連載執筆編

第13話 締切に七転八倒 青葉笑う

「もの書きになりたい」

 そんな自分にとって、月刊誌の年間連載は、またとないお話だ……と思っていました。


 最初の2カ月は、順調でした。

 それが、やはりきたか~

 と言わんばかりに、3か月目からはとてもしんどくなってきました。


 なぜだ? どうしてだ?

 お前さんは書きたいんだろう? 

 願ってもない執筆の仕事だというのに、なんでそんなに苦しいんだい?


 いつもなら、あれやこれやと分析し、対策を立て、実行し、検証してまたやり直すというルーティンが繰り広げられるのだが、今回はそうはいかないのです。


 なぜなら、締切があるからです。

 分析なんぞ、している暇があれば書かねばならないのです。


 これまで、締切を守れなかったことは一度もありません。

 どの原稿でも、です。

 むしろ、締切より早く提出することに快感を覚えるほど、調べ作業も執筆も早いのが取り柄だったのです。

 それが、です。

 書けない。

 書いても納得がいかない。

 これはほんとに自分が書くべきことか?

 書きたいことか?

 これは読者の役に立つのか?

 おもしろいと思ってもらえるものか?


 掲載された雑誌が毎月出版社から献本されてくるのを、読んでみました。

 私の前後の記事は、とても読みやすく分かり易く、お見事でした。

 しかるに私は……。

 なんでこんなに堅苦しくて、偉そうで、語尾がまどろっこしいんだろう~と

 しばらく自己嫌悪の日々でした。


 それでも、締切は来るのです。

 書かねばならないのです。


 書くことは好きなのに、なんでこんなに苦しいのか。

 仕事だから? 締切があるから?

 それだけではないでしょう。


 無い知恵を振り絞り、浅い語彙の泉を堀漁り、尽きそうなネタを捏ね繰り回しているから、辛いのです。

 でもそれは、一朝一夕では解決しません。

 だから、やっぱり古典を読もう

 そう思って、修行を復活させました。


 その効果が出るのは、もっと先――もしかしたら連載執筆が終わったころかもしれません。

 けれども、いま何もしなかったら、この先はもっと辛くなるだろうと思うのです。


 書きたければ読むしかない。

 単純だけど深いその真理を、改めて心に刻む朝でした。



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