第12話 合宿二日目(2):肝試しの夜

 下山してキャンプ場へ戻った俺たちは、夕飯の準備に取りかかった。

 二日目の献立は肉じゃがと味噌汁、あとは漬け物の組み合わせだ。

 綾崎あやさきさんは昨日に続いて、これまた次々と怪しいドリンク類や果物を食材として投入しようとしてきたので、その度俺と由美ゆみで没収した。

 それが功を奏し、今回はまともな料理が完成したのだ。

 綾崎さん、余計なモノさえ入れなければちゃんと料理できるのになあ……

 これを綾崎さんの魅力と言っていいものかどうか、夕食を食べながら俺は、今朝の綾崎さんとの会話を思い出していた。


「次は肝試しだねー」


 由美が肉じゃがを頬張りながら言う。


「……」


 綾崎さんは静かに食事をとっている。


「確か、生徒会が脅かし役やるって話だな」


「そうなの? じゃあ幽霊の絵里えりちゃん見れるのかー! 楽しみだねー」


「……」


 終始無言の綾崎さんが心配になり、声を掛ける。


「綾崎さん? どうしたの?」


「え! 何がですか!?」


 突然驚き声が大きくなる綾崎さん。心なしか顔色が悪いようにも見える。


「な、なんか元気なさそうだったからさ、大丈夫?」


「大丈夫です、オリエンテーリングで少し疲れてしまったのかもしれません」


「そう? 少し休んだ方がいいんじゃない? 何か顔色悪いよ」


「いえ、大丈夫です。ちゃんと肝試しには出ますから……」


 そういう綾崎さんの表情は、やはり暗いというか、何か怯えてるように思えた。


「じゃあ、肝試し前に山に関する怖い話してもいいー?」


 由美はこの手の怖い話大好きなんだろうな。嬉しそうに手を挙げ、そう提案してきた。

 

「えっとね、山で亡くなった人ってさ、まだその土地に縛られてるっていうのかな、地縛霊として残るらしいんだけど、登山にやってきた人間を知らないうちに迷わせて、自分の仲間にしたがるんだってさ」


「それってどういうこと?」


 俺が由美に尋ねる。

 

「神隠しに近いのかな? 他の人が近くに居るにも関わらず姿は見えなくなって、気付けば崖の上なんかに立たされてさ、知らないで進んだら崖に真っ逆さま。とか、そうやって他の人も道連れにするんだって。それでね──」


 迷惑な話だな、俺は興味半分で由美の話を聞いていた。


「あ、やっぱり私時間まで少し休んできますね。ごちそうさまでした!」


 綾崎さんは突然立ち上がると、スタスタとテントへ歩いて行った。まるで逃げるように。

 もしかして綾崎さん、怖い話とか苦手なんじゃ……


「もー、しおんちゃんにも聞いてもらいたかったのに……じゃあ祐二ゆうじだけでいいや、聞いて聞いて」


 そうして由美は怪談話を続けるのだった。



 肝試しのスタート地点は朝のオリエンテーリング同様、登山口スタート地点から始まる。

 各チームには懐中電灯が手渡され、それぞれくじで順番を決め、五分間隔でスタートしていくことになった。

 コースについては、途中までは朝にやったオリエンテーリングのコースを進むが、途中からハイキングコースと呼ばれる平坦でただ山道をぐるりと周回するコースを歩くことになる。

 先生の事前説明を受け、俺たち不思議部チームの順番が回ってきた。


「じゃあ次、不思議部チーム。行ってらっしゃい」


 先生の呼びかけに頷くと、俺たちはゆっくりと山道へ入っていった。


「朝も通った道なのに、夜は何だか違って見えるな」


 懐中電灯の明かりを頼りに進む俺たち。


「楽しいねー! 早く何か出ないかな!」


 由美はこの状況を凄く楽しんでいるのだろう、山道に入ってからずっとこんな調子だ。


「……」


 綾崎さんは相変わらず無言のままだ。やっぱり怖いのかな?

