第10話 討伐クエスト成功
むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
ぎょっくん。
そんな音が聞こえてきそうな勢いで『締め』として出した麦の炊き込みご飯を食べ進めているめぐみん。
お客で賑やかしい時間帯は俺も厨房に入りっぱなしにならなきゃいけないが、基本的に調理人の人数は足りているから余裕も多少あり、俺がめぐみんに料理を提供する事に問題はなかった。
とはいえ昼の時間帯は冒険者達はクエストに出ている者が多く、近場の労働者達がメインの客となり、そんな労働者達は肉体労働が多い為、メシといえば塩も味も濃い目の物が好まれる。
そんな料理はとても数日食べていない人間が食べるような繊細な料理にはならない。
念の為にめぐみんにはスープから提供し、汁気の多い料理から提供して体調に問題がないか様子見していたのだが……まさかずっと食い続けた上に、後半は本調子の人間と同じような物までリクエストされるとは思っていなかった。
結局、労働者達のメシに紛れ込ませる形で、めぐみん用の料理も増量して作るようにして出し続け、俺の手が空いて飯にしようとするまでずっと食っていた。
しかも俺のメシとして持ってきた麦の炊き込みご飯と余り物を乗っけまくったワンプレートを見て、
「なんですそれ? 美味しそうですね。」
と『締め』の一品として要求される始末。
この小さい身体のドコに入っていくのかが不安になるが、この世界の住人はどこかがおかしいのだろう。
もちろん麦の炊き込みご飯をめぐみんにも渡した。
一人遠い目をしてから、新たに用意した余り物を乗っけまくったワンプレートを食べ始める。
カズマとアクアはめぐみんと一緒に食事をしていたようだけれど、当然二人はもう食事を終えていて、カズマはめぐみんの食いっぷりに飽きれ、アクアは酒を飲みはじめて――
「……アクアさん? まだ昼をちょっと過ぎたくらいですよ?」
「え? これ……水よ? 水。美味しい水。とっても美味しい水!」
いいえ。私は知っています。
うちのホールでは水はそんなジョッキで出ません。
カズマはチラ見した俺の視線に気づくと小さく横に首を振った。
俺もカズマに対して小さく頷きアクアを無視することに決め、再び昼飯を口に運び始める。
「んで? カズマさんや。結局どうなったんだ?」
「おう。飯食いながら話聞いてたんだけどな冒険者カードを見ると、この子が上級職のアークウィザードであることは間違いない。そして冒険者カードは偽造不可だ。」
「…………マジで? ってことは、ほんとにこの子が?」
「おう。マジだ。」
チラリとめぐみんを見ると『何見てやがる?』的な表情で、もっきゅもっきゅと麦飯を噛んでいる。
どう見てもお子様なのに上級職……やはりこの世界はわからん。
だが、どちらにしろあんな募集内容でやってくる人間なんて……何かしら残念な人間に違いない。
目を閉じると自然とため息が漏れた。
「おいなんだ!? なんで私を見て溜息をついた!? 溜息の理由を聞こうじゃないか! それと『この子』とかじゃなくて、ちゃんと名前で呼んでほしいんですが!」
「いや……スマンな。なんで上級職様がこんな難がありそうなパーティを選んだのか……そして、引く手あまただろうに何故飯が食えない程に飢えていたのかなんて事を考えてしまってな。」
「うっ……わ、我が力は振るうべき時と目にする者を選ぶ高尚なる力なのだ! 故に時と巡り合わせが悪かっただけの事!」
一瞬たじろいだ感があっためぐみんだけれど、そんなめぐみんを気にすることなくカズマが口を開く。
「まぁまぁアスカ。論より証拠ってなことでお腹が膨れたら証拠を見せてくれるらしいんだ。それに上級職様の魔法はカエルくらいは余裕で倒せるって言うんだから、ソレを見せてもらってから考えてもいいんじゃないか? 俺達も攻撃魔法なんて見たことないんだしさ? いい機会じゃないか。」
