恋の悪戯

 僕は妖精パック。趣味はイタズラ。

 今日も僕は王様に叱られた。イタズラがバレたからだ。だけど反省なんかしない。切り株に腰かけて、また次のイタズラを考えている。


 そこへ友人のウィッチがやって来た。


「ねえパック、惚れ薬を作ってみたの。これでリア充たちを混乱に陥れてやりましょう」

「いいね、最高に陰険だね。やろう」


 僕たちはわざと恋人たちを狙って惚れ薬を飲ませてまわった。


「この薬は一度眠ってから目覚めて最初に見た相手のことを好きになるのよ」

「そうなんだ。でもみんな、君のことを見ているみたいだけど」

「えっ」


 ウィッチが声を上げると、周囲の人々が一斉に集まって来た。目を丸くして驚くウィッチに迫りくる人の群れ。


「ウィッチさん、デートして!」

「私と付き合って下さい!」

「俺のほうが愛してる!」


 老若男女関係なく次々にウィッチに言い寄っている。大混乱にはなったけど、予定とは少し違うみたい。


「ちょ、ちょっと待って」


 ウィッチは真っ赤になって胸元から小瓶を取り出すと、みんなに振りかけて眠らせた。


「解毒剤?」

「ううん、ただの眠り薬。時間がたてば元に戻るはずだから、急いでここから離れましょう」

「それにしても今回はひどい失敗だったね」

「あら、パックなら面白がるかと思ったけど」

「だって恋敵が増えたら困るだろ」

「えっ」

「……なーんてね」

「まぁ! ……パックまであの薬を飲んだのかと思っちゃった」


 ウィッチはクスクスと笑った。

 僕はケラケラと笑った。


 でも、例えあの薬を飲んでしまっても僕は変わらないと思う。惚れ薬は元々彼女を好きな人にはきっと効かないだろうから。


(失敗ばかりの君が好き)

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