第12話 パーティ解散?
「ねぇ。カズマにアスカ? そんな面白くもない冗談を言っていないで一つ相談したいことがあるのだけれど……あ~。カズマ……カズマさん? カズマさんってアレよね。なんていうか……肌が綺麗よね! アスカ……アスカさんも…………そうね! あっ! 料理がとっても上手だわ! うん。二人とも素敵!」
自分の採ってきたのがキャベツではなくレタスだったアクアが、猫撫で声で擦り寄ってくる。
そんなアクアの肩にカズマがポンと手を置く。
「うんうん。安心しろ~アクア。俺達は優しいからお金が必要なんだったら貸してやるから無理していい所を見つけて褒めようとしなくても大丈夫だぞー。」
「ほんと!? 褒めていい気分にさせなきゃダメかと思って頑張って探してみたけど、全然見つからなくてどうしようって困ってたの!」
目を輝かせて喜ぶアクア。
そして罵倒に近い言葉をかけられているのに菩薩のような顔のカズマ。
俺もめぐみんとダクネスに菩薩のような笑顔を向ける。
「いやぁ流石カズマだなぁ。そうだ。めぐみんも無報酬で良いと言ってくれてはいるけれど、今回のキャベツについては俺とカズマが奮闘した割合が大きいとはいえ、俺達だけじゃあここまでの結果は得られなかった。
めぐみんが爆裂魔法で雑魚を倒してくれなかったら捕まえたキャベツをモンスターに取られたかもしれないし、キャベツにだけ集中する事も出来なかっただろう。
それにキャベツをここまで集めることができたのは、ダクネスのデコイがあったからこそとも言える。なぁカズマ。」
カズマは俺に肩を組んでくる。
「あぁ、アスカの言うとおりだ。アスカもこう言っていることだし……どうだろうか? 今回の報酬956万エリスについては、きっちり4等分するというのは」
めぐみんとダクネスが何かを言い出そうとするが、俺がカズマの肩に腕を回し大きな声で二人の声を上書きする。
「おぉーっ! カズマはイイ男だ! 俺もその提案に賛成だ! きっちり四等分!
素晴らしいな四等分! えーっと? 2……240万エリスくらいか?
俺は文句ないよ! これだけあれば当面の生活になんの支障もないもんな!
うん! 生活に問題はない! いやぁ、めでたいなぁっ!」
肩を組んで陽気に笑い、祝う俺達の姿を見て、めぐみんが訝しげに口を開く。
「あのう……カズマにアスカ? 二人とも……さっきの冗談…………本気で言ってませんよね?」
めぐみんの声に俺達の笑い声がピタリと止まり真顔になる。
その反応を見て、めぐみんはぎょっとし、ダクネスは俺とカズマの顔を
俺とカズマは、一度顔を見合わせ、そして
「「 あっはっはっはっは! 」」
と大きく笑い声を上げる。
笑いながらめぐみんの肩をぽんぽんと叩く。
「いやぁ、めぐみんは冗談がウマイなぁ」
「あぁ、本当に。おもしろい冗談だ。」
「なんだ……解散というのは冗談でしたか。」
めぐみんは俺達の言葉に、ホっと息をつく。
「いや。それは本気だ。なぁアスカ。」
「おう。ガチだ。」
「えっ?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするめぐみん。
「大丈夫だめぐみん! アークプリーストにアークウィザード、クルセイダーの上級職が3人もまとまって入れば、引く手
「そうそう。俺達の心配は不要だぞう。俺達は俺達でちゃんとやっていくさ!」
俺とカズマは協力してキャベツの処理に当たった事で、身の危険が少ないと判断できる状態であればお互いにサポートし合える良関係を構築できると気づいていた。
幸運値が異常な事も冒険者カードを見て分かっているし、キャベツが体当たりで攻撃をしてきた際に『うわぁ……あいつ運いいな』というシーンをお互いに目にしている。俺達なら幸運を活かしあう方法もあるかもしれないし、むしろ商売なんかをしてもうまくいく可能性が高い。
そしてなにより最も重要なのは、お互いに安全マージンに関しての意識が高いこと。要は痛い思いやケガをしたくないし死にたくないのだ。
さらにさらに同郷という安心感もあり、こちらの世界の人間には出来ない話もできるのだから、俺達が組むのはなんらオカシイことではなく、むしろ自然ともいえる。
