第3話夢の続き

いつまでもこんな生活を続けるわけには行かない

じゃあどうする?

生きるか死ぬかの二択

その時の私はそんな状態の中にいた

生きるか死ぬのどちらか

そう、私は死ぬ事を選択した

でも不思議なもので死のうと思って簡単に死ねるわけでは無い

人間には恐怖心があるからだ

本当に死にたいのなら飛び降りてしまえばいい

それで死ねる

でも私にはそんな勇気もなく、薬を大量に飲んで何度も失敗する一番哀れで愚かなパターン

薬では死ねない事を思い知らされた

だったら凍死はどうだろう

季節は冬、普通では無理かもしれないが雨の日は冷え込む

私は雨を待って深夜庭に出て横になった

もちろん眠剤を飲んで眠れば死ねるなんて甘い事を考えていた

しかし横たわる体に落ちて来る雨が想像以上に不快だった

目を閉じても眠れるわけもなくひたすら耐えたがあまりの不快さに諦めた

本当にバカだと思った

もしかして死ぬ気がないのでは?とも考えてみたが死ぬ気はある

だた勇気がない

仕方がない、もう首を吊ろう

幸い丁度いい紐も場所もある

もう深夜まで待たなくてもいい

私は真昼間、紐を持って庭に出た

昔の家なので物干し用の柱があった

そこに紐をかけて首を輪の中に入れた

紐が切れなければ死ねるはず

きっとうまく行くはず

でも本当に皮肉なものだ

もしかしたら私は死ぬ事すらさせてもらえないのかと笑える事が起きた

私の足元に物干し竿が転がっていたのだ

私はその物干し竿で足を滑らせバランスを崩してしまった

死ぬ気があるのならその時死んでいただろう

でも、その時の私は無様に慌てて紐を掴んでいた

そう…結局死ねないのだ

怖い、とても、怖い

臆病だから飛び降りる事も出来ない

死にたいと言いながらどこかで生を求めている

そう考えると本当に情けなくてどうしようもなくて何だか笑うしかなかった

そうそう、リスカもしたけど死ぬのは無理

腕を切り落とすぐらいしないと無理だと知った


死を考えるのも諦めた私は生きる目的すらないまま相変わらず淡々と生きていた


そんなある日、何故かわからないが仕事を始めようと思った

本当に理由は今でもわからない

わからないけど仕事を始めれば何かが見つかるかも知れないと思った

しかし、年齢的に普通の仕事は見つからない

何の特技も無ければ学歴も平凡

親は私を大学など出すつもりすら無かった

高校も選べなかった

高校は一番学費が安い公立のみ

入試の時、初めて高校の場所を知るほど興味が無かった高校

電車で20分、徒歩30分

今考えると本当に毎日よく通学できたものだと感心する

卒業後は専門学校に行きたかった

バンドを組んでいたのでしばらくバンド活動をしながらバイト生活もいい

高校2年の時に入団した劇団で役者になろうと毎週2時間かけて通った劇団で勉強するのもいい

とにかくその時は夢で溢れかえっていた

でもみんな進路が決まっているのに私だけ決まっていない

その理由は卒業と同時に知る事になる


両親が経営していたお店が経営不振に陥り、母親の一言で引っ越しを余儀なくされた

私は意味が分からないまま知らない土地に連れて来られた

劇団もバンドも友達もその時点で失った

父親は仕事が見つからず愚痴しか言わなくなっていた

母親はパートの仕事を見つけ、私は何もしないまま遊んでいた

父親に生活費を入れろと言われた時、何で?と苛立った

勝手に連れて来られて何を言っているんだと、その時の私はそう思うしかなかった

でも、新聞代も払えない生活

集金に来ると父親は居留守を使うような生活

鍋から食事をする姿

情けない…本当に情けない

勝手な母親に怒りを覚えながら私は仕事を始めた

知らない土地で友達もいない生活

でもどうする事も出来ない

この場所で生きて行くしか無いのだと諦めるしかなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る