秘められた真実
先に昇降口に着いた陽菜。
「んー、さっきの千昌変な感じ…」
先程の千昌の様子を疑問に思いながら、自身の下駄箱に向かう。
下駄箱には扉がついており、その上に学籍番号と名前が記載され、男女別々に仕切られて管理されている。
「何か悩み事とか…?」
そんな独り言とともに扉を開けると、
―――ドサッ
「……っ!」
扉からたくさんの手紙と、先日失くしたと思っていたタオルが破られた姿で足元に落ちてきた。
(……まただ)
「これだって悩み事…だよなぁ」
陽菜は力なく、その場にしゃがみ込む。そしてそれらの手紙の封を開け、中身を確認する。
『あんた哉汰くんの何なの』
『何度言えばわかるの、ぶす』
(……何って。幼馴染、なんだけど)
しかしそんな事を思ってみても仕方がない。実はこのような出来事は決して初めてではない。初めての異変は今から一ヶ月も前に遡る。その時は一通の手紙に、『哉汰くんに近づかないで』という一言が書かれたものが同じように下駄箱に入っていたのだ。
(バレンタインデーが近づくにつれて酷くなってきたなぁ…)
そう思いながら、お気に入りのタオルだったものと手紙を拾い上げて素早くスクールバックにしまう。
「お気に入りだったのに…」
こんなものを千昌に、そして哉汰にでも見られたら大変な事になる。
(んー、哉汰の事を好きな人が犯人だと思うんだけど、どうしよ…)
全てをしまい終えると、陽菜は昇降口の近くにあるベンチに腰をかけた。
先生に相談した方が良いのではないか、と思う反面、このような事をする人間に先生という切り札を使ったら何かしらの仕返しをされるのではないかと不安がよぎる。
(ほんと、理不尽な世界・…)
柄にもなくセンチメンタルな気持ちになっていたその時、陽菜の目の前に学年カラーとは違う色の上履きが止まった。
「……?」
不思議に思った陽菜が顔をあげると、そこには五人の女の人が立っていた。
「あ、ここ使い……」
「痛い目にあいたくないなら、手紙の通りにした方が賢明よ?」
「使いますか?」という疑問を遮るように、リーダー格と思える一人の少女が陽菜に向かって言葉を放つと、
「……え」
早々に踵を返して校門に向かって歩き始めてしまった。
「……ちょっと待って下さい!」
その言葉は虚しくも届く事なく、五人の姿は遠ざかってしまった。
(あの人達が……犯人なの?)
陽菜の頭はもうショート寸前で、心臓はうるさいくらいに音を立てている。
「陽菜、お待たせ」
「千昌……」
それから数分経ってから千昌が顔を出した頃には、陽菜の鼓動も落ちつき、先程の出来事が無かったかのように笑顔を作った。
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