芽生える嫉妬と弾む恋心 side陽菜
——キンコーン カーンコーン
「これで今日のHRを終わりにする。
部活と委員会がある奴は頑張れよ。そんで帰宅する奴は気をつけてな」
先生の挨拶でクラスがざわつき始める。
「陽菜、行こうか」
私は委員会組。そう声をかけてきた千昌と一緒に保健委員を務めている。
「あっ、うん」
そして哉汰は部活組だ。
「哉汰ー、今日は決めてこうぜ!」
「おう!天才哉汰様がバシバシ点数取ってやるよ」
「生意気言うなって!でもサポートは任せろ!」
哉汰はサッカー部のエース。それに加えて明るい性格だから男女問わず人気がある。
「哉汰くん!」
そう声をかけて近づいたのは翠川さん。
「今日の放課後にある練習試合、観に行ってもいい?」
そう言って首を傾げる彼女の姿に、周りにいる男の子達は鼻の下を伸ばしている。
「応援しにきてくれんの?さんきゅ」
そう笑う哉汰もきっと嬉しいんだろうと思うと複雑な気持ちが溢れてくる。
私なんて今日練習試合があるなんて知らなかった。翠川さんは哉汰の事、何でも知ってるんだな…。
「……はぁ」
そう思うと自然と大きなため息がでた。
「何、そんな大きなため息ついて」
そう不思議な顔をする千昌に、私は力なく『あれ』とバレないように視線を二人に移した。
「あぁ、練習試合の事?」
けろりとした表情で話す千昌。
「……千昌は知ってたんだ」
「“は”って…陽菜は知らなかったの?」
「だって、チョコの事ばかり気にしてたんだもん」
「じゃあ陽菜も哉汰の試合観に行けばいいじゃない」
簡単に言う千昌に少し腹が立つ。
乙女の心は繊細で複雑なのに…。
「あんなに可愛く言えないもん」
そう言って翠川さんを見ると、千昌は楽しそうに笑いながら叫んだ。
「哉汰ー。俺らも次の練習試合観に行ってもいい?」
突然の事に驚いていると、
「は?当たり前だろ!てか来いよ!」
そう言って哉汰も笑って返してきた。
男の子同士って…いいなぁ。
そう思っていると、
「陽菜もちゃんと俺の勇姿見に来いよな?」
そう言って哉汰が私に駆け寄ってくる。ふと翠川さんに目をやると、どうやら他の男の子に話しかけられていてこちらに来れそうもない。
「行っても…いいの?」
驚きのあまり、いつものテンションで話しかけられない。
「ちゃんと応援しろよ?陽菜の応援すげー響くから相手もビビるんだよ」
そう言って馬鹿にしたように笑ってくる哉汰。
「何それ!応援してあげないからね?」
こうして口から出るのは可愛くない言葉だけど心の中は嬉しくてしょうがない。応援が哉汰にちゃんと届いてたんだって思うと、自然と顔がニヤつく。
「怒るなって!見に来る日は言えよ?そん時は陽菜の為にゴール決めてやるから」
なんて笑って言われたら、
「えー。本当に?約束だよ!」
ますます好きになっちゃうよ…。
「っと、やべ!アップしねーと先輩にどやされる!
じゃあな、千昌!陽菜!委員会頑張れよ」
哉汰は時計を見て焦ったようにそう言うと教室を出ていった。
「やったね?陽菜」
コソッと耳元で囁く千昌。
「……うん。ありがとね、千昌」
今日で二度目になる感謝の言葉に、千昌は優しく笑った。
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