 どこからともなく、ガサガサという音が聞こえてきた。


「ヒッ……」


 小さな悲鳴をあげる綾崎さん。


「あれ、もしかしてしおんちゃん、怖いの苦手?」


「い、いえ、そんなことはないですよ?」


「ほんとー?」


 由美がニヤニヤしながら綾崎さんに絡んでいく。綾崎さんも強がってそれを認めないようだ。


「(怖いなら怖いって言ってくれればいいのに)」


 そう思いながらも、強がる綾崎さんのプライドを傷つけまいと俺は話題を切り替えようと口を開く。


「そういえば──」


 その時だった。


「あれ、何か前に居ない?」


 由美の声が先だった。


「え?」


 俺は聞き返しながら、由美の言う方向を見つめる。

 確かに何かの居る気配がする、気がした。


「なんだろう」


「き、きっと風で草木が揺れてるだけですよきっと!」


 綾崎さんは若干声が裏返りながらそう言うが、今、風なんて無いぞ。

 俺はその気配の近くまで歩いていく。その瞬間。

 ガサガサ……


「え」


 目の前には白装束に身を包んだ、顔全体が髪で隠れた女性が山道を横切っていった。


「うわっ!」


「きゃー! あははこわーい!」


 素直に驚く俺と、楽しそうな由美の声が響く。


「あ、あ、あ」


 綾崎さんが何か言おうとして──


「いやああああああああああああああああ!」


 そしてそれは叫びに変わり、とうとう走り出してしまった。


「あ、綾崎さんまって!」


「やっぱり怖いのダメなんじゃん、あははー」


「あちゃー、ちょっと脅かし過ぎちゃったかな」


 すると山道からさっき横切った白装束の女性がぬっと現れる。


「うわ!」


 いきなりの再登場にまた声をあげてしまう俺、それを見て目の前の女性が笑い出す。


「あはは、私よ私」


 そう言うと髪の毛を掻き上げる。


「あ、絵里」


「いやーあんだけ驚いてもらったら頑張った甲斐あるよ」


「絵里ちゃん迫力あるよー!」


「ありがと、由美」


 それにしても絵里のあの横切る動きといい、すごい迫力あったな。

 まだ少し心臓がドクドクと脈打ってる俺は、素直に絵里の演技力に関心していた。


「っと、それより綾崎さん、先行っちゃったけど、早く追わなくていいの?」


「「あ……」」


 俺と由美は同時に声を出す。


「そうだ、早く綾崎さんと合流しよう、行くぞ由美」


「うん!」


「ちゃんと合流するんだよー」


「絵里ちゃんまたねー!」


 絵里と別れた俺たちは、少し早足に綾崎さんを追うことにした。



 俺と由美は綾崎さんを追ってハイキングコースへと入ったが、中間地点を表すチェックポイントまできてもまだ綾崎さんと合流出来ずにいた。


「おかしいな、綾崎さん、どこまで走ってったんだ?」


「いないねー」


 当初の予想に反し、中々合流できないことに不安になってくる。


「もうちょっと進んでみようよ」


「そうだな……」


 由美の言う通り、立ち止まってても仕方ないのでこのまま進むことにした。

 そして俺たちはハイキングコースをぐるりと一週し、ついにはゴールであるキャンプ場まで辿り着いてしまう。


「あ、不思議部チームですけど、綾崎さん先に来てませんでした?」


 入り口に待機してる先生に声を掛けるが、先生は不思議そうに口を開く。


「いや? 綾崎は見てないが、君たち一緒じゃなかったのか?」


「え……」


「どういうこと……?」


 問題発生だ、もしかしたら綾崎さんはまだ山の中に──


「先生、実は──」


 俺は綾崎さんが先に走り出してしまいはぐれた事と、まだ合流出来ていないことを告げる。


「大変だ……君たちはここで待ってなさい、すぐ他の先生方と探しに行くから」


 慌てた様子で走って行く先生を見送る。


「綾崎さん、まだ戻ってきてないのか……」


「祐二、どうしよう……」


 湿っぽい風が吹いたかと思うと、突然ポツポツと雨が降り出してきた。

 先生方数名がこちらに走ってくる。

 俺たちのところで立ち止まるとこう告げた。


「長くは続かないが雷雨だそうだ、もう山へは入らないように! それと、はぐれたっていう綾崎だが、我々が探してくるので、君たちは施設に戻って待機するように!」


 雨は次第に強さを増しているようで、遠雷も聞こえてきた。


「(これって──)」


 俺は、あのとき見た夢を思い出していた。

 急に不安がこみ上げてくる。もしかしたらあれは──


「(まさか……!)」


「お、おい、英田! 待て!」


