第3話 中ボス始めました 3

 秘書が手を降ろすと目の中から紋様が消え色も普通に戻る。


「普通ドラゴンウルフ族は生まれた時からレベル5です。 目の前にいるこの子供は完全な戦力外です」


 魔王が立ちあがり、その歩みをロストに近づけていく。


 圧倒的な威厳の前にロストの体の震えが増す。


 魔王がその手をロストの体に近づける。


 ふわっ。 ロストの背中を魔王がやさしく撫でる、その心地よい感触に魔王の顔が思わずにやける。


「秘書。 こいつの毛、すごく気持ちいい」


 秘書はその光景をジト目で見つめていた。


「月に一度、こいつの体をさわりに行きたいのだが」


「ダメです。 魔王様がこのダンジョンを出てはいけません」


「いいじゃろ、月に一度ぐらい?」


「ダメだと言ってるでしょーが。 極度の方向音痴なんだから帰ってこれなくなりますよ」


 不服そうな顔を浮かべる魔王だが、その顔がすぐに笑みに変わる。


「ならば、こやつを中ボスに任命する」


「・・・・・・は? その子供は戦力にならないんですよ」


「秘書よ。 魔王であるわらわの命じゃ。 不服も異議も許さぬ」


 ちらりとロストを見る魔王。


(中ボスになれば、月に一度の定例会に出席しなければならぬ。 その時にはあの毛が触り放題というわけじゃ)


 魔王の意図に気づいた秘書は小さなため息を一度吐き、すぐに気持ちを切り替えた。


「では、クレーダンジョンの第五階層の中ボスとして配置しましょう」

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