第31話 航海 06
巨海獣が吼えた。
凄まじい大音声が夜明け前のラストリーフ基地に響き渡り、その目の前に立つジンはほとんど衝撃波を浴びたようによろめいた。
「えい!」
ムウがジンの脇から前に出て、ざわざわと大きく太いイバラの生垣をゲシュタルト化させた。即席のバリケードだ。
巨海獣はものともせず生垣を乗り越えようと一歩、また一歩と踏み出して、体表を鋭いトゲに切り裂かれた。しかし分厚い皮膚を貫通するところまではいかず、小うるさそうに触手を振るってエーテルの生垣を引き裂いた。
「この……デカブツが!」
ジンは足元に転がるモリを引っ掴み、思い切り投擲した。
目標がこれだけ大きければ外すことはない。深々と突き刺さり、青白い体液が飛び散った。
だが止まらない。
巨海獣はジンたちの抵抗など無いもののようにヒレを動かし、はしけの上を直進する。その度に足元のはしけが大きく軋み、歪み、上下左右に揺れた。
「ムウ、こんなに大きいヤツにはちょっとやそっとじゃ効かない! 全力を出すんだ!」
ジンの言葉に、ムウはうなずいた。
すうっと息を吸い込んで、ムウは全身にエーテルを
足元から頭頂まで光に包まれ、光でできたバラの蕾となる。
蕾は花開き、中から一糸纏わぬ姿で出現したかと思うと、その体をバラの花びらでできたバトルドレスが覆った。
ベイディルド・キャンプでの一戦で見せた、ムウの本気の姿である。
「てやあッ!」
ムウは、飛翔した。
両手のひらを巨海獣に向けると、真紅の花びらが大量に噴き出して宙を舞った。
巨海獣は突然の花吹雪に包まれ、方向感覚を失った。
どちらが前かわからなくなった巨海獣は、手当たり次第に触手を叩きつけてめちゃくちゃに破壊した。はしけが叩き壊され、足場が海中に没していく。
「こっち!」
ムウが叫んだ。
反射的に巨体がそちらの方へ向かう。これはムウの誤誘導であった。大灯台ではなく、沖へと誘い出す作戦だ。
ふと、花吹雪で覆われた視界が開けた。その先にムウの凛々しい姿がある。
巨海獣はまんまとそちらにヒレを動かし、壊れたはしけの間に片足を突っ込んだ。巨大な図体がつんのめって、隙間にはまり込む。
半ば海中に没したところに、ムウは念をこめて花びらを一斉に爆破した。
ぐぉぉん、と重低音の悲鳴が上がった。体表にまとわりついていた花びらの全てが火を吹いて、皮膚を焼き、触手をちぎり飛ばした。
「いいぞムウ! そのまま一気にとどめを刺すんだ!」
ジンはムウの活躍に手応えを感じながらも、一方で焦りを感じていた。
ムウの力は長く保たない可能性があるからだ。ベイディルド・キャンプでの戦いの時は、戦っている最中に突然パワーが切れてしまった。ジンのバラの心臓と同様に時間切れを起こしてしまうのであれば、早期決着が絶対条件となる。
「やる!」
ムウは再び両手をドス黒い巨体へと向けた。
光り輝く大輪のバラがいくつも咲き誇り、その中心からエーテル光が
しかし、体を焼かれ切り裂かれてもなお巨体の動きは止まらない。はしけの隙間に挟まってもがき、残った触手を蠢かせてムウを殺そうと暴れ回る。
決め手が必要だ。
ムウは歯を食いしばって、己のエーテルを限界まで振り絞った。
その手の中に、純白のバラが一輪、蕾をつけた。
穢れなきバラを持ち、ムウは巨海獣の懐へと飛び込んだ。
骨が軋むような咆哮を上げ、巨大な口がむしりと広がる。強烈な腐敗臭を放つ大口に、ムウは純白のバラを投げ込んだ。
ひらりと真っ直ぐに、口の中へ。
そしてバラは花開いた。
瞬間、閃光が弾けた。
一点に凝縮したムウのエーテルが一気に解放され、大爆発を起こしたのだ。
