第126話 転生者は異世界で何を見る? -レベルアップ-
「――くっ! このっ!」
突き刺さる瞬間に目をつぶりながら、俺の【パラライズ】で麻痺させたうえで前後の足をすべて抑え込んだはぐれウルフへと瑞樹が槍を突き出す。
何度か突き刺すうちに、硬直していたはぐれウルフが脱力して完全に動きを停止させる。
二体以上で現れた場合も全員に【パラライズ】をかけて放置し、すべて瑞樹に止めを刺させる、ということを繰り返すこと十数回。
瑞樹のレベルをある程度上げることができた。
――――――――――――――――――
名前:クラシナ ミズキ
種族:仙化族
性別:女
年齢:17
職業:巫女 Lv6
Lv:7
HP:645/654
MP:1434/1434
STR:67
VIT:87
AGI:476
INT:786
DEX:689
LUK:329
スキル:
【火魔法Lv1】【水魔法Lv1】【地魔法Lv2】
【風魔法Lv3】【光魔法Lv1】【闇魔法Lv1】
【無魔法Lv2】
特殊スキル:
【成長率増幅Lv2】【全状態異常耐性Lv3】【MP上昇補正Lv2】
【魔力操作Lv3】【魔力感知Lv3】
称号:
【異世界転生者】【魔を統べる者】
――――――――――――――――――
しかし魔法特化なだけあって、STRとVITが低いな……。これでようやく一般人レベルかな?
まぁ、地道にレベルを上げていくしかないが。
そういえばこの世界だとスキルレベルを上げてもちゃんとした魔法って覚えないのかな。そこはがんばって練習するしかないのだろうか……。
うーん。フィアみたいにいろんな世界に連れて行ってみるのもいいかもしれない。
仕留めた相手ははぐれウルフ×1、ウォーウルフ×14、ワイルドボア×3だ。もちろん早々にアイテムボックスに仕舞いこんである。
状態が悪いのであまりお金にならないかもしれないが、それでも立派な収入になるはずである。
「今日はこれくらいにしとくか」
日がそこそこ傾き始めた時間帯である。そろそろ帰る準備をし始めないと日が暮れてしまう。
「あああ……、やっと終わった……」
瑞樹が槍を抱えて木の根元に座り込み。
「お疲れさま」
それをフィアが労っている。
俺はアイテムボックスからスポーツドリンクのペットボトルを取り出して瑞樹に渡してやる。
「ありがとう」
道中で集めた薬草の入った袋もいったんアイテムボックスへと仕舞う。帰りは寄り道せずにまっすぐ帰ろう。
そして俺たちは少し休憩したのちに街へと帰還した。
□■□■□■
何事もなく無事に街へと帰りついた俺たちは、真っ先にギルドへと顔を出した。
入り口をくぐると、時間帯のせいか大勢の人たちがカウンターの前に列を作り、テーブルでは軽く宴会を始めているグループも見受けられる。
ちょうど仕事が終わって報告に来る時間帯なので仕方がないとは思うが、いつもこんなに騒がしいのだろうか。
数えるほどしかギルドに顔を出したことのない俺には判別がつかなかった。
今日は買取カウンターのほうから並ぶことにして、その列の最後尾へと歩いて行く。
フィアと瑞樹も俺の後ろからついてきている。手続きそのものは俺一人でも十分なのだが、二人だけでギルド内で待機していると、注目を集めやすい外見だからか何かと話しかけようとしてくる冒険者がちらほらといるのである。
それを嫌ってか、ギルドにくると二人はだいたいは俺と一緒に行動をしている。だからと言って話しかけてくる人がまったくいなくなるわけではないのだが……。
途中で話しかけてくる冒険者を適当にあしらいながら待つこと三十分ほどだろうか。ようやく俺たちの順番が回ってきた。
「……査定する素材はお持ちですか?」
俺たち三人をじっくりと見回した後にカウンター向こうの職員さんが尋ねてくる。
そういえば明からに手ぶらだな。
「おう、ちゃんと持ってきたぞ」
前回も査定をしてくれたムキムキマッチョハゲの前に、アイテムボックスから次々と倒した魔物を取り出していく。
はぐれウルフ×1とワイルドボア×3を取り出して、次にウォーウルフの二匹目を取り出したところで。
「ちょっ……、ちょっと待ってください!」
「ん?」
作業を止めてギルド職員のほうを見ると若干の焦りが見られる。
「ウォーウルフが出てきたってことは、群れ全体の数だけ出てきますよね……?」
「え? ああ、もちろん……。ってここじゃ全部出せないですね」
うず高く積まれた素材と周囲を見回してから改めて気づく。ウォーウルフも大きい個体になれば全長二メートルほどになるほどだ。
まだ十匹以上いるのにこれでは置き場所がなさそうだ。
「はい。なので、倉庫へお願いします」
そう言ってマッチョハゲの職員がカウンターから出てきて、ギルドの奥にあった扉へと向かって行くので、出したばっかりの獲物を再びアイテムボックスへ仕舞うと後をついていく。
短い廊下を抜けると突き当りの扉をくぐる。ちょうどギルドの裏手だろうか。
そこは広い空間が広がっていた。学校の体育館ほどの広さがあるだろうか。
「では私はこれで。あとは奥の職員に対応してもらってください。今後素材を持ち込むときは、量が多ければ直接こちらに持ち込んでいただいてもかまいませんので」
「ああ、わかった。悪いね」
マッチョハゲタンクトップの職員を見送って振り返って倉庫の奥を覗き込んでみると、そこにはまたマッチョハゲタンクトップがいた。
思わず振り返ってみるが、そこには出口へと姿を消す人影が一瞬だけ見えただけだった。だがそこには確かに去っていく人がいたわけで。
もう一度倉庫の奥を振り返ると、こちらに近づいてくるマッチョハゲタンクトップがやはりいた。
見間違いではないようだが、しかし顔までそっくりとはどういうことだ。
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