第10話 中ボスじゃなくなる(2)

ダンジョン最奥、ロストはいつもの三人組とテーブルを囲い鍋料理を楽しんでいた。

「みんなでおしょくじ、たのしいね」 

「そうだね、ロスト君は好きな食べも何?」

「ぼく、おにくがすき」

「だからロスト君の後ろにある宝箱、いつもお肉が入ってるんだ」

 鍋料理を楽しんだあと、三人組とロストは自分たちが使った食器と鍋をきれいに洗い、近くに設置したタンスの中にしまった。

「じゃあ、また来るね。 今度は街で流行ってるお菓子持ってくるね」

 三人組が帰ろうとした時、ボーンジがやって来る。

「おやお帰りですか」 

「はい、いま丁度食事を終えたので。 あ、そうだこれボーンジさんへのお土産です」

「お気遣いありがとうございます」

「それじゃあ、また来ますね」 

「はい、帰りのさいはトラップの床に気をつけて下さいね」

 三人組を見送るとボーンジはロストの方を見る。

「では食事後の休憩が終わったらいつもの訓練としましょうか」 

 一匹の黒い蝶がボーンジの近くを飛ぶ。

(これは魔王秘書様が作る魔力で作った蝶)  

「なぜこんな所に?」

 ボーンジが魔力の蝶を優しく掴む。

「ロスト殿、このダンジョンから出ますぞ!」  

 ボーンジは慌ててロストに言い、ダンジョンボスの部屋の出入口に立つ。

「ほねおじさん、どうしたの?」

「魔王秘書様の蝶が伝えてきました。 クーデターにより魔王様が倒されたと。 詳しい話は逃げながら話しましょう」

 ボーンジが歩き、その後ろをロストがついていく。

「ほねおじさん、クーデターってなに?」 

「反乱です。 起こしたのは幹部が一人コクヨウ」

(魔王様は勇者の血を持つ者しか倒せない。

その血を持つコクヨウなら倒せても不思議はないが)

 ボーンジとロストはクレーダンジョンの1階へと移動した。

「もう少しですぞ、ロスト殿」

 ボーンジが前に進んでいくと、斧を持つ二匹の魔物が眼前に立つ。

 その二匹はクレーダンジョンでは見慣れない。

「おやおや散歩の時間ですか? 中ボス様」

「お前達、何者だ?」

 ボーンジが剣の柄に手をかけながら問いかける。

「人事異動でこのダンジョンの中ボスが替わるので、そのことを伝えにきただけですよ」

「魔王様を倒したコクヨウの命令でか?」

「おや、ご存じでしたか。 ついでに前魔王様に味方する反乱分子の処理も任されましてね」

「お前達、コクヨウに味方するのか?」

「あの方は勇者の血と魔族の技を使える。 それに忠誠を誓うなら成果次第では重く取り立ててくれるそうでね」

「そうか」

 ボーンジは剣をすぐ横の壁に奮う。 壁が崩れて大きな穴が開く。

「そんな所を攻撃するとは、何考えてるんだじーさん?」

「ロスト殿、その穴から外に出てください」

 ボーンジが開けた穴はロストが丁度通れる大きさだった。

「うん、分かった。 ほねおじさんはどーするの?」

「私はこの二人を倒したます。 ここから出たらまっすぐ行ったところにある街に行ってください、いつもの三人がいますから」 

 ボーンジが剣先を二匹の魔物に向ける。

 ロストはすぐに穴から外に出てまっすぐと歩いいく。


ロストが街に着く頃、ボーンジは目の前にある二匹の魔物の倒れた姿を見つめる。

「ここ程度の相手に引き分けとは、腕がなまりましたな」

 ボーンジの躰には新しく大きさ傷が出来ていた。

「ロスト殿、ご達者で」

 その呟きがボーンジの最後の言葉になった。

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