「えぇ! いいでしょうとも! 我が最強の爆裂魔法を見せてあげましょうとも!」
カズマの生暖かいフォローは、なし崩しに自分が楽してクエストクリアしてしまおうと考えているのが、すぐに読み取る事が出来、俺もクエスト失敗よりも成功するに越した事が無いので、その考えを受け入れる事にした。
楽ができるなら楽な方が良い。
「ごもっとも。じゃあ急いでメシを食うとするかね。」
★・。・゜☆・。・。★・。・。
「うぅ……ぐっ! ひぃっく! うぅうぅ……」
「カエル怖い……カエル怖い……カエル怖い……カエル怖い……」
「カエルの中って……案外
「知りたくなかった豆知識をどうも有難うっ!」
カズマがめぐみんをおんぶし、俺は心神喪失状態で『カエル怖い』を繰り返しながら泣きじゃくるアクアに手を引かれている。
そして、カズマ以外の面々は一様にぬめっとした粘液を体に纏わせていた。
めぐみんが魔法を見せてくれる事になり、唱える内容を聞くと『爆裂魔法』と教えてくれたので、魔法の詳細を聞くと神や悪魔ですら傷を負わせる最強の魔法であると自信満々に答えた。
相当ヤバイ魔法であるとカズマと俺は判断し、さらに詳しく聞くと『見れば早い』とか言ってぶっ放そうとしためぐみんを説得し、なんとか詳細を聞きだすとどうやら『広範囲殲滅魔法』の類であると判断でき、俺のマップの能力を活かしてジャイアントトードが5匹ほど地中で固まっている地点があったからそこを目標にして爆裂魔法を見せてもらった。
爆裂魔法の効果は凄まじく、地中に居たジャイアントトードも根こそぎ吹き飛ばす威力で、めぐみんが本当に上級職のアークウィザードであることを思い知らされたのだ……が、やはり難ありだった。
爆裂魔法の威力とその轟音たるや凄まじく、地中で休眠状態だったジャイアントトードを起こすには十分だった。
そして大量のジャイアントトードが埋まっている地帯だったらしく、倒したカエルの他に合計5匹ものジャイアントトードが地中から出てくる始末。
もちろん上級職様がいるのだから、『先生お願いします!』状態になった俺とカズマなのだが、肝心のめぐみんが微動だにしなかった。否、倒れて動けなかった。
そう。めぐみんは爆裂魔法一発しか撃てないアークウィザードだったのだ。
その後は悲惨。凄惨。
アクアが食われ、めぐみんが食われ、そして助けている内に俺も食われた。
カエルの体内は生臭さの上に刺激臭もあり、何より圧迫感、閉塞感、そして窒息。最悪な状態。
そして俺はその圧迫感で死因である圧死のトラウマが思い起こされて発狂しかけた。
というか『発狂しかけた』ではなく、少し『発狂してしまった』感もある。
なんせ怖かった。
飲みこまれたジャイアントトードの内側からマジックダガーで切り裂いて脱出、その後襲ってくるカエル共は、再度食われるぐらいならと立ち向かった結果、片手剣スキルを取得していたおかげで2匹を討伐。
最初の1匹含め合計3匹を仕留める事が出来た。
俺がそんな事になっている状態の内に、カズマはめぐみんとアクアを捕食中のカエルを仕留めた。
結局めぐみんの魔法で5匹は爆殺し、その後は剣で5匹討伐したことになる。
結果としては俺、アクア、めぐみんがカエルの粘液まみれになった以外にケガも無く、短時間にジャイアントトード10匹討伐という上々も上々の結果ではあるが、そこに喜びは無い。
さらにギルドへの帰還途中の会話で、めぐみんは爆裂魔法以外の魔法が使えない単発の砲台である事も判明。
そんな単発砲台のせいもあって、他のパーティに入ることもできず行く当てもなく、結局カズマが『男ですらドン引きして心神喪失状態になってしまうようなカエルを使った特殊プレイをした女の子をポイ捨てしようとした』疑惑を避ける為に仲間とする事が決まり、半ギレのカズマが換金諸々やっておくと
そんなこんなでカズマも合流して4人で食事をしていると、隣の女性が話しかけてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます