1-14 暗躍 kurmoyoyke
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黒塗りのダチアが、何台ものジープに囲まれて雪道を行く。
ダチアの車内で、山中ハルユキはいくつもの打撲痕を押さえてぐったりとしていた。
「ハル、何度でも聞く。小サマユンクルは死んだのか?」
「......」
生気のなくなったその目は、前を見つめてそのまま、何も語ろうとしない。
その張り付いた視線を覗くうち、元山マハワトはとうとう
「俺にははっきりと、奴の首が飛び、四肢が跡形もなく食い千切られるのが見えた。だがあの時お前はなんと言ったんだ」
近づけられた顔に、曖昧な嫌悪を示してハルユキは顔を伏せて、いともたやすく掴まれた腕を振り払った。
「............俺のキムンカムイが喰らったのはコンクリートの塊だった。確証はないが、奴は今も生きているか...... それとも逃げる先で凍えて死んだか...... 何にせよ父上、申し訳が立たない。逃してしまったんだ......俺は」
「......いや、いいんだ。追えばわかることよ...... ハルユキ。明日はゆっくり休め。砂澤どもは俺がやる」
「......何だと」
「やると言っているんだ。ユンは確実に消耗している、そして俺の見立てではあのお嬢ちゃんも大したことはない」
「ありがとう、父上。俺を気遣ってくれているのですね」
「わかってくれるなら有難い。全ては俺たち一族が生き残るため...... 次こそは俺も本気だ」
「だが父上、俺はこの闘いからは片時も離れたくないんだ。あなたの側で始終を見届けたい」
...... ...... ...... ...... ...... ......
一方、ダチアを囲むジープの一つでは......
「カイト。イワミザワ警察団と連絡が取れた。奴らは確実にそっちに向かうだろうということだ」
「ありがとう、ご協力痛み入るよ。今、誰が向こうに行ってんだっけ」
「テンイチロウ......だったはずだ」
「早く宿に戻んなって、伝えてくれるかな? 早く顔が見たいな、ってのもさ」
「......いいですがね」
「不満かい? ここに潜ってるんのも大変だけど、やっぱり向こう側にいるのも大変そうじゃない」
「そういうことじゃないんだがなぁ。......あれ、入電。しかも丁度カクタロウからじゃないか。報告終わったらテンさんに替わるよういいますか」
「いいよ、今度は僕が出るから。 ......お電話ありがとうございます、こちらトウコウ商事です。......あ、いつもお世話になっております。はい、はい。承知しました。すぐ伝えます、あとで折り返して連絡いたします。失礼しますー」
「......テンさんと話したのか?」
「それどこじゃないよ、ジョリー。捜査6課が動いたらしいよ」
「遅っ。こっちが動いてると知ってるだろうに」
「面白くなって来たじゃん。存分に引っ掻き回してやろうじゃない」
「まあ、あんたが楽しそうで何より......ところでカイト、あの二人をどう思う」
「どうなんだろう。基本的に仲悪そう」
「そう思いますか。まぁ何しろ学会関係者とは言っても片方は末端、片方は本当は無関係ですからね」
「ん? ああ、そっちの方か、村泉なんたろーと谷宮イセポさんか」
「何だと思ったんです」
「いや、テンちゃんとカクタローのことかと」
「............」
「どう思うってのは何かい、能力のこと?」
「俺には依人の能力とやらがよく見えないから...... どう見えるんだ」
「うむぅ...... 僕にはどちらも不完全に見えるな」
「ほう、というと」
「だって、彼らはそれを生業にしていないじゃないか」
そう言ってそれ以上は何も語らないまま、カイトと呼ばれた男は音楽を流す。
「またヘヴィメタルかよ」
「ポストハードコアだよ」
A Skylit Drive の All It Takes For Your Dreams To Come True が流れる中、車群は停泊するところを探していた。
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