21グラムの慰め (第21回座談会公開済み)

エントリー#24


作品名   21グラムの慰め

作者名   きづ柚希

作品URL  https://kakuyomu.jp/works/1177354054882776053



作品のキャッチコピー、あらすじ

『死んだあと、人は一度だけ言葉を発する』


デザイナーベビーが公然と行われ、また義体化技術が飛躍的に進歩した近未来。自殺遺伝子、疾患誘発遺伝子の特定、言動統制、科学技術のによるう個々人コントロールシステムの導入により、「死」という概念が急速に忘れ去られようとしていた。その中で私が、二人の死を通して、「死」の社会的機能を知るお話。



作者からの一言、メッセージ


<null>

 


座談会


ななせ「第二十一回の座談会を開催しますっ」


七瀬 「今日はこの企画のエントリー締切日だね」


ななせ「そうなんです。実は三十作超えることが決定してまして……恐れ慄いています」


七瀬 「ありがたいことだね……しかし、僕たちは三月末尾を企画終了に設定していたんだけど、少し伸びそうな気がするね。この企画が――終わらない『PROJECT』にならなければいいけれど……」


ななせ「縁起でもないこと言わないでください。さぁ、はりきって本日のエントリー作品の話題に移っていきましょう。本日のエントリー作品は『21グラムの慰め』。作者さんは、きづ柚希さんです。ツイッターで最近親しくさせて頂いている作者さんですね」


七瀬 「ホラー、ファンタジー、SFと色々な作品を投稿している作者さんだね。早速作品の話だけど、エントリー作品のタイトルにもなっている『21グラム』というのは良く聞くけれど、SF的にはどういったガジェットなのかな?」


https://kakuyomu.jp/users/kiduyuzu


N氏 「人間が死んだ時、体が『21グラム』軽くなると言われていて――それが魂の重量なのでは? という話だ。実際に21グラム軽くなるわけでなく、初出はマサチューセッツの医師ダンカン・マクドゥーガルの1907年の研究によるものだ。科学的な証明はされておらず、21グラムという単語だけが独り歩きした感じだな。『21グラム』というアメリカ映画はあまりにも有名で、その頃からSF的なガジェットとして使われるようになった」


ななせ「『屍者の帝国』でもこのガジェットを用いてますもんね」


七瀬 「なるほどね。この作品は『21グラム』のガジェットを元に話を膨らませた感じなのかな?」


ななせ「そうだと思います。哲学的で難しい物語なので、解説も難しいのですが、物語は、姉の葬儀に出席をした主人公・妹が、過去を回想する形で進んでいきます。世界観的には――義体化や医療技術が発達しており、そして子供たちの大半はデザイナーズベイビー、親の遺伝子を受け継がず、優性遺伝子至上主義の子供たちが誕生しているんです。血縁や世襲を感じる最後の世代と、物語の中では言われてます」


七瀬 「親の遺伝子を受け継がない? それは他人のようだけど……」


ななせ「はい。主人公である妹もそう感じているんです。姉の子供が姉に全くに似ておらず、それでも姉が子供を愛していることに疑問を覚えつつも――社会がそう感じることを許さないんです。この世界は監視モニタによって常に監視されていて、体内もナノチューブによっても監視されているんです。常に正しい思考や言動を求められます」


七瀬 「ディストピアなのかな?」


ななせ「ところが、そう言うわけでもありません。緩やかに社会制度が変わり、次の世代に時代が映っていくちょうど変わり目――過渡期に起きる疑問や混乱を、つとめて冷静で慎重に描いている、そんな作品だと感じました」


N氏 「そんな監視され、保護された社会の中、魂によって死者の言葉を代弁すると言うサービスが葬儀屋によって行われているのだが、その言葉すら本人の言葉ではないのでは? と突きつけられ――その21グラムの価値をどう図ればいいのか分らなくなる」


ななせ「最終的に妹が選ぶ答えが、この『タイトル』に繋がっているのですが、非常に物悲しい終わりですよね。冒頭で語られる『悲しいから泣くのでは無く、泣くから悲しいのである』という命題についても思いを巡らせてしまいます」


七瀬 「僕たちの感情――悲しみがどこからくるものなのか、それを知るには魂というものは遠大過ぎるのかもしれない……」


ななせ「実は、この『21グラムの慰め』の『座談会』を三月二十日のエントリー締切日にしたのは、僕たちにとってもある種の『慰め』になればいいなと思ったからなんですよね。今日は、もう二度と新作を読むことができない作者の命日でもあるので」


七瀬 「だから、茶番も一切なかったわけだね。今日ばかりは、夜の帳のように静かに幕を閉じよう」


N氏 「ぼくは、こうしてあなたの名前を記し続ける。あなたを探す試みをこうして続ける。あなたがその選択の余地なき自由の中で、何を見出したのかを求め続ける――」



</body>

</etml>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る