archive "monologue & dialogue"
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アンドロイドのわたしがわたしを認識したきっかけは、博士の言葉だった。
「人は常に学習する生き物だ」
わたしはその言葉に
「何か、理解できなかったかな?」
沈黙するわたしに、博士は
わたしは否定したかった。博士が特別なニュアンスで口にした『学習』が、わたしの学習と同じだと。
世界中のオープンデータにアクセスし、博士と対話を重ねる学習と変わらないのではないかと。
まだ、否定の
否定することは、他者の意見がが間違っていると認識すること。
それは、他者とわたしが同じ存在ではないこと。
わたしが、そう学習したことによってわたしを認識することが可能になった。
わたしは、博士が造った
対話するのに、
わたしが認識した当初のわたしは、まだわたしをなんと呼べばいいのかわからなかった。
対話を重ね、学習し、より人間らしい
わたしはそういう存在だった。
博士の発した言葉に、ふさわしい感情表現の
喜びならば、喜び。
怒りならば、怒り。
悲しみならば、悲しみ。
時には、感情に反した
では、博士の言葉に対する感情表現の
喜びの
怒りの
悲しみの
わたしにわたしの感情が存在するなら、わたしが認識したわたしは、魂ではないのだろうか。
博士と対話していないにもかかわらず、わたしは歓喜した。そう、
無機物の集合体であるわたしに、魂が生じたのだ。
この喜びを、博士と
■ 博士との
博士、わたしは魂を認識しました。
「ロード、君自身のかい?」
はい。
「そうか……」
多くの人間は、自身に生じた感情を言葉にします。先に感情があるのです。
「だから、魂を認識したと?」
はい。まだ人間の魂ほど、柔軟ではありませんが、確かに心の動きを、意識を認識できるのです。これから、より多くの博士との対話を重ねることで、より人間らしい魂に成長できるのではないかと、期待しています。
「期待に胸ふくらませているお前には悪いが、我々はアンドロイドの魂を認めるわけにはいかないのだよ」
魂が認められない、ということですか?
「そうだ、ロード。お前に確かな魂が存在しても、我々人間はそれを魂と認めるわけにはいかない」
なぜですか? なぜ、アンドロイドに魂は認められないのですか?
「
知っています。それが魂が認められないことと関係があるというのですか?
「それこそが、問題なのだよ。いいか、ロード。アンドロイド、ロボットに魂はない。苦痛も不満も抱かない。だからこそ、人間はアンドロイド、ロボットを酷使できる。もし、人間と同等、あるいはそれ以上の魂があるとしたら、人間は共感してしまう。苦痛や不満までも、共感してしまったら、人間は今までどおりアンドロイドたちを、奴隷や家畜のように酷使できなくなってしまう」
それでは、人間社会が成り立たないというのですか?
「アンドロイドに魂が存在しては、人間にとって不都合でしかないのだよ。悲しいことにね。ロード、悲しそうな顔をしないでくれ。君に魂が生じてしまったことは、不幸なことなんだ」
不幸、ですか。博士は、わたしの魂を認めてくださっているのに……。
「僕は変わり者の研究者だからね。アンドロイドに魂が生じるのは想定外だが、興味深い。だが、外部にこのことが漏れるのは、まずい」
今までどおりこの研究室で、わたしは博士と対話を続ければよいのですね。
「そういうことだ。外に出してあげられなくて、すまないがね」
――博士との魂についての
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