39kgは重すぎる(2)
帰りの車の中で、あたしはずっと黙りこくっていた。後部座席で兄の隣に座った母が甲高い声で兄にあれこれ話しかけるのを煩わしく感じながら、サイドミラーに映る電柱の数をかぞえていた。
兄はと言えば、自分から積極的に話しかける風ではなかったが、母の言葉に卒ない受け答えをして、何だかあたしよりもずっと落ち着いているように見えた。
「ようし、着くぞ」
行く手に川原家が見えてくると、それまで運転に集中していた父が、作り物めいた大きな声で言った。
車を降りて、屋内に入るまでの数メートル。普段なら少しも気にならない会話のない数十秒が、ひどく息苦しく感じられる。
「じゃあ、あたし自分の部屋に行くから!」
玄関で靴を脱ぐと、あたしは誰よりも先にそう言って、返事も待たずに二階へと駆け上がっていった。
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