第4話

 結局その日はその後何事も無いまま学校が終わっていた。

 現在は自宅まで徒歩で向かっている最中だった。





 まさか水木があの子だったなんて……。




 当時の俺は間違いなく彼女の笑顔に惚れていた。




 だが今は……




 今の俺にあの気持ちを伝えることは許されることではない。

 誓ったはずだ、自ら己に。

 戒めたはずだ。もう恋なんてものはしないと。





 あんな思いを二度としない為にも……。







 結局あのまま何も無かったなぁ……。

 やっと見つけられたのに。





 あの子は私にとっては王子様のようだった。

 言い過ぎかもしれないけど、それでも私にとっては王子様。





 とうとうあの子と再開して、そして想いを伝えられる。はずなのに……。





 あの子と神崎君は同じ人、それは間違いない。

 けど、今の神崎君は私の知っているあの子ではなかった。





 無邪気に笑ったあの顔、心の底から笑っていたあの子の笑顔とは程遠い。





 その正体はハッキリとはわからないけど 、 雲がかかっているようなそんな感じ。





 私の知らない間に何があったの……?祐也君。






 神崎宅





 家に帰ってそのままベッドに直行した。





 悩み、悩み、悩み。

 こういう時寝るのが一番だ。

 なにも思い悩むこともなくなる。





 少しの間だけ俺をこの現実から離してくれる。

 今はただ、それに頼るしかなかった。





「ごめんな、もう決めたんだ」

 知らぬ間に俺はそんなことを1人で呟いていた。





 誰の独白でもなく、俺自身を戒めるために放った己の独白。





「これ以上はもう……ごめんだ」





 ーー何故か枕は湿っているーー









 水木宅



 明日は土曜日。

 私は神崎君の元気を取り戻す計画を考えていた。





「よし、明日は休みだし!神崎君を遊びに誘おう」





 あれ、でもちょっと待って……。





 私、男の子に遊ぶ誘いなんてした事なんてない……!?





 なんて言えばいいんだろどうすればいいんだろ!!





 しかも好きな人だと余計に緊張するっ!!

 気がつけば両手を顔にあてて、一人で暴れていたーー





「明日の朝電話して誘おう!!」

 結局シンプルな方法に決めた私はその日、そのまま眠りについた。









((翌朝))




 俺は携帯の着信音で目を覚ました。

 時刻は朝の7時

「誰だ?こんな朝早くから」

 気怠げにスマホの画面を操作し、電話に出ることにした。



『おっはようございま〜すっ!!!』



 ーープチーー




 もの凄い大きい声だった。

 思わず電話を切ってしまった。




 しかしまた着信音が響く


『はい、もしもし』





『ちょっとぉー!どうして切るのさっ!』






 どうやら電話の正体は水木だったみたいだ。


 しかしなんで急に電話……?


 理由も気になるのでとりあえず対応してみることにした。




『そりゃあ、朝からあんな大声出されたらビックリして切るって』







『あ、そっか〜ごめんごめん』



 軽いなこいつ。






『で?こんな朝早くに何の用?ここまできて間違い電話とか言ったら来週お前の机は無くなってると思え』






『ええー!!意外と酷いことするなぁ神崎君!寝起きだから機嫌悪いの〜?』






『そうだな、強いて言うなら理不尽な起こされ方をした事に腹を立てているかな』






『牛乳奢ろうか?』






『カルシウムが足りなくてイライラしてるわけじゃねぇー!』

 そう言うと水木は電話の奥で爆笑していた。






『そうそう、神崎君って今日空いてる?』






 ん?なんだ急に、しかしこの流れは明らかに遊びの誘いだな……。

 よし、ここは断っておこう。



『実は今日用事が』






『私行きたいところあるんだぁ〜』






『人の話を聞け!!』






『え?なになに?』






『今日は用事があるから遊ぶなら無理だ。と言おうとした』






『なんの用事?』






『えっと、健人と遊ぶーー』






『健人君今日部活だよ?』






 なに!?そうだったのかぁ……。


『じゃあ1時に駅前の時計台前で〜』






『待って!拒否権は!?』



 ーープチーー


 無いってことですね。


 通話が切れた。



 水木意外と恐ろしい奴だな……。

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