第三章 卒業証書授与01
『榎本 正成』
<工藤>
「それが、本来呼ばれるはずの無かった者の名前だ。言うまでもない事とは思うが、その者はすでに当校の生徒ではない」
<秋人>
「すでに、ってことは……」
<工藤>
「お察しの通り。今から一年程前、『榎本正成』は大きな問題を起こし、それが原因で退学処分を受けている」
<秋人>
「退学ね」
(んま、よくある話しっちゃ話しだが)
<優希>
「榎本の退学騒ぎなら、立場上、私もそれなりに聞き及んでいるぞ。なんでも、そうとう景気良くブチかましたらしいな」
<聖司>
「そんな感じでしたね。しばらくは学校中の噂になってましたよ」
<双葉>
「一年前の噂っていうと……」
「ひょっとして、先生を殴った先輩がいたとかいう騒動のことですか?」
<優希>
「その通りだ。やはり、学年が違っても聞き覚えはあるか」
<双葉>
「そりゃあまあ、結構話題になってましたし。でも……」
「名前とかは知らなかったかも。あ、いえ聞いたことあったかもしれないけど、うん。忘れてただけかな」
「ふーん、そっか。じゃあ、あの時呼ばれたのが、その人だったんだ」
<工藤>
「うむ。すでに退学になっている生徒の名前。それが卒業証書授与の最中に、卒業生の一員として読み上げれらてしまった」
「式で起きた一件を簡潔にまとめるならば、つまりはそういう事になる」
<全員>
「…………」
<工藤>
「水城が言っていたように、トラブルというには些細な出来事だったのかもしれん。実際問題として、それで何かしらの実害が出たわけでもないからな」
「気に留めさえしなければ、一年前の退学騒ぎに思うところのある何者かが仕組んだ、下らない悪戯だった、と」
「そう捨て置くこともできない話ではないだろう。しかしだ」
<秋人>
(ん? 紙筒を広げた?)
<工藤>
「色々と状況が分かるにつれ、ただの悪戯にしては随分と手が込んでいるように思えてきてな」
<秋人>
(ああ、なるほど。わざわざ持参してきたってことは、つまり……)
<双葉>
「あ、卒業証書だ。それって、あの時に工藤先生が受け取った奴ですか?」
<工藤>
「そうだ。在るはずのない『榎本正成』の名前が入れられた卒業証書。この一枚は、あの時舞台上で私自身が校長の手から受け取ったものだ」
<聖司>
「ほんとうだ。榎本君の名前、しっかり書いてありますね。うん、ちゃんと毛筆で書かれているみたいだし中々に達筆だ」
<工藤>
「ちなみにだが。校長の話によると、この一枚は証書の山から『裏返った状態』で出てきたという事だった」
<聖司>
「裏返しということは、表裏が逆さまに? それはまた、奇妙な話ですね」
<優希>
「ふむ」
「演台の上に置かれたいた卒業生全員分の証書の山。壇上に立つ校長が一枚ずつ順に手渡していくと、突然束の上に裏返しの証書が現れ……」
「めくってみたところ、その一枚はすでに退学処分を受けて学校を去ったはずの者の証書であった、と」
「つまりはあの時、舞台の上ではそういうことが起きていたわけか」
<工藤>
「その認識で間違いは無い」
<優希>
「先生、一応お聞きしておきたいのですが」
<工藤>
「何かね?」
<優希>
「束の中に、その一枚以外にも裏向きになっていた証書はなかったのですか?」
<工藤>
「この一枚だけだ。他のものは全て、正しい状態で重ねられていたと校長より聞いている」
<優希>
「ありがとうございます。なるほど、しかし……」
「こうして改めて知ると、明らかに何かしらの意思を感じざるを得ませんね」
<双葉>
「退学した人の証書が裏返しとか、何だか“いかにも”って感じですよね」
<聖司>
「先生の言われたように、変なところで妙に手が込んでいると言えなくもないですか」
<双葉>
「だとすると、誰が何のために──っていうのが、やっぱり問題になってくる感じですよね?」
<秋人>
(……誰が……何のために)
<工藤>
「問題か。確かに『誰が』『何のために』という事柄も、おざなりに出来ないのは事実だ。しかし……」
