第2話夢って何だっけ

母がいなくなって半年

私は何もせずただ息をして目を開けて気が向けば食べての日々を過ごしていた

失った物の大きさは計り知れなかった

一緒に暮らしていた時は正直煩わしいと何度も思っていた

口煩いしギャンブル好きですぐお金を使い込む

嘘が多くて怒りっぽい

正直、母の年齢は死亡届を出した後に知った

母は実の娘の私にも偽りの年齢を言っていた

一人だけいる姉の存在

その姉とのつながりは母親だけ

父親はお互い違う事も姉の口から知らされた

母が再婚した事は知っていた

私が小学生の時に新しい父親がやって来た

その人はよく家に遊びに来ていた人

姉とは一緒に暮らしたことは無い

姉は母を恨んでいた

姉は子供の時、母の姉に預けられていたらしい

何の不自由もなくそのまま養女になる予定だったと言っていた

しかし突然母が姉を迎えにやって来た

親子仲良く暮らそうと言うわけでは無かったらしい

母はお金の為に姉を引き取ったと言っていた

何不自由なく生活をしていた姉は生活費を稼ぐために中学卒業と共に理容店で働いた

しかし突然辞めてしまった

その理由を母の死後知った

「お母さんはお金が欲しかったから無理矢理辞めさせた」

詳しくは知らないが給料の前借が出来ないので辞めさせたと言う事らしい

その後、いろいろな仕事をしながら母に生活費を渡していたらしい

毎日仕事をしてお金を稼ぐだけの生活

何の楽しみもない生活

それでも母親だから…そんな言葉に縛り付けられて生きていた

そんなある日、姉が簡単に捨てられた

そう、母の再婚だ

姉の話によると「もうお金は入れなくていいから」

その言葉の意味は「もうここにいる必要はないから出て行け」だったらしい

小さかった私には当然理解出来なかったし、そんな姉の辛さもわからいまま私は育てられた

父親の存在を知らない私を義父はとても可愛がってくれた

私もそんな義父が大好きだった

しかしその義父も40歳の若さでこの世を去った

くも膜下出血だった

未亡人になった母には大金が入って来た

そう、保険金だ

その保険金を母は1年もしないうちに使ってしまった

女と言うのは怖い生き物だ

自由になると行き止まりを知らない

欲しいものを買って好きな事をする

父親の保険金なのだから全て母の物、そんな考えの人だった

でもそのお金が尽きると同時に私が母のATMになっていた

そう、私は姉と同じ存在になっていた

悔しいけれど母親だから……こんな母親でも好きだから私はどんな仕事でもやってお金を渡していた

その時の私は、母が住んでいたマンションの家賃を払い、更に生活費を渡す日々

月、20万

何故引っ越さなかったのか?それは引っ越し代金など捻出する事が出来なかったから

でもさすがに限界を迎えた

マンションの荷物はほぼ捨てて何とか引っ越し代金を貯めて母を家に迎え入れた

これで毎月の家賃を考えなくてもいい

あれ?

私の夢は何だっけ?

もう忘れた

夢なんてあったかな

思い出した

夢はあった

でもね

全て母に壊されてしまったんだっけ

何度も母に嘘をつかれ、それでも信じてまた裏切られ

いつしか夢を追わなくなってしまった

夢は叶わないから夢なんだと、自分に言い聞かせるように生きて来た


私の人生まで狂わせた母だが憎むことは出来ない

でも私にはもう夢の欠片すらない

それほどの年月が過ぎてしまったから

さあ、明日はどうしよう

生きている意味すら分からくなっていた

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