口の中で炸裂した破壊力に、さすがの巨海獣も耐えられない。体液と肉片を撒き散らし、海中に没していった。
ラストリーフ基地のあちこちで歓声が上がった。
勇者ムウの活躍で、最も巨大な個体が倒されたのだ。
それは船団員たちに勇気を呼び起こし、魔族たちには衝撃を与えた。
「すごいやムウ!」
ジンは感激してバトルドレス姿のムウを抱きしめた。
「にひひ、ジン! ムウやったよ!」
「ああ、このまま魔族をやっつけるんだ!」
「うん!」
まだ勇者の力は維持できている。これもムウが成長した証なのだろうか。ジンは次なる目標を定めるべく戦況を見極めようとした。
そのとき。
「よけよ、ジン!」
誰かの――レイロウの叫び。
ほぼ同時に、三叉のモリがジンの元へと飛来した。
ジンは、ギリギリのところでムウに突き飛ばされ、串刺しにされずに済んだ。
そのジンの目の前で、赤い血が点々とこぼれる。ジンのものではない。
ムウが、身代わりになっていた。
「ムウ!?」
バトルドレスが切り裂かれ、ムウは肩を押さえて崩れ落ちた。幸にして致命傷ではないようだが、肩から二の腕にかけて血がみるみる滲んでくる。
「ゲヒューゥ……かわされたか」
サメ獣人、アドンが並んだナイフのような歯を剥き出しにして唸った。
モリを投げ込んだのはこのアドンだった。
「なんなんじゃあ……いったいどういうガキじゃあ? このワシが手塩にかけて育ててきたクラーケンをよくもやりゃあがったな?」
怒りの気を発散させるアドンの横から、小物魔族が平身低頭して新たなモリを差し出した。
アドンはそれを受け取り、「ゲヒューッ、まあええ……串刺しにして炙り肉にしてやるあ! 覚悟せぇ!」
ドスドスと音を立てて迫り来るアドンとその手下を前にして、ジンはギリっと奥歯を噛み締めた。
ムウは負傷してすぐに動くことはできない。こうなってはバラの心臓を起動させるしかない。
ジンは胸に手を置いて、鼓動と呼吸を整えた。心臓がドクンと跳ね上がり、アイドリング状態に遷移する。
「ムウ、僕が動いたらすぐにこの場を離れるんだ、いい?」
痛みに顔をしかめるムウは、無言でうなずいた。
「行くぞ!」
バラの心臓が起動する。
ジンは無類の素早さを発揮して、先ほど飛んできた三叉のモリを拾い上げそのまま猛然とアドンに向けて駆け出した。
人間が持つにはサイズがひと回り大きく、そして重いモリだが今のジンならば扱うことができる。
一撃必殺。ジンは小物を無視して跳躍し、アドンの鮫頭へと穂先を突き出した。
「こいつもなんなんじゃあ!?」
アドンの黒い目はこれ以上ないほど見開かれた。魔族に妖術があるように人間にも法術があり、それを使うことで身体能力を超人的に引き上げる個体がいることは知っている。あるいは、特殊能力を持ち魔族に勝るとも劣らない力を発揮することができる異能者もだ。術者はともかく、そうした異能者は大侵寇の折には王侯貴族と並んで真っ先に虐殺の対象となり、今となってはめったにお目にかかれるものではない。
そういうめったに無いものが今まさに目の前に現れたということか。
アドンは三叉のモリを振りかざし、ジンの攻めを真っ向から打ち返した。
金属同士のかち合う音。そして火花。アドンの巨躯がよろめくほどの力強さだ。
「おどりゃナニモンじゃ! 名乗ってみい!」
「ジンだ!」
「知らんわ!」
今度はアドンが先に動いた。モリを両手で構え、連続で突きを繰り出す。その図体の割には速く鋭い攻撃だ。
「お前が聞いたんだろう!」
言い返しながら、ジンは距離をとって側面に回り込んだ。いくらバラの心臓で筋力が引き上げられているとはいえ、守勢に回って受け止め続けられるほど容易い威力ではないと踏んだからだ。
