第128話 転生者は異世界で何を見る? -乗り物-

 ガドルゴラン帝国。ドラゴンが幸運の象徴と言われるきっかけの元となった国がある。

 まさにドラゴンの幸運によって成り立った国とも言われている。

 古龍種と呼ばれるドラゴンから直接幸運の加護を賜り、帝国を築いたのが初代皇帝とのことだ。

 現在は十二代目の皇帝だが、ドラゴンから賜った幸運の加護は称号として代々引き継がれているらしく、それが証拠になっているとのこと。


「へー、そんな話があるんだ」


 食後のお茶を飲みながら瑞樹が相槌を打っている。


「それにしても、近くにドラゴンが現れたのに割とのんびりだけど大丈夫なの?」


 今度はフィアがドラゴンが現れたことへと影響を心配している。うん。俺もそれは気になってた。住民が大慌てで逃げ出したり、何かしらパニックになると思ったりしたんだが、ドラゴンは狂暴ではないのだろうか。

 若いドラゴンは会話もできずに気性が荒いとかさ。よくファンタジーじゃ聞く話だ。


「ん? 何がですか?」


「いや、ドラゴンって危険じゃないの?」


 実際に目撃したドラゴンらしき生物も、なんかブレスを吐きながら何か追いかけてたしね。


「何言ってるんです? ドラゴンって友好的な種族で有名ですよ?」


「……そうなんだ」


 なんとなく納得できない表情のフィアと瑞樹。確かに、アレを目撃してるからか懐疑的なのはしょうがない気がする。

 俺も同じ意見だし。

 ……そういやフィアの世界にもドラゴンはいたよな。って、思いっきり魔物のカテゴリだったわ。

 ゲームに出てくるドラゴンはほとんどが敵だよな。イベントNPCとかで出てきたとしても、会話のできる特定の個体であって、種族全体がそんな役割を持ってるわけでもない。


「あー、まぁ俺たちが初めて見たドラゴンが、ブレス吐きながら何か追いかけてたからな……」


「そりゃきっとドラゴンを怒らせたんじゃないですか。理由なく襲ってきたりしないですよ」


 そんなもんですか。


「しかしドラゴンから逃げる何かですか……」


 そう呟くと、タマが何かを考え込むようにテーブルに両肘を付き、組んだ両手をおでこに当てて目をつぶる。


「何か問題でも?」


「いや、もしかして竜哭旅団《りゅうこくりょだん》かなーと思って」


 なんですかその旅団は。


「竜哭旅団って……、もしかしてドラゴンを狙う集団とかそんなやつ?」


 名前からして想像したことを聞いてみる。友好種族であるドラゴンを狙う集団と言われると犯罪集団みたいなやばい奴らなんだろうか。

 しかし竜を泣かすってすげー名前の旅団だな。


「そうそう。ドラゴンに追いかけられて追いつかれずに逃げてたんでしょ? 乗り物系の魔道具も高いからね。そんなの持っててドラゴンに手を出すのは……」


「竜哭旅団しかいない……と?」


「んだね」


 ほうほう。そういうことですか。

 それにしても竜哭旅団とかよりも聞き捨てならない言葉が出てきたな。俺はそっちのほうが興味あるぞ。

 ある意味こっちの世界に来た目的の一つでもあるんだからな。


「ところで、……乗り物系の魔道具って何?」


「ええっ!? それも知らないんですか!?」


「マコトさん、よっぽど田舎から出てきたんですね……」


 隠すこともないと興味津々に尋ねてみただけなんだが、ポチとタマからは心外な反応を返された。

 高級品だけあって田舎者でもさすがに知らないことはないってことか。

 横にいるフィアと瑞樹は、「自分は知ってましたよ」と言わんばかりの表情をしているが……。お前らも知らんだろ。

 つーか要するにバイクとか車的なものなんだろ? でも魔道具っていうからには魔力を燃料にして動くものってところか? ガソリンじゃなくて自分の魔力で動かせるんなら万々歳な予感がするぞ。


「ほっとけ。知らんもんは知らん。

 っつーか、魔道具ってことは魔力を動力にして動く乗り物ってところか?」


「はい、そうですね。乗り物にもいろいろ種類があって、一人用から十人以上乗れるものまでいろいろありますけど……」


「そうね。でも一番安い一人乗り用のバイクでも五千万リルくらいするらしいわよ?」


「たかっ!」


 瑞樹が反射的に叫んでいるがまったくもってその通り。金貨五百枚とか高すぎるだろ。

 日本でも安い原付なら十万ほどあれば買える気がするが、似たような乗り物が五千万ですか。

 なんとなく飯と宿代で、円とリルは似たような価値なんじゃないかと思い始めていたところにコレだ。一気に自分の中で微妙なりにもと作られていた貨幣価値が崩れ去るのを感じる。

 とは言え、前回のワイルドボア二匹で三百万以上稼げた事実もある。俺たちなら五千万くらいすぐ稼げるんじゃね? と思わないでもない。


「あー、じゃあ複数人が乗れるやつとかはいくらぐらいするかわかるか?」


 しかし一人乗り用はダメだ。フィア以外にも誰か連れて移動することもあるだろうし。だいたいの値段でもわかれば目標になるってもんだ。


「あー、ごめん、一人乗りバイクの値段も一番安いタイプってだけだからね。

 それ以上になるとわたしもよく知らないの。空飛ぶタイプだと値段も跳ね上がるって言うし……」


 空飛ぶんですか!? 飛行機とかもあるのかな!?

 山超えたりしたいし、空飛ぶ乗り物がいいよね! いやーなんかテンション上がってきた!

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