第16話 ロストのたたかいはこれからだ3
道中はメノウの能力で魔物同士を戦わせながら力を温存し、魔王城へと辿りついた。
予定通りにロストたちと勇者は二手に別れて魔王城の中を進む。
魔物に追われるロストは女魔物使いたちの方へ向かって走っている。
「もう少し、今です!」
王宮騎士が叫ぶと女魔物使いがロストへの合図として鞭を二度振った。
「すきる〝しっぷう〟」
ロストが一瞬で魔物たちから遠ざかる。
「そこは既に射程内」
王宮騎士が剣を振るい魔物を倒す。
この連携でロストたちは魔王城最上階に来ていた。
「それなりの数は倒せてるので陽動はうまくいってますな」
ミシッ、すぐ横の壁がひびの入った音を立てたかと思うと粉々に吹き飛んだ。 大きな穴の空いた先にはムラムがいた。
さらに勇者達と、禍々しい鎧を着たコクヨウ。
ムラムは背後の気配に気づき振り返った。
「よお、ちょいとマズいことになった」
女賢者の放った魔法でコクヨウの左腕が吹き飛ぶ。 がすぐにコクヨウの腕と鎧が再生する。
「コクヨウが着てるのは魔王の鎧。 聖光の力以外の攻撃は見てのとおり再生する」
勇者が聖光の剣を振り下ろすがコクヨウの体の皮膚に触れただけで止まった。
「コクヨウの野郎、前の魔王様を倒したことで勇者の力が覚醒して聖光攻撃無効のスキルを持ってやがる」
ロストはコクヨウに向かって走り、その足元へ着く。
「とーちゃんのかたき」
ロストがコクヨウの足をポカポカと殴るがダメージは通らない。
コクヨウがロストの首を掴み持ち上げる。
「お前中ボス会議の時にいたチビか。 邪魔だ」
コクヨウは勢いよくロストを放り投げた。
「メノウ、お前の能力でコクヨウを操れないのか?」
「無理、私は仲間を敵と思わせる力だから一人だけの敵には効果ないのよ」
「だからコクヨウはさっき自分の部下を全部斬ったのか。 少しでも隙が出来れば」
放り投げられたロストは全身の痛みを我慢しながらコクヨウを見る。
「す、き、る、〝しっぷう〟」
ロストがコクヨウの足に噛みつく。
弱すぎる者の攻撃のため、コクヨウに痛みはない、ただ不快感のみがコクヨウにあった。
コクヨウは不快感を与えたロストを見る。
わずかに出来た隙。 ムラムがコクヨウの首に牙を立てるのと、ロストが蹴り飛ばされのは同時だった。
コクヨウが剣を振るいムラムの胴を二つに分けた。
「コクヨウ奪ったぜ、お前の聖光攻撃無効のスキル」
ムラムの言葉を聞き勇者の体が反射的に動く。 聖光の剣でコクヨウの胸を貫く。
「お前は多くの人と魔物を傷つけた。 せめて最期は俺の手で」
コクヨウの体が灰となり消える、魔王の鎧だけを残して。
その後、メノウが新魔王となり身を隠しているコクヨウの部下たちを探して倒すために人類と魔王軍は停戦。
セントラに戻った勇者たちは盛大な褒美をもらった。
そしてロストは
「よくきたなおまえたち。 ぼくはこのダンジョンのちゅうぼすロストだ。 かくごしろー」
ゴム製の柔らかい剣を持つ四人の少年少女に言うと、少年たちはロストに剣を振るう。 狙いはロストの頭と両腕と両膝に付いた紙製の風船。
ピピッ。 からくりの時計が時間をつける。
「こわせたのはさんこだね、それじゃあすたんぷかーどだして」
ここは王がロストたちへの褒美がなにがよいか尋ねた時に女僧侶が提案した冒険者気分を味わえるアトラクションタワー。
ロストはここで中ボスを任された。
大ボス役の女魔物使いとロストの体につけた紙風船を割った数で景品が貰える。
「つぎのひとたちがくるまで時間あるから、ちょっときゅうけい」
ロストは床に座りアトラクションタワーの窓から空を見る。
「とーちゃん、ぼくちゅうぼすのおしごとこれからもがんばるよ」
中ボスになろう 完
中ボスになろう 稲垣博輝21 @hirokisama
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