 俺は走り出していた。


「俺も探してきます!」


 そう言って先生の制止も聞かずに再び山道へと入っていった。



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 俺は山道を走っていた。


「どうして……」


 雨が降っていて視界は悪く、山道はぬかるんで気を抜くと足を滑らせてしまいそうだ。


「どうしてこうなった……」


 急な坂を下り、今度は平坦でなだらかな道が続く。


「なんで気がつかなかった……!」


 しばらく走ると目の前に前方と右の二股に分かれる道を見つけると、俺は迷わず右へと進んだ。

 俺は焦っていた。

 そのとき、同窓会で翔太しょうたが言っていた言葉を思い出す。


『じゃあ綾崎さんの事も……』


 俺の知らない学園時代の記憶。

 同窓会で会うことが無かった綾崎さん。

 翔太の言葉。

 そしてあの時見た夢。

 俺は最悪のケースを想像してしまう。


「ちがう!」


 誰にでもない、自分に言うように叫ぶ。それでも足は止めない。

 どこまで続くかも分からないその道を、ただ一人走り続ける。

 呼吸は荒くなり、心臓がバクバクと鼓動を早める。


「綾崎さん! どこだ!?」


 永遠にも思えたその行程も終わりを迎え、俺はその先に一本の橋を見つける。

 それはロープと木の板で作られた、なんとも頼りがたく、今にも崩れ落ちそうな程朽ちた綱橋だった。


「あの時と……同じ……」


 俺は足を止めると呼吸を整え、そしてゆっくりとその橋へ近づく。

 暗くてよく分からないが、橋の中央に人影が見えた。そこに誰か居るようだ。

 だが俺はそれが綾崎さんであると確信していた。


「綾崎さん!」


 すると奥の人影が動いた気がした。どうやらその影も俺に気付いたようで、何かを叫んでるようだった。


「……くん?」


 しかし、雨が強さを増し、肝心の言葉は水の音にかき消されてしまい、聞き取ることができない。

 だが、その声は確かに綾崎さんの声だった。

 突然の稲光、そしてついにその橋の影の正体が露わになる。

 その瞬間、今まで否定したかった事を現実だと受け入れざるをえなかった。


「(やっぱりそうなんだ……あれは夢じゃなくて俺の"記憶"!)」


 俺は必死に綾崎さんを呼ぶ。


「綾崎さん、そこは危ない! 早くこっちへ!」


「……くん! ……め! ……けない……!」


 綾崎さんも必死そうな顔で何かを訴えてくる。しかし全ては聞き取ることができない。


「(だめだ、このままじゃあ)」


 俺の脳裏にあの時見た光景がフラッシュバックする。


「(このままじゃあ、綾崎さんは……どうすればいい、どうすれば、ええい、くそ!)」


「うおおおおお!」


 俺は走り出す。

 風にあおられ揺れる橋にバランスを崩しそうになるも、必死に綾崎さんへ向けて走る。


「すぐ行くから!」


 徐々に綾崎さんの姿が鮮明に見えるようになってくる。

 すぐ側まで駆け寄ると俺は綾崎さんの手を掴んだ。


「戻ろう! このままじゃあこの橋は崩れる!」


「英田くん……だめ、足が震えて……立てないの……」


 そう言う綾崎さんの手は震えていた。


「立って、立つんだ、早く」


「だって……だって……っ!」


 なおも立ち上がろうとしない綾崎さん。このままじゃあ──

 俺は無意識に叫んだ。


「立て! "しおん"!!」


「っ!」


 綾崎さんは一瞬ビクっと身体を震わせ、そして立ち上がった。

 俺はすぐさま手を引き橋の入り口へと走り出した。

 俺たちが橋を出た次の瞬間、二度目の稲光が轟音と共に綱橋を直撃する。

 焼き千切れ、崩れていく橋。

 俺と綾崎さんはその光景を前にへたり込んでいた。


「は、はは、やった……間に合った……間に合ったあ!」


「……」


 雨に打たれながら、俺たちは暫くその場から動くことができなかった。


「……帰ろうか」


「……はい……」


 俺は綾崎さんに手を差し伸べる。


「あっ……」


「どうしたの?」


「あの……腰が抜けてしまったみたいで……立てなくて……」


「じゃあ、おぶってくよ、ほら、乗って」


「……すみません」


 綾崎さんが俺の肩を掴むと俺はそれを引き上げるように立ち、綾崎さんの太ももを両手で持ち上げるように背負う。

 そしてゆっくりと、来た道を辿っていった。


「重く……ないですか?」


 綾崎さんが申し訳なさそうに聞いてくる。

 やっぱり体重の事とか心配するのだろうか。

 

