ち、近づかないで!」


「それは出来ない相談だな。お前には戻って来て貰わなくちゃいけないからな。お前が居ないと俺らの目標が達成出来ないからな。」


「そんなの、私に関係無いじゃない!」


「そんな事言わずに来てもらうぜ」


男は神無の腕を引っ張るが神無は


「離してよ!ガブッ」


男の腕に噛みついた


「い、痛っ。このガキ!」


そんな言葉を神無は聞かずいきなりのことで茫然としてる仲間たちの間を抜けて逃げた


「ば、ばっかやろ!早く捕まえろよ!多少手荒でもいい!」


その言葉を聞くと男の一人が手を前に出し神無の体に照準を合わせた


そして次の瞬間神無の前で爆発が起こった。


この男の能力は範囲10メートルの空気に真空を作れる能力だ、そして真空になった所に空気がなだれ込み爆発が起こる仕組みだ


「よし!」


声を聞いた神無に腕を噛まれた男が怒鳴った


「何がよし、だ!相手は能力を無効化すんだぞ!そんなん効かねえよ!」


そんな会話をしていたら爆発の所為で辺りに煙が立ち視界が悪くなっていた


(早く蒼時君に知らせないと!)


そう思い神無は蒼時の働いている本屋に向かった


神無が着いた時はちょうど蒼時の仕事終わりの時だった


神無は話掛けようとしたが、上手に声が出ず後を付ける感じに成ってしまった。


後ろに付いてると蒼時が曲がりそこを曲がろうとしたら蒼時が


「誰か居るのか?」


と声を発した。


そして神無は姿を蒼時の前に出した。


神無は蒼時に肝心な事は伝える事が出来なかった。


蒼時の幸せを壊してしまうかもしれなかったから。


言い終わり罪悪感と拭えない焦燥感に苛まれながら神無はあの時と同じようにその場から逃げてしまった。


神無は町の中央に大きなビルが建つ街に戻って来ていた


神無は泣きはらしもう出ないと思ってた涙がまた出てる事に驚き、また泣いていた


すると後ろから話しかけられた


「こんにちは、お嬢さん」


「あ、あなた達」


そう『ノア』の組織メンバーだ


「この前は逃がしたけど今回は逃がさないよ」


「ふん!や、やって見なさいよあなた達の能力何か効かないんだから!」


「そうか・・・残念だよ」


すると神無は後頭部に強い打撃を感じた


「確かに嬢ちゃんには能力が効かない、けど、それだけだろ?意味不明の力を持ってても、結局打撃の一つ躱せないなら意味無いだろ?」


「あ、あな・・・」


そこで神無の意識が途絶えた


神無は見知らぬ天井があるところで起きた。


「痛っ、」


神無は後頭部に強い痛みを覚えながらも何とか立ち上がろうとした


「おはよう、お嬢ちゃん」


なんともテンプレな悪役だがそいつが神無の前に立っていた


「さぁ、早く参加してくれよ。じゃないとおじさん困るぜ」


「断ったら?」


「蒼時って言うのかな?あの男?まぁそいつをバラバラにしてお前の今日のご飯にしてやるよ」


神無はこの時蒼時をあの町から逃がさなかった事を強く後悔した


(わ、私の所為で・・・)


「どうする?手伝うか?」


「分かったわ」


神無の苦渋の決断だった


神無は『ノア』の目的は良く知らなかったが多数の死者が出ることは予想することが出来た


「じゃぁ、今日からお前は『ノア』日本支部の仲間だよろしく頼むぜ」


「わ、分かったわよ!」


その声を男は聞いた途端少し笑みをこぼし部屋を後にした


(どうやって逃げよう?あいつが出た扉は鍵が掛けられてる、窓は無い壁を壊すほどの力も無い。どうすれば?)


神無は色々な策を凝らしたが案は出てこなかった


すると30分後くらいに扉が開いた


「よぅ、待ったか?新人」


男の手には焼き印が握られてあった


「ま、まさかそれを私に?・・・」


「当たり前だろ?部下なんだから」


さも当然と言った口調で男は神無に熱せられた焼き印を近づけようとした


「や、やめて。お願い、やめて」


「まぁ、頑張れ」


そういった直後に男は焼き印を神無に振り下ろした


神無は息を呑み、来る熱に耐えようとした


しかし熱は一向に来ない


すると神無の耳に金属が落ちた鋭い音が聞こえた


そして二度と聞こえて来る筈の無いけど聞きたかった声が聞こえた


「神無、待たせたな」


簡単な口調だった


その声を聞き神無は目を開けると目の前には黒の緩いズボンに青いTシャツその上に白のシャツを着た、初めて会った時と同じ格好の蒼時の姿があった。


いや正確には違う


その服装に左手に青のワンピースを持ち右足を振り上げ男の手に持っている焼き印を振り落としそのまま上に行くように顎に当たっている


そんな姿を見て神無は


「助けに来てくれたの?」


蒼時は少し照れるように笑い


「服をプレゼントするって言っただろ?」


と口を開いた






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