第6話

 水木の号泣が収まり俺らはもう夕食を食べるべく近くのファミレスに移動を済ましていた。




「いやぁ〜映画面白かったね〜!」




「まぁ普通に感動的なストーリーだったな」




「うんうん!早く優ちゃんと語りたいな〜」




 すっかり俺達は先ほどの映画の話で盛り上がっていた。



 ーーしかし





 ーートゥルルルルーー




 ん?着信音?俺か……?



「あ、私だ。ちょっとごめんね神崎君!席外すね」




「ああ、行ってきな」



 水木は小走りでファミレスの外に一度出ていった。







『は〜いもしも〜し』




『水木ー?俺だよ。健人』




『健人君?どうしたの突然電話なんて』





『少し小耳に挟んだものでな、今日祐也とデートなんだろ?』




『なっなっなっ!?』




『ははは、ほらほら顔真っ赤にすると祐也に変な勘違いされるぞ〜?』




『余計なお世話だよ!!それで健人君は私をからかうために電話してきたの?』





『い〜や、念願の相手と再会して失敗した。だとシャレにならないだろ?だから状況を把握しようと思ってな』





『ええええ!?どうして健人君がそんなこと知ってるのさ!?』




『俺の情報網を舐めるなよ?祐也が昔ポロッと話してくれたことがあってな。探してる人がいるって』




『そ、そうなんだぁ……』

 自分でも動揺してるのが自覚できるくらい動揺していた。




『それとだ』


 その時、電話越しても健人君が真面目な声音になるのが感じとれた気がした。





『昔の祐也を知ってるお前なら、もう既に今の神崎祐也の違和感に気づいてる筈だ』





『え……それって……』



 私が何となく感じていた違和感を健人君は見抜いていたーー

 だけど、どうやって……?




『一つ教えとく、そうだ。今の祐也は昔の祐也ではない。いや、言い方に少し語弊があるな……祐也は変わってしまった。という方が正しいかな』




『変わって……しまった?』

 どういう事ーー




『だが、一つ確証を持てた。』




 確証……?







『今のあいつを助けられるとしたら水木葵。君だけだ』




『助ける?祐也君は何か困っているの?』




『詳しいことは月曜日に話す。水木、祐也の友達としてお願いだ。一生の頼みだ』






『あいつを救ってやってくれ……』





 それは健人君の初めて聞いた声音だった。




 いつもどこか余裕のある健人君がーー





 ーー涙声だったーー

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