「いや、全然重くないよ」


 俺はそう言いながら、歩みは止めない。


「なら、よかったです」


 その後、しばらく無言が続いた綾崎さんに俺は尋ねることにした。


「綾崎さんって、怖い物苦手だったんだね」


「……はい」


「もしかして、高いところも苦手?」


「……そうです」


「そうか」


 橋で動けなくなってしまったのも、それが原因なんだろうと俺は考えていた。


「あの、英田くん、あの時私の名前──」


「ん? ああ」


 あの時の俺は焦っていたのもある、綾崎さんを失いたくないという気持ちでいっぱいで、気付けば名前を呼んでいたのだ。


「綾崎さん、ああでもしないと動かなそうだったし。突然名前呼んだりしてごめんね」


「いえ、あの、これからは下の名前で……しおんって呼んでくれませんか……?」


「え? いいの?」


 突然の提案に驚く俺。


「はい……」


 背中越しに伝わる綾崎さんの鼓動が早くなっていくのを感じた。

 心なしか、俺の肩につかまる手も震えているようだった。


「じゃあ、俺の事もこれからは祐二って呼んでよ」


「え?」


「交換条件、俺だけ呼ぶのは不公平でしょ」


 綾崎さんは暫く何かを考えていたのか、静かになったが、その後ゆっくりと口を開いた。


「ふふ、わかりました……あの、祐二さん」


「よろしい、よろしくね、しおん」


「はい……っ」


「ところで、しおんは何であんな場所に?」


 俺は、怖いのも高いところも苦手のしおんがなぜあんな場所に居たのかを聞いてみた。


「私もよく分からないんです。気付いたら橋の上に立ってて。よほどパニックになっていたとしか……ところで、祐二くんこそ何故ここが分かったんですか?」


 それを聞かれるのも当然か、俺はその質問に応えることにした。


「ん? そうだな、夢を見たんだ」


「夢……ですか? それはもしかして今朝言ってた夢のことですか?」


「うん、あの時はごまかしちゃったんだけどさ、夢で、確かにこの光景を見たんだ」


「……」


 黙り込むしおん。俺は話を続ける。


「きっと、それは夢じゃなくて、俺の記憶なんだと思う。過去に何があったかを見てしまったんだよ」


「その夢では……私はどうなったんですか?」


「……」


「そう、ですか……」


 言えなかった。が、それが逆に答えになってしまったのだろう、しおんも察したように言った。

 綾崎さんの手が、今度は確かに震えていた。俺は何も言えずに歩き続ける。


「なら、祐二くんは私の命の恩人、ですね」


 突然ぎゅっと抱きしめられ、更に密着してくるしおん。背中から伝わるその鼓動は更に早く、そして強く伝わってきた。


「もっと感謝してもいいんだよ?」


「感謝してもしきれないですよ……どうすればいいですか?」


「それは、しおんが考えてよ」


「意地悪……」


 いつの間にか雨は止み、雲の隙間から星が顔を覗かせていた。

 優しい月明かりに照らされながら、俺たちは皆の待つキャンプ場へと向かった。



 戻った俺たちを待ってたのは先生の叱責だった。


「まったく、勝手に行動して……英田まで遭難したらどうするつもりだったんだ!」


「あはは……あ、いや、すみません……ぷっ、ははは……」


