第15話 ロストのたたかいはこれからだ2

 馬車が動きを止める。 異質な空気を感じ取り王宮騎士が馬車から飛びだす。

 既に勇者のパーティーは馬車から降りて、行く先を遮る大量の魔物の群れを見ている。

 魔物を率いるのはシルクハットのような黒い帽子をかぶったスーツ姿で全身が緑色の魔族。

「この先の人間の町を襲う予定でしたがこんな大物と出会えるとは、その特殊な鎧知ってますよ。 勇者だけが身に着けれる聖光の鎧ですよね?」

 勇者パーティーの女賢者が魔法で作った炎の矢をスーツ姿の魔族へと放つ。

 スーツ姿の魔族は片手で魔法の炎の矢を握り消滅させた。

 勇者が剣を構える。

「今のを片手で消すか、手強そうだな」

 勇者が魔物の群れに軽く視線を移す。

「数が多いな、力を温存するつもりだったが難しそうだな」

 勇者に続くように王宮騎士も剣を構えた。

 圧倒的な数の有利さで勝利を確信しているスーツ姿の魔族はニヤリと笑った。

「勇者の首をコクヨウ様への手土産にいただきましょうか。 最後に教えてあげましょう、107の魔物を率いる私の名は」

 スーツ姿の魔族が名乗ろうとした瞬間、背後がうるさくなった。

「騒がしいですよ、お前たち何をしているのですか?」

 スーツ姿の魔族が振り向くと魔物は互いを攻撃していた。

 50……、30……と魔物の数がみるみる減っていく。

 一つの影がスーツ姿の魔族の前へと降りてきた。

「お前はムラム!」

 影の正体である男の顔を見て叫ぶとスーツ姿の魔族はムラムの手でその胸を貫かれた。

「雑魚だな」

 吐き捨てるように言うとムラムは体が砂となり消えていくスーツ姿の魔族から腕を抜き勇者たちを見る。

「勇者パーティーだな? 俺に力を貸せ!」

「あなたたちの目的はコクヨウを倒すことでしょ? なら私たちと同じ」

 魔物の群れが消えるとメノウがムラムの後方からやってきた。

「あっ、かぜひきそうなふくのおねーさんだ」

「風邪って、この服は魅力を高める魔法効果があるのよ」

 メノウがロストに気づく。

「あなた新しく中ボスになった子よね?」

 メノウの言葉を聞き勇者パーティーと王宮騎士がロストを見る。

(この子が中ボス?)

「あっ、そういえばむちゃくちゃ弱い中ボスがいると冒険者から報告を受けたことがありましたな」

 王宮騎士の言葉に一堂が納得した。

「あれ、かたそうなおにーさんはどこ?」

「フェルかあいつはコクヨウの部下連中に倒された。 コクヨウの野郎、魔王様をたおしたあと俺たちのダンジョンを攻撃しやがった」

「私もムラムの数名の部下と生き残りダンジョンを脱出、部下を各地に潜伏させてコクヨウを倒せる戦力を集めようと思ってたの」

「そしたら勇者が動いたって報告がはいってたな、今はコクヨウの根城となっている魔王城へ続くここで隠れてた」

 ムラムがロストの首輪に気づいた。

「なあその光る首輪なんだ?」

「ぼくまものつかいになったおねーさんのなかまになったんだ。 このくびわそのあかし」

 勇者が剣を構えたままムラムたちに問いかける。

「コクヨウを倒すために我々に力を貸すということか?」

「違う、お前らが俺に力を貸すんだ。 勝手に魔王jになったコクヨウは気に入らないからな」

「まあいいだろう、お前たちには私たちと一緒の馬車に乗ってもらう。 少しでも妙な素振りを見せたらこの剣で斬る」

 

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