狂い出す歯車
——キーンコーン カーンコーン
授業終了の鐘の音が鳴る。
するとまだ先生が声をかけてもいない内にあちこちから筆箱にペンをしまう音が聞こえてくる。
「………」
そんななか、陽菜は一人ぼーっとしていた。
(一体、誰があんなこと……)
紙に書かれていた内容を思い出す。あれは誰からの嫌がらせなんだろう…。
それに、哉汰の事を好きな女の子だとは思うけどそんな範囲では誰が犯人かなんて絞り込めない。
「ひーなっ」
「ひゃっ!!」
そんなことを考えていると、後ろから背中を叩かれた。
「もう授業終わったぜ。早く戻るぞ」
「か、哉汰……」
先程のことがあったからか思わず陽菜の声が震えた。
「どうした?何かあったのか?」
「な、何でもないよ…!千昌は?」
こういう時の哉汰の勘は鋭い。だからか、頭の中から拭えない不安と姿が見えない千昌に意識がいき、少し焦った口調になったのは気のせいではないだろう。
「千昌なら、先生が……」
「千昌頭良いから先生も何かと頼っちゃうんだろうね!すごいなぁ!」
陽菜にとっては哉汰が自分の異変に気がつかなければいいという一心で、話題なんて何でも良いからと必死になっていた。
『……何だよ、すぐ千昌千昌って』
「え?」
陽菜の質問に、何か言った様子だったがそっぽを向いて放った哉汰の言葉は聞こえなかった。
「いいから、行くぞ……!」
すると、痺れを切らしたのか哉汰はグイッと手を引いた。
「やっ!!」
それを、誰かが見てるかもしれない、という不安から腕を振り払う陽菜。
「………」
「あ、ご、ごめん……!」
自分のやったことの重大さに気がつき謝ったが、哉汰が俯いてしまっているせいで表情まで見えない。
「………先に戻る」
「あっ!哉汰!待って……!」
すると、陽菜の呼び止めも虚しく、哉汰は教室から出て行ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます