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機動捜査課のオフィスには守月しかいない。みな盗難されたアンドロイドの捜索に出てしまっているからだ。守月はパソコン端末を操作し、アンドロイド専用管理ネットワークのメニュー画面を呼び出すと、陸自に配備されている5対のアンドロイド管理データを確認した。


「配備場所、稼働状況、特に問題なしだな。陸自の所有だから、問題がおこった方がまずいとは思うけど。災害救助仕様ってどれくらいの性能なんだろう」


守月は興味本位でアンドロイドの個人データにアクセスをした。田邉重工でメンテナンス、つまり陸上自衛隊仕様にカスタマイズしていることは機動捜査課の職員全員が知っていた事実ではあったが、その実際の身体能力データについては公式な発表はなされていなかった。


「ちょっと待て、これ本当にアンドロイドの身体スペックなのか。桁が違う」


パソコンのモニターには通常のアンドロイドの身体能力をはるかに超える数値が並んでいる。守月は自分の机の右わきに乱雑においてある内線電話をもつと、整備課に電話した。


『はい、整備課石上です』

「あ、石上さん、守月です。ちょっと今大丈夫ですか?」

『どうしたの?』

「このあいだ陸上自衛隊に配備された災害救助用アンドロイドの個人データを見てたんですけど、身体スペックが異常な値を示しているんです。この管理システム壊れちゃったんじゃないかと思いまして」

『ばかね、管理システムが壊れたら大問題よ。まって、今いく』


機動捜査課にやってきた石上は、いつも賑やかなオフィスに守月一人しかいないことに気づいて、ちょっと意外な顔をした。


「そっか、みんな捜査に出ちゃったんだね」

「はい、一人で留守番状態です。そんなことより石上さん、これ見てください」

「どれどれ」


石上は守月の隣にすわりパソコン画面を除いた。


「これは……」

「驚きますよね。体重がめちゃくちゃ重くなってるのは分かるんです。ただ歩行速度、耐荷重量、腕力などの数値が異常ですよ、これ。何かの間違えですかね」

「守月、これセーフティーモードのリミッターが完全に解除されているんじゃないの?」

「まさかそんなことは無いでしょう?だって東京都の起動承認まで得てるんですから。その証拠に個体識別番号があって、この端末でこうして管理できるんですよ。きっと特別規定か何かなんじゃないですかね」

「ああ、そう……よね。確かに災害救助仕様だから、特別に許可されたものかもしれないけど……」


石上が言葉に詰まる。


「どうしたんですか石上さん」

「もしこれが暴走したら、たぶん誰も止められないっ」

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