「私の感じている問題は、もっと根本的な物なのでね」
<優希>
「根本的と言われますと?」
<工藤>
「つまりだ。そもそもが、不可能なはずなのだよ」
<秋人>
(あ……。何か嫌な予感が)
<優希>
「不可能?」
<工藤>
「そうだ」
「卒業証書が順に授与されていく中で、あの時、あの『順番』で榎本正成の名前を読み上げさせ」
「その上で。読み上げと同じ『タイミング』でもって、『榎本正成』と名入れされた証書自体をも、校長の立つ演台の上に出現させる」
「そんな悪戯を仕込めるような『手段』などあるのだろうか? 大よそ私には、それが誰の手にも不可能な事のように思えて仕方がないのだ」
<秋人>
(不可能……ああ、やっぱその手の話になりますか)
<双葉>
「不可能ですか?」
<工藤>
「おかしいかね?」
<双葉>
「え、だって……」
<工藤>
「ふむ。言いたい事があるなら、はっきり言いなさい。いつもそう教えているだろう?」
<双葉>
「ぶおお……」
((うああしまった! これクドケンモードだ!))
<秋人>
(クドケン……何やら聞き覚えが……)
<双葉>
((参ったなぁ。余計なところで、余計なものを召喚しちゃったじゃない……))
<秋人>
(クドクドインケンでクドケンだったか? 何か、そんなあだ名で呼ばれてたっけか)
<双葉>
((あーもう、一度こうなると面倒なのにぃ))
<工藤>
「何をブツブツ言っている? もしや、特に主張も無いのに反対意見だけは一丁前に口にしてみたというわけではなかろうね?」
<双葉>
((ええい、ちーくしょー!))
<秋人>
(お、目の色を変えた? 何か、腹をくくった感じだが、どっちにしても心の声がだだ漏れですよ、双葉さん)
<双葉>
「えっと、じゃあ言いますけど! いくらなんでも『不可能』って言い切っちゃうのは! やっぱりちょっとどうかなって思います! はいっ!」
<工藤>
「いいだろう、言い分を聞こうか?」
<双葉>
「だ、だだだって、そうじゃないですか!」
<秋人>
(おお、頑張っとる頑張っとる、ブルブルしながら頑張っとる)
<双葉>
「言っちゃえばですけど。卒業証書の授与が3年D組まできたら、榎本さんって人の名前を呼び上げさせて」
「後は、同じタイミングでその証書が出てくるようにすればいいんですよね?」
「それくらいだったら──」
<工藤>
「容易く出来ると思うかね?」
<双葉>
「た、容易く? 容易く。えっと……多分、ねえ?」
<秋人>
(こっちを見るな!)
<聖司>
「あの、横から失礼しますけど、自分も牧さんの意見に賛成させていただきます」
<工藤>
「ほう、霧島もか?」
<秋人>
(おやおや)
<聖司>
「卒業式の最中に例の『状況』を発生させる。そのために必要な一連の行動。考えられるとすれば、こんな感じでしょうか?」
「まず、D組のところで名前を読み上げさせるため、アナウンス役の先生が使う名簿に『榎本正成』という名前を一つ、書き加えなければならない」
「次に、読み上げと同じタイミングで証書を登場させるわけですから……」
「それなら。その榎本君の一枚を、証書の山の中に予め仕込んでおく必要がある」
「確かにこう考えると、全てが簡単に……とは言えないでしょうが、それでも決して『不可能』と言えるほどのものでもないのでは?」
<工藤>
「ふむ、悪くない答えではある」
「では霧島。仮に君がそれらの手はずを整える立場だったとしてだ。一連の行動を遂行するにあたり、どのような問題点が想定される?」
<秋人>
(うっわ、面倒くさっ)
<聖司>
「問題点ですか? そうですね、例えばですけど」
<秋人>
(おお、流石は卒業生。小娘とは落ち着き方からして違うか)
<聖司>
「まず最初に思いつくのは……うん、そうですね。名簿に名前を書き加えるにしても、偽造した証書を混ぜるにしても、やはりどちらも人目につかないように行う必要がありそう……ですかね?」
<秋人>
(ですかね? って、お前まで俺を見てどーする!?)
