両片想いの恋煩い side千昌
俺には手のかかる幼馴染が二人いる。
「月曜日って本当憂鬱だよなぁ」
そうボヤくのは幼馴染の一人である
「憂鬱なのは一週間後じゃない?」
そう笑い返せば、
「なっ、何言ってんだよ!」
哉汰は顔を赤くして照れたように慌てる。
俺が言った一週間後には、バレンタインデーという素敵なイベントが待っている。
そう。哉汰には好きな人がいる。
それは俺もよく知ってる人物で、彼の意中の相手はもう一人の幼馴染である
「一週間後…緊張する?」
そうニヤニヤと笑うと、
「な、何の事だかわかんねー」
そっぽを向いて返してきた。
「さぁ、何の事だろうね?」
そう意地悪で返せば、
「聞いといてしらばっくれるなよ…」
そう不満気に声をあげた。
「しらばっくれてるのは哉汰の方だろ?……あ、噂をすれば」
そんな哉汰に苦言を呈せば、目の前には今話題の相手が歩いていた。
「……」
哉汰に目をやれば走り出そうとうずうずしている。何を躊躇っているんだか。
「……行ってきなよ」
俺がそう後押しすると、少し恥ずかしそうな、そしてお節介だと言わんばかりの目で訴えてきた。
そんな風に思いながらも陽菜に駆け寄ってじゃれつく哉汰を見ていると微笑ましい気持ちになる。
「……本当、じれったいなぁ」
そう呟いた俺の声は、穏やかな風に攫われた。
————————————……
学校に着き、教室に向かう。
クラス発表の時はまさか三人とも同じになれるとは思っていなかったから驚いた。
「おはよう、鈴森さん!」
「おはよう!
今陽菜に挨拶してきたのはクラスのマドンナと騒がれている
こう言っては悪いが、俺は彼女をあまり良く思っていない。
「風谷くんと哉汰くんもおはよう!」
そう言って甘ったるい声で話しかけてくるが、彼女の狙いが哉汰であるという魂胆は丸見えだ。
「ああ、はよー」
哉汰はちゃんと返してるようだが、俺は聞こえてないフリをする。こんな嘘が苦しいのは自覚済みだけどしょうがない。
席の前で楽しそうに話をする翠川さん。彼女は気がついていないのかもしれないが俺からしたら哉汰が陽菜を気にかけているのがバレバレだ。
「哉汰くん!今日の数学の課題やってきた?」
そう言って話しかけると、案の定課題をやってきていない哉汰。そこにまさか陽菜まで名乗りをあげるとは思わなかったけど…。
「風谷くんは真面目だからやってきてるよね?」
「……どうだっただろう」
俺はそう適当に答えると、彼女の甘い声を遮断し、陽菜に課題を教える為教科書とノートを広げた。
前を見れば嬉しそうに哉汰に勉強を教えている翠川さん。陽菜は課題に取り組みながらもその様子を見ては落ち込んでいる。
「課題をやってこないのは感心しないな?」
そう会話から始め、陽菜の頰を引っ張る。
そんな切ない顔…しないでほしい。
笑顔の陽菜が好きだよ、なんて言えないから今はこうして強引に笑わせる。
「ふふ、ありがとね千昌」
俺は、この言葉で十分だから。
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