第2話始まりは傍迷惑に
アイリス達の住んでいた世界『タットニア』でははるか昔から人間と魔族による争いが続いていた。しかし今から数百年前、選ばれし勇者とその仲間達の活躍により魔王が打ち倒され、魔王が人間達と和平を結ぶと、人と魔族は徐々に交流を持ち始め、魔王が世代交代してからも平和な日々が過ぎていった。
ところが、温厚であった先代魔王が寿命で亡くなり、彼の息子が魔王を引き継ぐと、彼は再び世界に戦乱の渦を引き起こそうとしたのである。
だが哀しいかな。かの魔王には歴代魔王ほどの実力はなく、また性格があまり誉められたものではないうえに傍若無人、唯我独尊、若くして禿げ頭と良いところはなく、魔族の多くが人間達と過ごすことを良しとしていたため、招集を呼び掛けるもほとんど集まらなかったとのことだった。
そんな周りの反応に魔王(笑)は「ぐぬぬ……」と呻き言い放ったのだ。
「よかろう!ならば異世界で侵略してやる!!」
魔王は異世界への扉を開けると数人の部下と共に異世界━━つまりこの『地球』へとやってきたという。自分の世界が侵略できないからって何やってんだ……。
もちろん、『タットニア』としてはこのまま放置して本当に侵略なんてされたらたまったもんじゃない。魔族と人間達で協議した結果、魔王を連れ戻すために強い者を選出し、異世界へと旅だってもらうことになったのだ。
アイリスはどうやらそのチーム『魔王連れ戻し隊』の一員としてやってきたらしい。可愛くてエリートとかまじ素敵。
ただここで問題が生じてしまった。ここへ来る途中にメンバーは散り散りとなってしまい、あげく人間と接触をとろうと話しかけても、誰にも気づいてもらえなかったというのだ。
それからは一人で魔王や仲間達への手がかりを探そうとするも、何も見つからず、また魔法も何故か使えず、身体もだんだんと力が抜けていき、途方に暮れて何もかも諦めかけていた。
そんなとき、出会ったのが俺である。
そんなとき!出会ったのが!他でもない!この!俺である!
そんなわけでここ一週間はアイリスの異世界事情や俺の世界についての情報交換を行っていた。アイリスもスマホの中に住み始めてからは体調が回復してきているようだ。
アイリスとの会話はもちろん録音したいくらいに心の弾むものではあるが、俺にはもう一つ楽しみなことがある。
「アイリス、今日もやってくれよ」
「ご主人、またですか?本当にご主人は好きなんですね」
「当然だろう?あんなの俺みたいな人間なら誰だって興奮するよ」
「もう、ご主人ったら♪じゃあ少しだけですよ?」
俺は指を画面に当て、アイリスの腹部を撫でる。
「あんっ……!」
するとアイリスはびくんっと身体を揺らし、頬を紅潮させた。
「もう!ご主人、いたずらは駄目ですよ!」
「ごめんごめん、可愛くてつい」
「むぅ……」
再び指を触れさせると、アイリスが小さな手を俺の方に伸ばす。それと同時に、俺の指は
「ようこそご主人!電脳世界へ!」
次の瞬間には目の前に異世界が広がっていた。
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