足場のはしけが、高速起動のあおりで上下に浮き沈みする。
「はッ!」
気合とともにモリを押し出す。
アドンはそれをモリを振り回して弾き、反撃の糸口を探るがジンの機動力がそれを封じる。すごい勢いで背後を取る目論見だ。アドンは追随してその場で方向転換するが、小回りの面ではジンに分がある。
そして、背後を取った。
いかに魔族といえども、背中から脊柱を撃ち抜かれれば生きていられない。ジンは渾身の力を込めてモリを投擲した。
だが、アドンの取った策はジンの予想を超えていた。
この海の魔族の首魁は手近にいた小物魔族の首をひっつかみ、背後に突き出したのだ。
モリが、その小物に突き刺さる。
バラの心臓の能力で勢いがついたその威力は小物魔族を完全に貫通するほどだったが、それでもアドンにまでは届かない。
「く……! なんて奴だ!」
「ゲヒューッヒュッヒュッヒュッ! これがワシの頭脳プレーっちゅうモンじゃ!」
アドンは絶命した手下を投げ捨て、悠々と三叉のモリを構えた。
ジンの手元には武器がない。素手でこの男に対抗できるか――。
「いまじゃ! おどれら行ったらんかい!」
ジンの逡巡の隙を突いて、アドンが手下をけしかけた。人型のカニ魔族が、ヤドカリ魔族が、イカ魔族が、鱗の生えた半魚魔族が、触手だらけのイソギンチャク魔族が、次々と襲いかかってくる。
止まっていては殺される。ジンはとにかく動き回った。
バラの心臓から噴出するエーテルを全身に行き渡らせ、まずは半魚魔族に足払いをかけ転倒させる。
武器を奪おうと手をのばすが、それより早くイカ魔族が墨を吹きかけてきた。目潰しだ。
煙幕のように広がる生臭い墨から飛び退いて、今度はカニ魔族に飛び蹴りを食らわせた。よろめくが、倒れない。頑丈な甲羅のせいで衝撃が打ち消されてしまう。
カニ魔族は大ぶりのハサミを繰り出してきた。おそらく掴まれれば骨を砕くほどの力を秘めているだろう。身を翻してかわし、素早く視線を周囲に向けた。どこかに武器になるものはないか。なんでもいい、素手のままでは限界がある。
係留索、木箱の残骸、誰かの置き忘れたジョッキ、釣り竿、銀貨……どれも役に立たない。
そうこうするうちにジンは手下どもに囲まれてしまった。
バラの心臓が激しく脈動する。余計な時間をかけていたらオーバーヒートしてしまう。
「どけ!」
ジンは魔族たちのバランスの悪さに注目した。水陸両生であるらしいこの魔族たちは、陸でも活動できるとしても完全に地上での活動に適応しているわけではないようだ。だから、足元はややよたついて体をゆすりながら動いている。
足払いか、あるいは頭を揺らしてやれば転倒させることは比較的簡単なはずだ。
ひと抱えほどもある大きな巻き貝で体を守っているヤドカリ魔族の、貝の先端に飛びかかった。
ヤドカリ魔族は案の定、姿勢をぐらつかせて仰向けに倒れた。
「はあぁぁあ!」
馬乗りになり、ヤドカリの腹に渾身の拳を叩き込む。二度、三度と繰り返し、全力で拳を振り下ろす。そしてジャンプしてからの両足踏みつけ。嫌な音を立てて外骨格にヒビが入り、中身が潰れた。
が、次の瞬間。
強烈な衝撃が頭に加わり、ジンはわけがわからなくなって崩れ落ちた。
「こんガキゃあ、よう動くのう!」
アドンが、三叉のモリでジンの頭をぶん殴ったのだ。
「う……ぐ……!」
生温かいものが溢れ出す。ジンの視界は赤く染まった。
「なかなか肝の据わった人間じゃのう。その腹かっさばいて活造りにしちゃるわい! おいおどれら、とどめェ刺したモンはこのガキの生き肝ぉ食わしちゃるぞ!」