<工藤>
「無論そうだろう。では、人目を避けること自体は可能かね? それとも不可能かね?」
<秋人>
(いや、こっちもこっちで中々に酷い。これがクドケンか、恐ろしや)
<双葉>
((霧島先輩ファイ!))
<秋人>
(お前って奴は……)
<聖司>
「え? ええと……」
「なにぶん、人の多い学内のことですから容易く……とまで言いませんが、それでも不可能ではないと考えます」
<工藤>
「いいだろう、もっともな意見だ。では他に問題点は?」
<聖司>
「ほ、ほか!?」
<秋人>
(お、狼狽えたぞ?)
<工藤>
「そうだ。もう他に問題点は考えられないかね?」
<秋人>
(これは軽く酷いを通り越したな。もはや新手のイジメにしか見えん)
<双葉>
((霧島GO! 霧島ファイ!))
<秋人>
(……鬼か)
<聖司>
「うああ、いえ、ああと、それ以外となると、あとは……」
「しいて言うなら……ですけど」
<工藤>
「構わない、続けなさい」
<秋人>
(構うから、そろそろ止めてあげてください)
<聖司>
「その、本当に、しいて上げるならですけど。榎本君の名前を書き込むための証書を、どうやって手に入れるのか? って所は問題と言えば問題のような気も……」
<工藤>
「証書台紙の入手についてか。ではそれは可能なことだと思うかね?」
<秋人>
(イジメ。かっこわるい)
<聖司>
「ええ、はい。やっぱり……不可能だとは思えません。偽の証書を用意するとなれば、記名前の証書台紙を手に入れる必要があるわけですが……」
「それだって、その気になればどこからでも手に入れられるのでは?」
<工藤>
「そう考える理由は?」
<聖司>
「理由もなにも、卒業証書なんて、どこのも似たり寄ったりですし。極端な話、大きな文房具店とかをハシゴしたりすれば一枚くらいはどうとでも──ねえ?」
<優希>
「私に同意を求めるな。問われているのは貴様だろう」
<聖司>
「あうう」
<双葉>
((きりしまーーー!?))
<秋人>
(むごい)
<工藤>
「一枚くらいは、か。霧島、もう忘れたのか?」
<聖司>
「?」
<工藤>
「君も卒業生として、証書を一枚受け取っているのだろう?」
<聖司>
「ええ、まあ」
<工藤>
「では。当校が卒業生に配る卒業証書。その辺の店で買えるような代物だと思うかね?」
<聖司>
「と言われますと…………あ…………あっ!?」
<優希>
「なるほど、校歌か」
<聖司>
「工藤先生、ちょっとその証書、失礼します!」
<秋人>
(???)
<聖司>
「ああ、やっぱり!」
<秋人>
(おわっ何だ? 証書の裏面に、何か色々と書いてある)
<優希>
「どうやらこれは、間違いなく当校の卒業証書のようだな」
<聖司>
「ですね。しまったなぁ、裏面に校歌の歌詞がデカデカと書かれてるの忘れてた」
<双葉>
「あー、でもあれってどうなんでしょうね? 裏面にびっしり校歌の歌詞とか……凄い自己顕示よ──あ、いえ何でもありません、はいスイマセン」
<工藤>
「まあいいだろう。何にしてもだ。裏面を見れば、この一枚が紛れも無く当校の用意していたものだという事は判断できる」
<聖司>
「とすればやはり。先生が不可能だって仰られてる問題は、偽造された一枚の出所が不明だから……という事でいいんですか?」
<工藤>
「ふう。参ったな。中々に伝わらないものだ」
<聖司>
「ええと、先生?」
<秋人>
(え? あれ? 何でこっち見てるの、クドケンさん?)
