炭都胎界 (第29回座談会公開済み)
エントリー#29
作品名 炭都胎界
作者名 小川茂三郎
作品URL https://kakuyomu.jp/works/1177354054882800620
作品のキャッチコピー、あらすじ
『北海道三笠市・新幌内炭鉱。大規模な崩落事故から逃れる話。』
カーボン素材の需要に沸き立つ、北海道三笠市にある新幌内炭鉱。大規模な崩落事故が起こった。石井は避難の集団から一人離れて、深層にある道具を集め地上を目指すことにした。
〈人物紹介〉
石井:鉱夫の男。カネビシ直雇。
西口:鉱夫の女。下請け。
エアキュール・ポアロ:私立探偵。登場しない。
☆なおこの作品は、七瀬夏扉さんが主催される〈カクヨム計劃トリビュート/〉にエントリーしています。企画については、タグからぜひともチェックしてみてください!
作者からの一言、メッセージ
「『虐殺器官』で描かれた、特殊部隊が用いる各種のデバイスやその効果の表現が印象に残っています。これがもし一般に広まったら……というのを論点に書いてみました。」
座談会
ななせ「第二十九回『座談会』を始めるんですけど、今回は前置きも茶番もやりません!」
七瀬 「うん、そうだね」
N氏 「うむ」
ななせ「まず、今回の『炭都胎界』なんですけど、メチャクチャ面白いです! なので、ちょっとテンション高めでガッツリ語って行こうと思います」
七瀬 「うん」
N氏 「うむ」
ななせ「まず、エントリー作品は前述の通り『炭都胎界』。作者さんは小川茂三郎さん。この企画がはじめましての作者さんです」
https://kakuyomu.jp/users/m_ogawa
ななせ「早速『炭都胎界』の話ですけど、非常に現実に即した話になっています。『石炭カーボン』という新エネルギーを掘るために地下の炭鉱に潜る労働者の話で、場所は実際に存在した炭鉱――北海道三笠市にある『新
七瀬「炭坑内の描写が秀逸だったのはもちろんなんだけど、そこで働いている人たちの描写も本当に秀逸で、実際にそこで働いていたのでは? と、錯覚させられたね」
ななせ「本当にそう思います。物語は炭坑内で起こった鉱山事故で、大勢の人たちが炭坑内に閉じ込められるているところから始まるんですけど――現実でも『北炭夕張新炭鉱ガス突出事故』という大きな事故が過去に起こっていて、ここらへんがモチーフなのかなあと思いました」
七瀬「鉱山事故、炭坑での事故というのは現在はほとんど聞かない事故で、僕たちも含めた若い世代には本当になじみがないものなんだけど、だからこそ新鮮に感じたね」
ななせ「『石炭カーボン』という新エネルギーと、伊藤計劃的ガジェットを持ちいるりることで、古い物語をここまで新鮮に描き直せるのかと驚きました」
N氏 「炭鉱で働いてる労働者には様々な道具が貸し出されており、作者が――『虐殺器官で描かれた、特殊部隊が用いる各種のデバイスやその効果の表現が印象に残っています。これがもし一般に広まったら』と語った通り、これら道具の数々は炭坑内での活動に非常に役立っている」
ななせ「色々登場しましたもんね。物語の筋としては――事故が起きて集団の危うさを感じた主人公の石井が、一人炭鉱の奥に進み、自力で炭鉱からの脱出を試みます。その際に、色々な道具が活躍するんです」
N氏 「まず、〈ケアマシン〉という精神を安定させるナノマシン。ナノマシンは身体の痛みも軽減してくれる。他にも、暗視モードなど色々な機能を備えた『ゴーグル』。『LGTライト』。『筋力補助アプリケーション』など、様々な道具が活躍するのだが、どの道具も電力消費するため、主人公の石井は手首の『標準供給デバイス』で常に電力の残りを気にしなければならない」
ななせ「そこらへんが、すごくリアルでしたよね。読んでてもハラハラして面白かったです。文章は硬く、少し古い感じなんですけどすごく読みやすくて、筆力を感じました。あと、どことなく安倍工房っぽい雰囲気がありましたね」
七瀬 「分るなあ。簡素なんだけど味のある感じが安倍工房っぽいよね。レトリックを使わずに、しっかりと雰囲気が出てる」
ななせ「あと、石井がバッテリーを取りに炭鉱を潜って行く途中で出会う行きずりの女性・西口なんですけど、彼女がものすごく魅力的なキャラクターなんですよね」
七瀬 「うん。すごく良いキャラだった! 超然としているんだけど、どこかニヒル。事故なんか我関せずった感じなんだけど、面白味というか女性特有の強さみたいなものがあって。彼女が登場してからグッと面白くなってくるんだよね」
ななせ「途中、冗談なんかも言ったりしてコミカルな面もあるんですよね」
N氏 「安倍工房の名作『砂の女』の女を連想した」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A0%82%E3%81%AE%E5%A5%B3
ななせ「そーなんです」
七瀬 「うんうん」
ななせ「石井は、西口を連れて二人で出口を目指すんですけど、最後のほうでは強い女性として描かれていた彼女も、社会や集団に溶け込めない弱さを魅せたりと、本当に素晴らしいキャラクターでしたね。物語全体も――炭鉱から脱出すると言う分りやすいストーリー、そのための舞台と知識、集団の恐ろしさ、魅力的な登場人物、脱出のためのSF的ガジェットと、全てが上手くハマった短編だと思いました」
N氏 「一つだけ言わせてもらえるなら、この物語を投稿するべきは――この『トリビュート』なのかという話だ」
ななせ「確かに、作者の小川さんはこの企画のためにこの作品を書き下ろしてくれて、本当に光栄なことなのですが――なかなかwebで読んでもらうには難しい物語ではありますよね。別に☆の数とかPVの話がしたいわけではないんですけど、すごく出来が良いので、もっとたくさんの人に読んでもらいたいんですよね。これは他の方々の作品にも当てはまるんですけど」
七瀬 「現状、この企画の力ではそこまで読者を呼び込めていない感じがあるからね」
ななせ「力不足は感じているんですけど、打開する術は中々見当たらないですね」
七瀬 「僕たち自体が、暗く深い炭鉱の中に閉じ込められている感じだね」
N氏 「我々にも西口のように魅力的な女性が現れてくれればいいのだが……」
七瀬 「だったら、この暗闇をさらに奥深くに進まなければならないね」
ななせ「あれ? なんか暗い話になって来たな……とっ、とにかく、本当に素晴らしい物語なので是非とも多くの人に読んでもらいたいです。今回の座談会は以上っ!!」
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