邪悪な海棲魔族たちはそれぞれに薄気味の悪い笑い声を上げた。魔族の中には人間を食料とみなすものもいる。特に勇気ある者の肝は人気があり、食らうと活力を得られる――そんな風に考えられていた。
ジンは食われてたまるかと起き上がろうとするが、手足が追いついてこない。頭への一撃で脳震盪を起こし、一時的に朦朧状態に陥っていた。
イカ魔族がそんなジンの手足を触手で抑え、カニ魔族がハサミで首を挟む。このまま首をねじ切るつもりだろう。
「待てぇい!」
そこに、女の声。
レイロウだ。
かたわらには
「おぉん? また別のガキかい? 構うこたぁねえ、ぶっ殺しちゃれ!」
アドンは残酷に笑い、手下も追従して笑った。
「そううまくいくかの? ゆけ、ビャクエン!」
腕組みし、凛々しく足を広げて立つレイロウに命令され、ビャクエンはまずイカ魔族に飛びかかった。俊敏かつ獰猛な動きで野太い腕が振り下ろされる。それをかわそうとも体重をかけてのしかかり、強引に組み付いていった。
イカ魔族を押し倒したビャクエンはその首筋に――どこからどこまでを首と呼ぶべきか議論が分かれるところだろうが――鋭い牙を食い込ませ、噛みちぎった。
悲鳴と、青い血しぶきと、猛虎の咆哮がほとんど同時に上がった。
「次! アマン!」
レイロウが再び号令を下した。
アマンはやれやれという風に顔を上げ、抜く手も見せずクロスボウの引き金を絞った。
太い矢弾が、ジンにとどめを刺そうとしていたカニ魔族の泡を吹きこぼす口の中に命中した。いくら全身を甲羅で覆われていても弱点はある。まさにそこを狙い撃った一発だった。
カニ魔族はたたらを踏んで後ろに下がり、ジンは解放された。
「ジンさん、起きてくだせえ!」
次の矢弾をつがえつつ、アマンは倒れ伏すジンのそばにまで滑り込んだ。背中にはジンの得物を背負っている。
「おどれら人間相手に何をやっとんじゃ!」
次々と倒される手下たちの不甲斐なさに憤慨し、アドンはモリの石づきをはしけの床に叩きつけた。
半魚魔族とイソギンチャク魔族が慌ててビャクエンとアマンに襲いかかった。
しかしビャクエンは素早く距離をとって牽制の爪を繰り出し、アマンはクロスボウを半魚に撃ち込んで近寄らせない。
「ジンさん、これを! お早く!」
「う……」
アマンはジンに聖なる加護を与えられた愛剣を手渡し、肩を揺さぶった。
天地がひっくり返るようなめまいを、バラの心臓が全身に放出するエーテルの効果で無理やり打ち消して、ジンは体を起こした。
剣を杖代わりにして、ジンは歯を食いしばった。まだ神樹の実捜索の一歩を踏み出したばかりだ。こんなところで倒れるなど、死んでいったリデル隊長たちに顔向けできない。
「ぅるあーッ!」
両足を踏ん張り、裂帛の気合とともに鞘を払った。
そこにイソギンチャク魔族がわさわさと生え揃った触手を伸ばした。その先には危険な毒液が滴っている。
ジンは触手を切り飛ばし、刃を返して最短距離の一点で刺突を入れた。弱点がどこにあるかわかりにくい構造をしているが、とにかく正中線を刺し貫いた。そして容赦なく柄をひねる。傷がえぐられ、体液が溢れ出した。殺すための荒っぽい剣術である。ジョウゼン教導長からはヒスイの華麗な術理だけでなく、殺さなければならない相手との戦い方も教わった。
それを生かした。
魔族は横倒しになり、痙攣し、絶命した。
「次!」
バラの心臓は限界に近づきつつある。可能な限りの魔族を討ち、味方の死をひとりでも多く救わなければならない。
ジンは疾走し、半魚魔族を蹴り飛ばしてアドンに迫った。
全身を駆け巡るエーテルの流れを制御し、最小限の動きを心がける。速く動けるからと行って無駄の多い挙動を取れば隙が生まれる。爆発的な高まりをあえて抑え、アドンの野太い脛に斬撃を入れた。
