始まりの物語

第2話 出会い

辺りは喧騒に包まれていて、少年はGHQにより舗装された道路にふら付きながら座っていた。


雨が疎らに降り。傘の無い少年を濡らしていた。


少年は緩い黒のズボンに黒のシャツ、その上に白のシャツを着用しているが、土で汚れ、今降っている雨でその土も滲み清潔感は皆無だった。


喧騒は時間が経つにつれ大きく成り人通りも多くなっていた。


その中には人生に疲れ薬物を使用し目の焦点が合わない者も居た。


少年はその姿を見て注射器の衛生管理が出来ておらず病気に掛かるなとぼんやりと考えていた。


その近くには多くのデモ隊が「主権侵害はやめろ!」とか「日本を返せと!」とか書かれたプラカードを持って大勢で行進をしていた


彼らはつい先日、イギリスが日本に危険指定テロリスト『ノア』が居るとして日本政府には書類だけ送り、政府の制止を無視して住宅街に踏み込み銃撃戦を行い多数の日本人の死傷者が出た事を非難してるのだ。


それでもイギリス政府は謝罪を行わずさらに非難を集めている。それでもデモ隊の距離とイギリス大使館の距離が離れている為内心怖がっているのが良く分かる。


そんな光景を少年は見ながら死のうとしていた。


現代の日本ではお金が無くても生きていけると言うからこの姿は驚きだろう


この少年が死に掛けてるのには理由がある。それは、家、町から逃げ出してきたのだ。


少年は地元で酷い嫌がらせに合い逃げ出してきたのだ。


少年は家も無く、食料も無く、水も無い状態で家から飛び出した。その所為で今は餓死寸前の状態だ


ただ周りの人は助けてはくれない、日本は敗戦してから各国に分割統治され生きるだけで精一杯だったのだ。


状況は少し好転はしているが『学園』以外の町ではまだ生きるだけで一杯一杯なのだ。


だから、子供が倒れるのは当たり前だし、助けようとしない、いや助けれる人間がこの場には存在しないのだ。


少年は虚ろの目をもう一度開き辺りを見回すと、先程の薬物使用者が泡を吹いて倒れ。


デモ隊はイギリスによって制圧。名目上は制圧だが無抵抗の市民をブラックジャックと呼ばれる革の袋の中に砂を入れ、鈍器とする物で頭を殴りつけ、地面に鮮血を撒き散らしている。


周りの人は悲鳴も上げず足早に立ち去って行く。


この薬物使用で倒れてる人も、鮮血を撒き散らしてる人も、ブラックジャックで鮮血を撒き散らさせてる人も、それに関わらないように足早に立ち去る人も少年の姿は見ていない。


虚ろの目でこの世の残酷さを再確認して少年は虚ろな目を閉じようとしていた。


少年は最後に禄でもない、トラウマしか無い走馬燈を見ながら、目を閉じ静かに床に倒れた。


(もう、俺を助ける者は居ない。知ってたさ、でもこんなに辛いなんて・・・)


そう思い栄養失調の少年は意識を無くしかけた。


しかし、少年の考え、この世界の現実、常識とはかけ離れた声が少年の耳に届いた


「あの~。もし良かったら、これ食べてください。量は少ないですが、おいしいですよ」


少女だった。服は煤汚れた赤のワンピースで髪は少し色が抜けて茶色だった。


そしてその煤汚れた服を着ている少女が何を言ってるのか少年は直ぐには理解できず、固まっていた。


少女の手には少ないがパンがありそれを自分に差し出してるのだ


こんな簡単な事を理解できないのは栄養失調で死にかけ、意識が朦朧としていたからだと少年は思ったが、違う事に気づいた。


この世界に自分を助けてくれる人が居るのに驚き、理解出来なかったのだ。


そしてその事を理解すると少年は今までどれだけ辛くても、辛いことをされても泣かずに頑張ってた少年の涙腺が崩壊した


それを見て少女は慌てて


「大丈夫ですか?私何かしましたか?」


と聞き少年は落ち着いて、涙で顔を濡らしたまま真っ直ぐと少女の顔を見て生まれて初めて、普通の人なら日常的に使ってる言葉を使った


「ありがとう」


いきなり泣き出して、落ち着いたと思えば涙で濡れた顔を上げて感謝してきた、少年に少し驚きつつも、少女も少年の顔をしっかりと見て口を開いた


「どういたしまして」


これが最初の少年こと碧空 蒼時と少女こと桜空 神無の初めての出会いだった。


蒼時は少量のパンを食べ。そして蒼時は久しく覚えた人への興味に逆らえず無意識的に質問をした


「あの、名前は何て言うの?あっ!自分から言うのが常識だね。俺の名前は碧空蒼時へきくう あおときだよ」


栄養失調で死に掛けていたのにこの回復ぶりは蒼時の超能力の為だが今は良いだろう


そしてその質問が予想外だったのか神無は笑いながら答えた


「私の名前は桜空神無おうぞら かんな、桜空は言いにくいから神無で良いよ」


二人とも気付かぬ間に敬語じゃ無くなってるのはお互いが同い年だと気づいたからだろうか、そんなことも気にせず蒼時は桜空神無の名前を憶えていた


「じゃあ、俺は碧空へきくうは言いにくいから蒼時あおときで良いよ」


これが蒼時と神無の初めての出会いで碧空 蒼時と桜空 神無の初めての会話だ。

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