解散の大きな理由として、その安全マージンが大きく関係している。
アクアは蘇生が出来たりとスゴイ能力を持っているから、普通であればアクアと離れることなど考えられないだろうけれど。そもそもの話、死んだり怪我をしたりしなければ良いだけのこと。前の人生と一緒。用心深く危ない事を避ければよいだけのことだ。
そして俺達はアクア自身がおかしな行動をして危険な目に晒される確立が高い事を知っている。
めぐみんは最強の魔法を使えて頼りになる。
だけれど使用において単発のみという制限があり、さらに目立ちすぎるせいで状況が悪化する可能性も高い。
ここまでは良い。
いや、けして良くは無いのだが……まぁいい。まだいい。
問題はダクネスだ。
敵を見つけると『壁になりゅっ!』と悦んで突っ込んで行って、しかも攻撃は当たらない。というか……攻撃しない。
つまりモンスターをただひたすら呼び寄せるというスタイル。
このアクア、めぐみん、ダクネスが3点セットになってしまった今、どう考えても冒険をしたり、モンスターと戦うことにおいて不幸な目に合う未来しか見えてこない。
俺とカズマは、とにかく危ない目にはあいたくないのだ。死にたくないのだ。むしろ楽しく平和に暮らしたいのだ。
魔王? うん。他のチート持ちの勇者たちが頑張ってくれるさ!
だから、解散を願うことは最早必然とも言えた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 二人とも! 急な大金が手に入ったからってテンションがおかしくなっているんですか!?」
「いいや、めぐみん。俺達は冷静だ。」
「いや、おかしいだろう! 私が加入してすぐに解散だなんて新手の嫌がらせをされているような気分になって……なんだか変な気分になってきてしまう!」
「ダクネスが変な気分になっているのを白い目で見れるくらいには冷静だ。」
「はぅん!」
「さぁて、ここはカズマに任せて、俺はとりあえず報酬を受け取ってこよう。」
「アスカ……ないとは思うが……持ち逃げすんなよ?」
「せんわっ!」
こんなやり取りをした後、現金を前にして話は中断。そして一人220万エリスずつを分け、76万エリスを皆でアクアに貸し付ける形で話が付き、現金を分けた。
――瞬間。
「ふっふっふっふ! 借金の心配の無くなったこのアクア様に怖い物はないわ! カズマにアスカ? あなた達は私達上級職の凄さを理解していないようだから、少し思い知る必要があると思うの。だから寛容な私達はしばらくの間、貴方たち二人の我儘に付き合ってあげるわ。どうせ後から『アクア様ー! 僕たちをパーティに入れてくださいぃっ!』って泣きついてくる事になるんだろうけれど安心して。その時はアクシズ教徒になる事を私に誓うだけで温かく迎え入れてあげるから。」
というアクアの一声で解散が決定。
俺とカズマの男二人と。アクアとメグミン、ダクネスの女性陣の2パーティへと別れる事になった。
★・。・゜☆・。・。★・。・。
月日の流れは早い物で、金が入った事で俺は料理人の職はお休みをもらい、カズマと安全に狩れそうなタケノコのモンスターを狩りに行く相談をしたり、他の冒険者に初級魔法を教えてもらって覚えたり、他のパーティに無報酬で荷物持ちとして参加させてもらったりしてファンタジーを満喫しながら過ごした。
その他にもカズマと一緒にアクセルの街の探検し、街の中にもモンスターの気配がある事に気が付いて調査をした結果、素晴らしいお店を発見をしたりと男二人で、とても充実した時を過ごしていると、あっという間に3週間もの時が過ぎていた。
カズマと俺が素晴らしいお店発見の成果を噛みしめながら、ホクホク顔且つ賢者のような気分でギルドに朝ご飯を食べに行くと
「ぎょめんなさぁぁいっ! かじゅまぁ……あしゅかぁ……もう一度パーティを組んでくだしゃあいっ!」
と、泣くアクアと対面したのだった。
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