<工藤>
「ちなみに、あなたはどう思われますかな?」
<秋人>
(流れ弾!?)
「お、おおお、お宅の学校は、何でもかんでも俺に振れっていう校則でもあるんですかい?」
<工藤>
「これは手厳しい。教師としてあるまじき態度でしたかな? 申し訳ない、では牧双葉。変わりに答えなさい」
<双葉>
「は、はひぃ!?」
<工藤>
「霧島の見立てた通り、偽造されたこの証書の出所は、まったくもって不明かね?」
<双葉>
「え……え……えええ……?」
<秋人>
(あ、泣きそう)
<双葉>
「あうあうあうあうあう……」
<秋人>
(凄まじい面でこっちを見ていやがるです)
(別に『牧双葉ファイ』と言ってやるのも、やぶさかではないが)
<双葉>
「あうあうあうあうあう……」
<秋人>
(泣きそうな顔のまま、ゆっくりと小首をかしげつつ凝視されるのは、なんか精神に悪いな)
(しゃーない)
<工藤>
「どうかね、牧? 問いに対する返答は?」
<双葉>
「うえっと……」
<秋人>
「別に、そこなメガネ君の意見が丸っきり見当ハズレだとも、俺は思わねーっすけどね」
<工藤>
「そう……ですかな?」
<秋人>
「まあ、そうっすね。もっとも、お宅の学校が半端ないドケチだっていう条件に当てはまっていた場合に限るんでしょうがね」
<優希>
「ドケチ? どういう意味合いの発言だ? 文脈が読めんが」
<秋人>
「ああ要するにだ」
「今聞かれてんのは、この証書が偽造だったとして、んじゃこれを作った奴は、どこから自己主張激しい証書の紙を手に入れたのか──ってなことだろ?」
<工藤>
「その通り」
<秋人>
「だったら考えられる事は、一つしかない」
「普通、卒業証書つったらあれだ。基本の印刷は業者に頼んで、名前とあと場合によってはクラス名とかだけを、筆か何かで手書きする。まあ大体そんな感じだろう」
「少なくとも、俺がもらってきた証書関連なんてな、全部そうだったと思うが?」
<聖司>
「だとしたら何なのでしょうか?」
<秋人>
「いやお前さ、だって手書きって怖いだろ? 名前とかは筆と墨っぽいので書くもんだし、ちょっとでも手がブルっちまったら……どうすんの? 足りなくなっちまうよ?」
<双葉>
「足りなく……あ」
<聖司>
「……そうか! 予備があるのか!」
<秋人>
「普通はそうだろ。業者に発注する枚数が、使用枚数ピッタリってんならいざ知らず。手書きで何百人とか書く状況で予備無しとか、正気の沙汰じゃねーよ」
<優希>
「予備か。偽証書の出所としては、十分に在りえる話だ」
「基本印刷だけされた、大量の卒業証書の台紙。全員分を一人で書き上げるとも思えん以上、何人かで手分けして書ききるのが道理。ならば……」
<双葉>
「あー、そゆこと」
<聖司>
「確かにそれなら、どこかから一枚くらい流れ出しても、おかしくないですね」
<工藤>
「おかしくない事もないが、在り得ない話でもない。そもそも、当校とて証書自体の管理にそこまで気を使っていたわけではないからな」
「本年における卒業生の総数は、全5クラス、延べ203名。そして、業者へ発注枚数は250枚。少し頼みすぎに思えるかもしれないが、発注数単位の関係で仕方がないのでね」
「それに、多すぎて困るものでもないからな。もっとも、今回のような一件が起きなければ……の話ではあったが」
<優希>
「しかしです」
「証書の偽造は可能。人目に付かず一連の細工を施すことも不可能ではない、と」
「こうなってくると、工藤先生が『不可能』とまで言われた状況というのが、いよいよ理解できかねますが?」
<工藤>
「水城、君もかね?」
<優希>
「ええ、私もです」
<秋人>
(こいつは物怖じしねーやっちゃな)
<双葉>
((ねえねえ))
<秋人>
((ん?))