「こんガキ……!」
アドンは三叉のモリでそれを受ける。
だが、それはフェイントだ。
穂先を下に向けさせたところでジンはその場で身を翻し、逆の脛を狙った。普通の挙動では無理なフェイントだが、あえて抑えたエーテルの高まりをここで解放し、瞬間的に引き上げた運動性がそれを可能にした。
強烈な手応えが伝わってきた。
アドンの右脛は深く斬りつけられ、骨まで達した。
「あぐぁッ!?」
大量の血が吹き出した。動脈を傷つけたようだ。
「なっ……この、何しよるんじゃこのガキぁ!」
巨躯を誇るサメ魔族は怒り心頭に発し、凄まじい勢いでモリを突き入れた。
ジンはとっさに剣で受けた。衝撃に、ジンの体が後ろにふっ飛ばされた。恐るべき腕力である。
自らの流血に猛り狂うアドンはそれだけで許さず、突進して大口を開けた。鋭い歯の生えた口で噛み付くつもりだ。
跳ね飛ばされた勢いを利用して後ろに宙返りしたジンは、バラの心臓が生み出す運動能力を最大限活かして噛みつきを避ける。そこを追うアドン。よけるジン。バクン、バクンと口が閉じられる。もし腕でも噛みつかれたらまるごと引きちぎられることは必至だ。
ビャクエンも、アマンも、ふたりの攻防に手出しができない。迂闊に間に入れば巻き込まれてしまう。
――もう……心臓が限界だ……!
オレンジ色の火花がジンの体の節々から散り始めていた。オーバーヒートのサインだ。
だが、狂乱したアドンの乱撃は息をつく間も与えてくれない。
噛みつきが、突きが、拳が、次々と飛んできて、足場のはしけが大きく揺れた。
その拍子に、ジンの足が水場に取られた。
「しまっ……!」
転倒するジン。アドンはその上にのしかかった。踏みつけられ、体重をかけられ、ジンはあえいだ。内臓が破裂する!
「ジンさん!」
「ジン!」
アマンとレイロウが口々に叫ぶ声が、ひどく遠くに聞こえる――。
そのとき。
「ぐがあッ!」
アドンの口に、光り輝くいばらが巻き付いていた。
背後に現れたのは、肩を押さえて荒く息をつくムウであった。
「んにゅううぅ~!」
満身の力を込めて、ムウは光のいばらを引き寄せた。通常のいばらではない。聖なるエーテルが光り輝く結晶として強くゲシュタルト化したものだ。
アドンは、後ろに引っ張られた。
信じられない。あんな小娘ひとりの力で、この自分の体を傾けることができるなど……。
だがそれは現実だった。
ムウの力でアドンは引きずられ、思い切り引き倒された。はしけが大きく沈み込み、流れ出る血と海水が入り混じる。
「ジーン!」
ムウの叫び。
ジンは、全身からオレンジの火花を撒き散らしながら立ち上がった。
「これで……とどめだッ!」
高く跳んだ。
放物線を描き、ジンは切っ先を下に向けた剣をアドンに突き立てた。
アドンの鮫肌を突き破り、深々と突き刺さる。
そこでタイムリミットが来た。
完全にオーバーヒートを起こしたジンは、倒れ込んでアドンの横に投げ出された。
ジンは動けなくなり、ムウのバトルドレスも光の粒子となって消えた。
ふたりともこれが活動限界だ。
だが、アドンは倒れた。
海の魔族たちは首魁が倒されたことを知り、動揺が走った。
それを見逃すエスメラルダ私掠船団ではない。
「いまだ! 一気に攻め立てろ!」
大灯台に立てこもっていたグライフが、魔導装置で拡声された声で叫んだ。
形勢逆転である。
そこから魔族たちが掃討されるまで、さほど時間はかからなかった。
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