「あなたたちは、ジャパリまんを食べたのです」

風来山

第1話 IFジャパリとしょかん

 長い旅をしてしてきたカバンとサーバルは、グネグネした迷路の森をぬけて、ついに念願の「じゃぱりとしょかん」にたどり着いた。

 ここで、ようやくカバンがなんのフレンズかを調べることができる。


「わーなに!」


 そこに音もなく飛来したふたりのフレンズ。

 足がぶつかって、不意打ちを食らったサーバルは前に転がる。


「どうもアフリカオオコノハズクの博士です」

「どうも助手のワシミミズクです」


 突然現れたフレンズだが、ドーモと挨拶をされたら挨拶を返さねばならないのがジャパリパークのオキテである。


「どうも、カバンです……」


「どこからでてきたの、ぜんぜん音がしなかったよ?」

「われわれ、音を立てずに飛ぶなど朝飯前なのです」


「博士これは期待できますね」

「そうですね助手、きょうこそはいただきますですよ」


 こそこそと話している博士と助手に、サーバルがたずねる。


「それでね、カバンちゃんがなんのどうぶつかおしえてほしいんだ」


「らくしょうです」

「ですので、おしえてほしければ料理するのです」


「料理?」


 カバンとサーバルは、料理を食べさせなくてはならなくなった。


「そんなの、ジャパリまんでいいじゃない?」


 博士たちの料理の説明を聞いて、サーバルが聞いた。

 そんなめんどうなことをしなくても、ラッキービーストがジャパリまんをいくらでもくれるのだ。


 少し慌てたようすで、博士たちは言う。


「たしかにジャパリまんは、栄養たっぷりでおなかもみたされますが……」

「……たべあきたのです」


「われわれは、グルメなので……」

「せっかくこのからだになったので、めずらしいものをたべたいのです」


 ようりょうをえないことを言って、料理を食べさせろという。

 さいわいなことに、野菜などの材料はたくさんある。


「中火で材料を炒めて……香辛料を入れて煮込んで……」


 料理本を片手に、カバンはカレーライスをつくった。


「おいしいのです、やみつきです」

「ごうかく、です」


 博士たちはよっぽどお腹が空いていたらしく、おかわりまで要求してガツガツと食べた。


「お腹が空いてるなら、ジャパリまんを食べればいいのにね」

「う、うん……」


 サーバルたちは、ジャパリまんを食べている。

 博士たちに、いくら勧めても「いいえ、私たちは遠慮しておきます」とジャパリまんを食べようとしなかった。


「やくそくですので、教えます。カバン、あなたはヒトです」

「このパークにある遺物は、すべてヒトがつくったとされています」


「へー、ヒトか。ちょっとだけフレンズと似てるね」

「とうぜんです。われわれフレンズは、どうぶつがヒト化したものだといわれています」


「じっかんはわきましたか?」


 カバンにそう聞く博士。


「どうでしょうか……」


 サーバルがたずねる。


「博士、ヒトってパークのどこにいるの?」

「ヒトはもういないのです」


「ヒトはもう絶滅したのです」

「絶滅……」


 あまりのことに、カバンはこんわくする。


「ある日をさかいにいなくなったのです」

「どうして?」


 博士たちは目を伏せる。

 その視線は、テーブルに積まれていたジャパリまんに向いていた。


「ところでカバン、サーバル。ジャパリまんをつくるところをみたくありませんか?」

「わー、みたーい!」


「ぼくも気になります……」


 ヒトがこのジャパリパークをつくったのであれば、ジャパリまんもまたヒトがつくったということになる。

 自分の種族が何なのかを求めるカバンは、教えてほしいとたのんだ。


 博士たちは、よろしいと頷く。


「あなたたちは、ジャパリまんを食べたのです。そのことをよくにんしきしてジャパリまんこうじょうをけんがくするのです」


 ジャパリまんこうじょうは、としょかんのすぐ近くにあった。


「わー、すごーい!」


 四角いたてもののなかで、さっきカレーにもつかった野菜が大量に育っている。


「ここでは太陽光をつかって、野菜をそだてているそうです」

「この野菜がジャパリまんの材料になります」


 太陽光というのは、電池を充電したのといっしょの力だろう。

 そこまではサーバルにもわかる。


 だが、サーバルはちょっと疑問に思う。


「まって、ジャパリまんはお肉が入ってるものもあるよ」

「それは……」


 博士たちは、目配せし合う。


「私たちにも、わからないのです」

「わからない……?」


 カバンが博士のセリフを繰り返すと。

 そこで、ずっと黙っていたラッキービーストがしゃべりだした。


「ジャパリまん製造工場では、太陽光の力で培養した謎肉を使っているヨ」

「わー、ボスがしゃべった!」


「ラッキービーストさん、謎肉ってなんなんですか」

「謎肉は、カップラーメンにもよくつかわれている。みんなが大好きなお肉ダヨ」


「ボス、カップラーメンってなに?」

「……」


 あいかわらずラッキービーストは、サーバルにたずねられてもこたえない。


「もーしゃべってよ!」


 博士たちは、カップラーメンという言葉に興味を示した。


「カップラーメンというのも料理みたいです」

「つくるのです」


「えー、さっきカレー食べたばかりですよね」

「つくるのです」


 ジャパリまんこうじょうでは、材料の謎肉がたくさんとれる。

 そして、さいわいなことにとしょかんで、ラーメンのレシピとともに乾麺も見つかった。


「スープを作って、麺を煮て……これでいいのかな」

「うわー、おいしそうな匂い。カバンちゃん、こんどはわたしのぶんもつくってね」


 強烈な匂いのカレーライスには興味を示さなかったサーバルも、お肉たっぷりのラーメンは美味しそうに見えるらしい。


「じゃあ、みんなで食べましょうか」


 カバンたちは謎肉たっぷりのラーメンを作って、四人でおなかいっぱい食べた。


「まんぷくまんぞくです」

「おいしいものをたべてこそのじんせいなのです」


「カバンちゃんは、美味しいものが作れてすごいね!」

「こんなのたいしたことないですけどね……」


「ヒトのすみかがわかったら、またかならずくるのですよ。われわれはおかわりを待っているのです」

「はい!」


 としょかんでラーメンをたらふく食べたカバンとサーバルは、どこかに消えてしまったカバンの仲間、ヒトを求めて長い旅を続けるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「あなたたちは、ジャパリまんを食べたのです」 風来山 @huuraisan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