第3話天使、かくありき
「いやっほおおおおい!!」
「ご主人はどこでも元気ですねぇ」
俺は今、異世界で空を飛んでいた。空を駆けるアイリスに肩を捕まれぶら下がりながら。そんなアイリスの背中からは小さな翼が生えていた。天使や、天使がおるで……。
その様は端から見たら天使に連行されてる罪人以外の何物でもないが、断じて違う。周囲には様々な形をした物体が浮いており、俺はそのうちの一つに手を伸ばす。
すると物体に内包された情報が脳内へと流れ込んでくる。うーん、美味しいオムライスの作り方か。アイリスが作ってくれて『魔法』をかけてくれたら最高なのになぁ。
「ご主人、そろそろいいですか?」
「ああ、頼む」
俺を地面へと降ろすと同時に、アイリスの翼が消える。アイリスはふぅと一息つくと、その場に座り込む。
「ごめん、疲れちゃったか?」
「いいえ、少し休めば回復しますので」
ええ娘や、ええ娘がおるで……。なんて言ってる場合じゃないな。
ここは電脳世界。俺達が使ってるネットワークや電気の関わる設備などの回路そのものを具現化した世界だ。ここには人々があげるサイトや情報が海をたゆたう様に存在しており、触れれば情報を読み取ることができる。アイリス自身がこの世界の住人ではないため俺を連れてきて始めてこの世界がどういうものか知ったらしい。俺も最初はにわかに信じがたかったがな。ちなみに電脳化しているアイリスはともかく、俺はアイリスの力で無理矢理介入してる身なのであまり長時間はいられない。くっ、アイリスといちゃいちゃする時間さえないなんて口惜しい……!
「さて、ご主人。戻りましょうか」
「なあアイリス。ずっと気になってたんだが、あれは放っておいていいのか?」
俺の指差すほうには、無理矢理繋ぎ合わせたようなツギハギだらけの生き物が徘徊していた。出会って一週間、アイリスは何故かあれから常に距離を置くように行動している。
「ああ、あれはデータの残骸です」
「残骸?」
「ご主人達の世界で言うところの『バグ』です。廃棄されて残ったデータが集まって攻性プログラムとして意思を持ったものですよ」
「アイリスなら討伐できるんじゃあ?」
なんせ異世界から魔王を連れ戻すために派遣されるほどである。実力は申し分ないだろう。
「うーん……さすがに厳しいです」
しかしアイリスは首を横に降る。
「なんでだ?」
「電脳化によって、今の私は昔のように魔法を頻繁に使えなくなってます。加えてこの世界に来るときに武器は消失してしまったので……」
アイリスが肩を落とすと、耳も下にふにゃっと垂れる。愛用の武器が無くなったことはかなり応えているらしい。ふむ、しかし武器か。
「武器があればいいんだよな。だったら問題ないしれないぞ」
「……え?」
アイリスの耳がピンと張り、顔をガバッとあげるとこちらへと視線を向けてくる。
「今すぐ行けるけど、どうする?」
「行きます!ぜひ行かせていただきます!」
アイリスが喜びながらぴょんぴょん跳ねる様を見てて思う。人生、生きててよかった。
だが電脳の武器でいいならば、ちょうどいい当てがある。
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