第14話 ロストのたたかいはこれからだ1

 ロストと女魔物使いはセントラの近くの林に来ていた。 ロストの首に光る首輪が付いている、これは野生の魔物ではなく魔物使いと契約している証。

 魔物使いと契約した時に自動で出来るこの首輪の付いた魔物は魔物使いに危険が迫った時を除き人に攻撃することが出来ない。

 また人が魔物使いが使役する魔物に攻撃することを禁じられている、破ればそれなりの罰が与えられる。

 二人が林に来たのは魔物使いの力に慣れるため。

「それじゃいくよ、ロスト君」

 女魔物使いの右手には鞭が握られている。

 この鞭で魔物使いが自分の魔物を叩くときずなが深まり、強い絆で結ばれると魔物が潜在的に持つスキルを一つ開花させることが出来る。

 女魔物使いが鞭を振るいロストを軽く叩く。

 ロストの体が小さな輝きを放つ。

 クレーダンジョンからの友好により1回でスキル開花できるほど二人の絆は深まっていた。

「ロスト君スキル使ってみて」

「うん、すきる〝しっぷう〟」

 わずかな距離ではあるが秒にも満たない速さでロストは移動していた。

「速いね、それじゃこのスキル中心で訓練しよう」

 女魔物使いが手に持っている鞭を見る。

(スキルに開花したから、もうロスト君を叩かなくていいよね)

 数日後、二人と女僧侶と戦士が勇者に呼ばれた。

「これから魔王の城へと向かおうと思う。 魔王の城へついたら君たちには陽動をしてもらいたい」

「ようどう?」

「騒ぎを起こして魔王軍の魔物を引きつけることだ。 君たちが他の魔物を引きつけている間に僕が勇者の持つ聖光の力で魔王を倒す」

「ぼく、とーちゃんのかたきとりたい、だからいっしょに」

 勇者が首を横に振る。

「林での君の特訓を見ていたが、スキルは速いだけで威力が少しもない。 残念だけど魔王と戦うメンバーに入れることは出来ない」

 勇者は王宮騎士4人をロストたちの護衛としてつけることを話すと二組に別れて馬車に乗り込んだ。

 動き始めた馬車の中で戦士がつぶやく。

「俺たちまで行くことになるなんてな」

 一緒に同乗していた王宮騎士が戦士たちに語りかける。

「連携を考えて以前からのパーティーの方が動きやすいと判断したのですよ」

 女魔物使いの膝に座るロストを王宮騎士が見る。

「そちらの魔物、ロストという名前でしたかね。 スキルの〝しっぷう〟を使えば敵の魔物からノーダメージで逃げ切れるでしょう」

 王宮騎士は魔王軍や敵となる魔物たちとの戦い方についてロストたちと打ち合わせをする。 細かく決めるよりもシチュエーションによって戦い方を変えた法が動いきやすいと判断し最小の取り決めだけにした。

 馬車は歩みを続ける、道中で夜がくれば王宮騎士が交互に夜の護衛として立ち、町があればそこに入り休んだ。

 太陽が昼を告げる高さの時、馬車が二度大きく揺れ

た。 これは以前から勇者たちが決めていた合図。

「ここから先の町は今の魔王軍に支配されています。 戦う準備をお願いします」

 王宮騎士の言葉に従いロストと三人組は自身の武器を持った。

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