「笑うな! 綾崎も、いくら怖いからって勝手にグループからはぐれちゃダメじゃないか!」


「ふふ……いえ、すみません……ぷふっ……ふふふ……」


「笑い事じゃない! 聞いてるのか? おい!」


「あはは──」


「ふふふ──」


 無事を再認識した俺たちはそれがなんだか嬉しくて、ついには二人で笑い出してしまった。

 

「あー……まあいい、だが変だな、あの道は誰かが通るように監視していたはずなんだが」


「え?」


 突然空気が変わった気がした。

 それもそうだ、初日に絵里から聞いた通り間違ったルートに行かないよう先生方が待機しているという話を思い出していた。

 俺がしおんを探しに走った時もそれらしい人は見なかった気がする。


「それがな、その場所に待機していた先生によると、綾崎はおろか英田が通ったっていうのを誰も見てないんだ」


「それって──」


 しおんが恐る恐る口に出そうとする。


「お前達、どこから入っていったんだ?」


「どこって山道からですけ……ど……」


「祐二くん……これって……」


 俺としおんは、肝試し前に由美から聞いた話を思い出していた。


『山で亡くなった人ってさ、まだその土地に縛られてるっていうのかな、地縛霊として残るらしいんだけど、登山にやってきた人間を知らないうちに迷わせて、自分の仲間にしたがるんだってさ』


『神隠しに近いのかな? 他の人が近くに居るにも関わらず姿は見えなくなって、気付けば崖の上なんかに立たされてさ、知らないで進んだら崖に真っ逆さま。とか、そうやって他の人も道連れにするんだって』


 俺たちは声にならない悲鳴をあげた。



-----------------------------------



 合宿の最後を飾るのはキャンプファイヤーである。

 事前に用意していたのであろう、木組みの台に点火すると、勢いよく火柱が立った。

 そして、同時に社交ダンスの音楽が流れはじめる。

 ダンス部による踊りの披露が行われると、その後は先生方の煽りもあり、皆思い思いにペアを組んで踊り出していた。


「祐二くん」


 キャンプファイヤーを眺めていると、しおんが俺の側までやってきた。


「どうしたの?」


「あの、さっきのお礼、という訳ではないんですけど……」


 少しもじもじしながら俺に言ってくる。


「私と、踊ってもらえませんか?」


「あ、こう言うのは男から言うもんだから訂正させて!」


「え?」


「しおん」


「は、はい」


「俺と踊ってもらえませんか?」


「……っ! はい……っ!」


 そうして俺はしおんの手を取り、二人でキャンプファイアーの近くまで行って踊り出す。


「っとと……ごめんね、俺ダンスとか全然知らなくて」


「ふふ、私がリードしますから大丈夫ですよ」


「しおん、もしかしてダンス経験あるの?」


「実は昔、ダンス教室に通ってた事があったんですよ」


「なるほど、どうりで上手いわけだ」


「ふふ」


「お手柔らかに頼むよ」


「任せてください」


 キャンプファイヤーの熱に当てられたのか、頬を染めるしおんと見つめ合いながら、ゆっくりとステップを踏む。

 俺は、この時間がもう暫く続けばいいのにと、そう思っていた。

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