<双葉>
((んでさ結局、何が不可能なの?))
<秋人>
((いい加減にしろ。俺は便利なご意見番じゃねーぞ?))
<双葉>
((えー、だってさ。どうせあんたの事だから……))
<秋人>
(((どうせとか言うな。ああもう、うっとおしい! 多分あれだろ、何か順番とかタイミングとか最初のほうで言ってたから、その辺の話だろ!)))
<聖司>
「順番とかタイミング……そういえば言ってたような」
<秋人>
(おっとしまった、声が大きすぎたか)
<優希>
「工藤先生。そうなのですか?」
<工藤>
「……まったく、よく当てるものだ。見ていて飽きないな」
<秋人>
(こいつら……)
<工藤>
「今しがたの指摘は正しい。私が不可能だと言ったのは、なにも『名前を呼ばせる』ことや『証書を偽造する』こと、ましてや『人目に付かない』ことに関してではない」
「不可能だとしか思えない状況。それはただ一点に置いてのみ。実に卒業証書203枚が重なっていた束。そのような大束の──
『大束の中の決められた場所に、偽造した証書を忍び込ませる方法』
という部分に対しての見解だ」
<全員>
「…………」
<秋人>
(むう……)
<優希>
「束の中の決められた場所……ですか。確か、榎本の名前が読み上げられたのはD組の先頭でしたな」
<工藤>
「そうだ。現に、D組の担任が式で使った名簿を直接確認したが、榎本の名前は、確かにその名簿の一番上に書き加えられていた」
「もっとも。加えられたと言っても、手書きではなく印字による追加だった事を考えれば、本来の名簿に『付け足した』というよりも──」
「名簿その物を別で作成しておき、本来の名簿と丸ごと『すり替えた』と見るべきだろうがな」
<優希>
「『付け足し』でなく『すり替え』か。果たしてその行為自体は、可能なのですか?」
<工藤>
「可能だったと考える。いやむしろ、細工としては容易い部類とも言えるな」
「クラス担任が読み上げに使う名簿は、式用にあつらえたバインダーに挟み込まれているだけだからな。すり替えるだけであれば、その気になればどうとでもなっただろう」
<双葉>
「で、名簿が『すり替え』られたんだとして。じゃあ証書の方はどうしたんですかね?」
「名前が呼ばれたタイミングで証書も出てくるようにしなきゃダメってことは、つまり──」
<優希>
「203名分の証書束の中で、D組一番にあたる場所に、何らかの手段を用いて仕込んでおく他ないだろうな」
<双葉>
「ですよね」
<工藤>
「それが妥当な考えだろう」
「式が始まった時点では、203名分の証書は一つの大束にまとめられた状態で、舞台端の置き台の上に用意されていた」
「授与の段取りとなって初めて、証書の束は置き台から舞台中央の演台へと移され。そして、A組一番の者から名前を呼ばれた順に、束の上から一枚ずつ手渡されていく」
「ならば。『名簿に書き加える位置』と『証書を紛れ込ませる位置』は、必ず一致するように細工を施さなければならない」
「でなければ、名前が呼ばれたタイミングで証書も出てくるなどという事は、起こりえないからな」
「そしてまさに」
「『証書を紛れ込ませる位置』にズレが許されなかったという状況こそが“問題”であり、結論的に『不可能』と言わざるを得ない要因になっているのだ」
<全員>
「…………」
<工藤>
「偽造された卒業証書は、『いつ』『どこで』、203枚もの束の中の『D組先頭』という決められた場所に仕込まれたのか?」
「一見すれば、どうとでも出来そうなこの問題が中々どうして曲者でな」
<優希>
「と仰いますと?」
<工藤>
「簡単に言ってしまうなら、とてもその様な好機など、あるようには思えないという事だ」
<優希>
「何を根拠にされた判断なので?」
<工藤>
「ふむ。それを説明する前に、203枚の証書にまつわる状況を、もう少し詳しく話しておいたほうが良いかもしれないな」
<秋人>
(…………)
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