第6話 スキル
「アイテムボックスは使えるし、可能性はあるよな……」
まじまじと手の中の杖を見つめつつ考える。ここでゲーム中で使った魔法について思い浮かべる。
フレアアローは、二十センチほどの炎の矢がまっすぐ飛んでいったな。ウォーターボールはバスケットボールくらいの大きさの水の塊が飛んでいったっけ。ウィンドカッターの空気の刃は見えなかったからよくわからないけど、結構な切れ味だった気がする。
他の魔法はまだ使ってないからわからないが、なんとなく部屋の中で試してみていいものではない予感はする。スキルのレベル調整で威力は抑えられるが、同じレベルのスキルで威力の調整が可能かどうかはわからない。
ゲーム内ではそんなことは不可能だったが、果たしてリアルで使えるようになったのであればどうだろうか。試してみたくはあるがなんにしろ危険なことに変わりはない。
「どっかいい場所でもないかなぁ」
うーん。せめてウォーターボールが飛んで行かなければやりようがあるんだけど。ああ、なんにしても地面に撃てば問題ない……かな?
杖を握り締めたまま外に出る。閑静な住宅街なので人通りはない。すでに夜なので辺りは真っ暗だ。これならいけるかもしれないな。自宅の玄関から駐車場へと回り込む。車はあるのだがあまり活用はされていない。主な交通手段は自転車になっているしね。
ひとまず車の後ろに回ると、周囲に人がいないことを確認してから杖を地面に向けて集中する。ここはウォーターボールかな。レベルを調節して威力が弱くなるイメージをする。蛇口を捻った水道みたいに、チョロチョロと出れば文句なしだ。
「――ウォーターボール!」
杖の先端にソフトボールほどの水の塊が生まれたかと思うと、地面に向かって発射される。
うーん、失敗か。何度か練習してみるも結果は変わらない。この調子だと他の魔法も期待できそうにないな……。
「ん?」
というところで重要なところに気づく。俺なんで威力が上がる杖を持ってやってんだ? これいらないだろ?
杖をアイテムボックスに仕舞うともう一度試してみる。今度は右手の人差し指を地面に向ける。
「――ウォーターボール!」
もう一度同じ魔法を唱える。と、今度はテニスボールくらいの大きさの水の塊が指先に生まれる。ひたすら飛んでいくなーと念じる。
と、指先に水塊が留まる。
――が、気を抜いたところで地面に向かって飛んでいった。
一応威力は小さくなったな。しかし、基本攻撃用のスキルだからだろうか、発射を遅らせることはできても発射そのものは阻止できない感じがするな。
何度も試してみたがやはり少しも改善する
ということで今日はもう切り上げて寝ることにしよう。風呂に入って寝る用意をする。
おやすみなさい。
はい、おはようございます。
さて、翌朝である。自室で目を覚ましてまずはじめに確認することは、もちろん放置しているゲームの露店である。
うむ、まだ売れ残りがいっぱいだな。
うーん。しかしあれだな……。こうなんというか、画面越しでは物足りない気がしてきたぞ。
昨日の出来事を思い出しながらパソコンの操作をする。
もうゲームの中に入る気満々だ。例の本が置かれている机を見つめる。
そういえば、もう一度同じゲームに入ったとして同じキャラ? であるマジシャンの続きから始められるのかな? というか別キャラ作成とかできるんだろうか。その辺りは検証する必要がありそうだな。
それに他のゲームにも入れるようであればちょっと試してみたいな。
よし、今日は他のゲームにしてみるか。
ひとまず顔を洗ったら自室からキッチンまで降り、紅茶を入れてパンを焼いて朝食を摂る。
パンを齧りながらどんなゲームがいいか思考を巡らせる。とりあえずオープニングからハードモードなゲームは却下だ。奴隷や孤児から始まったり、村が魔物に襲われて全滅するようなところから始まるゲームは危険である。
ま、無難なのはMMORPGかな。これなら大抵は初期の街の安全地帯から始まるものが多いはず。
自室に戻りまずはパソコンに入っている自分でやったことのあるゲームを順に見ていく。さすがに新規ゲームよりは知ってるやつのほうがいい。
ん~、お、これにしようかな?
タイトルはモンスターズワールド。連合国軍対魔王軍というわかりやすい構図のゲームだ。と言っても基本的には街の中は安全で、たまに襲撃イベントなどあったりするが前線の街が対象なので最初の街は安全だ。
そうと決まればさっそく準備だ。缶ビールをゲーム内に持ち込めたので、役に立ちそうな道具を揃えてから行くことにする。
さすがに今使えるスキルはロードライフオンラインのものなので、アイテムボックスは使えない前提で手持ちできる範囲を考えている。
久々に車でホームセンターにでも行くかな。二十分ほど走ったところにあったはずだ。
寝巻きから普段着に着替え、車のキーを片手に家を出るのであった。
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