26
40分くらい経っただろうか……
1人きりの静かな部屋の外で、がやがやと人の話し声がし勢いよくドアが開いた。
トントンと襖がノックされる。
「桃弥君、もう出てきんさい。これはおにぎりじゃ。白米じゃないけど食べんさい」
時正の呼びかけに俺は押入れの襖を開ける。3人の男子が押し入れを覗き込むように、目の前に座っていた。
「ほんまにおったんじゃ。真面目な時正が規則違反起こしてまで人をかくまうとは驚きじゃな」
坊主頭の男子が、細い目を見開き俺をまじまじと見つめる。
「しかし長い髪しちょるのう。どこの学生じゃ?ここら辺じゃ見かけん顔じゃのう。あんた非国民か?」
「桃弥君は非国民じゃない。ただ……理由があって家に帰れんだけじゃ」
「じゃけぇなんで帰れんのんじゃ?赤紙が来たんか?それで逃げ出したんか」
攻撃的な口調、威圧的な眼差しで俺を睨み付ける。俺が未来から来たなんて、正直に話しても誰も信じてくれないよ。
「和男、まあ落ち着け。桃弥君はわしらと同い年じゃ。赤紙はきとらん。それより、まずは自己紹介じゃ」
紘一がその場を収めてくれ、騒ぎはおさまる。
「わしは山口出身じゃ。この部屋におるみんなは時正と同じ16歳じゃ」
「わしは
「わしは
「俺は峰岸桃弥です。2016年から来ました」
真実を語る俺に、時正はバタバタと両手を振り慌てている。
「桃弥君、まだ早いっちゃ……」
時正の言葉を遮るように、軍士と和男が話に割り込んだ。
「2016年!?こいつ頭がいかれちょるんか?今は1945年、昭和20年じゃ。寝言は寝て言え」
ほら、誰も信じないよ。
でも、俺達には時間がないんだ。ゆっくり説明している暇はない。
「桃弥君早急過ぎる。みんなを混乱させるだけじゃ」
「時正、あと4日しかないんだ。みんなで世間話している暇はないんだ。俺が時正を信じたように、みんなが俺の話を信じるかどうか……、信じてくれなければ俺は今すぐここを出る。路上で通行人に話すだけだ」
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