第12話 魔法使いの決意2

二番目の鉱山でもギルの手かがりはなく、ロストは三番目に近い鉱山に着く。

 既に鉱山での一日の作業は終わっていて誰もいない。

 ロストの腹の音が鳴る。

 「そういえばおなかぺこぺこだった」

 地図を広げて鉱山の近くの街リュドラルの場所を確認してそこへ向かう。

 街に着くとロストは顔を隠したまま近くの人に食事の出来る場所を聞いた。

 教えられた酒場の戸をくぐるとロストの鼻が懐かしい匂いを感じ取る。

 その匂いを放つ人物の所へ走り、膝に抱きつく。

「とーちゃん、あいたかった」 

「ロスト、なんでここに?」

 父との再会に涙を浮かべながらロストはここに来た理由を話す。

「ぼくとーちゃんのかわりにちゅうぼすやってたんだ。 でもまおうさまくーでたーとかいうのでたおされたって」

 カンカンカン、カンカンカン、危険を知らせる鐘の音が町に鳴り響く。

 ギルは酒場を出て、街の周りを一望出来る見張り台で鐘を打つ男に尋ねる。

「何があった!?」

「王国からの連絡書に載っていた、最近ここらの街を襲ってる魔族がたくさんの魔物モンスターを連れて近づいてる」

 見張り台に立つ男の胸に矢が突き刺さる。

 ギルが空を見上げると弓矢を構えた翼の生えた魔物が一匹飛んでいた。

 ギルは息を吸い込み強く地面を蹴った。

 一瞬で間合いを詰めるとギルは指先から鋭い爪を出し飛んでいる魔物の躰を引っ搔く。

 魔物の躰に深い傷が刻まれ血が噴き出し、地面へと落下する。

 ギルは地面に着地すると、既に息絶えた鳥の魔族を軽くにらみ街の入り口へと視線を移す。 

 二人の魔族が50匹程の魔物を引き連れて堂々と街へと入ってくる。

(強い血の匂いと殺気、あの二人強敵だな)

「みんな早くこの街から逃げろ! ロスト、お前もだ!!」

「とーちゃん、ぼくもいっしょにたたか」

「こっち」

 ロストの声をさえぎり、一人の女性がロストの腕を引っ張る。

 その女性はいつもダンジョンに来ていた三人組の一人、女魔法使いだった。

 女魔法使いはロストを抱きかかえ、他の街へ向かう馬車の停留所へ向かう。

 二人の魔族のうち一人がギルへと話しかける。

「なぜ街の者を逃がすのですか、見た感じあなたも魔物ですよね?」

「街を襲ってるお前らが気に入らないだけさ。 それと息子にカッコいい背中を一度ぐらいは見せてやらないとな」

 ギルが闘気とうきを剥きだしにして戦う構えを取る。

「いいでしょう、コクヨウ様の新生魔王軍に逆らう見せしめにさせてもらいますよ」

 二人の魔族が連れていた魔物と共にギルへと襲いかかった。


 自身を抱きかかえながら走る女魔法使いにロストは自分の気持ちを言う。

「ぼくもとーちゃんとたたかいたい」

「ロストくんがいても足手まといにしかならない」

 女魔法使いは停留所に着くとロストを載せ自身も乗り込む。

 そこには戦士と女僧侶もいた。

「なんでみんないるの?」

「薬草採取の依頼を終えてすぐ追いかけたんだ。

ただ行き違いになると困るんで三番目に近い鉱山の近くの街に向かい、ロスト君が来たか確認することにしたんだ」

 戦士は軽くため息を吐く。

「そしたら、この騒ぎが起きたんだ」

 女魔法使いがここまであったことをかいつまんで女僧侶に話す。

「やっぱりぼくもどってとーちゃんといっしょに」

 女僧侶が人差し指を立ててロストの口につける。

「ロスト君のお父さん強いんでしょ? なら信じよ」

 ロストは自身の気持ちを抑えて頷く。

「王都セントラ行き、定刻どおりに発車します」

 馬車を操る運転手がアナウンスをすると馬車が走りだす。

 

 セントラ行きの馬車が出てから半刻、沈みゆく夕日が街の中央に断つギルを照らしていた。 

 ギルの躰は50の魔物とそれを率いていた魔族の返り血と、ギルの躰に突き刺さった無数の武器によりギルの躰から流れた血により紅く染まっていた。

「ちっ! こんなところで兵を失うとはな、コクヨウ様に頼んで補充しなければ」

 それなりの傷を負った魔族が既にその命が消えながらも立つギルを睨み来た道を引き返す。

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