第13話 魔法使いの決意3
リュドラルを出てから二日ほどの夜営をして馬車は王都セントラに着いた。
セントラはこの大陸の人間の王が住む城があり、魔王倒す
馬車から降りたリュドラルの人達は、これからの事を思案していた。
親族を頼ろうとする者、この街で手に職をつけようと考える者、方針を決めた者が動こうとした時強い風が吹く。
フードが飛ばされてロストの顔が露わになる。
「ま、
停留所の近くにいたセントラの住民の一人が思わず大声を上げた。
「なんでこんなところに……、魔王軍のスパイか?」
声を聞いた他の住民も集まってくる。
「お前、魔王軍を招き入れようとしてるんだろ!」
男はそう言うと小石を拾いロストに投げつけた。 他の人も石を拾いだすのを見て女魔法使いがロストをかばうように前に立つ。
「ロスト君はそんなことしない」
「魔物なんて信じられるか!」
男が石を投げようと腕を振り上げたが、腰に特殊な飾りの付いた鞘に入れられた剣と胸に不死鳥に似た紋章の入った鎧を着た男がその腕を抑えた。
「騒がしいが何かあったのか?」
「ゆ、勇者様。 魔物が魔王軍を呼ぶために潜入していたんです」
勇者は石を投げようとしていた男の手を離してロストへ視線を移動させる。
「ロスト君はそんな子じゃない。 ロスト君もロスト君のお父さんも人間の味方だよ」
「味方か、そういえば先程城の兵からリュドラルの街を襲った魔王軍と戦っていたドラゴンウルフが死んだと聞いたな」
「とーちゃん、しんじゃったの……?」
ロストの目から大粒の涙がぽろぽろと流れる。
「ぼく、とーちゃんのかたきをとりたい。 ゆーしゃさん、ぼくをなかまにして」
「ふざけるな、勇者様の仲間になった魔物なんかいないんだよ!」
最初にロストに石を投げた男が再びさけぶ。
その男の言葉を無視して勇者はあることを思い出した。
「我が一族に伝わる話では魔物を使う者を仲間にしたことがあったらしい」
「それは今では誰もならない魔物使いのことですな」
勇者の言葉のあとを継いだのはセントラの神父。
「なぜ、なる者がいないんです?」
勇者の問いに神父が答える。
「単純に弱いからです。 使える魔物は一匹だけ、スキルもほとんど覚えない」
神父がロストを見る。
「まあ魔物使いに使役されることになった魔物は基本的に人を襲えませんが」
「なら私魔物使いになる。 それならみんな安全でしょ?」
「魔法使いのお嬢さん、もう少し考えたほうがいい。
魔物使いになると魔法は一つも使えなくなる、そればかりか使役する魔物とは風呂の時も寝る時も一緒にいないといけない」
「なる、今すぐ魔物使いになる」
神父の説明を聞いた女魔法使いは何を想像したのか軽く鼻血を出しながら自身の決意を告げた。
「分かりました。 では教会で
この大陸では最初の職は冒険者に仕事を斡旋するギルドや教会で得ることが出来るが、儀式の書物があるセントラの教会でしか転職を行うことが出来ない。
こうして女魔法使いは女魔物使いに転職し、今まで覚えた魔法の呪文の力を失った。
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