第十九話 二人のお姫様

「おぉー!!」


目の前に並べられた豪華な食事を見て、マコトは目をキラキラさせながらよだれを垂らしている。

辺りはもう暗くなっており、村を救った英雄に感謝の意を込めた宴が始まっていた。

宴は村の真ん中にある大広間で行われており、会場の真ん中にはキャンプファイヤーのようなものがあった。

踊り子的な人たちもおり、実にいい感じの雰囲気だ。


「これ全部食べていいのか!?」


あまりの興奮で、マコトは敬語をつかうのも忘れてしまっていた。


「もちろんだとも、この村とシエラ様を救ってくれたお礼じゃからのぉ」


「マジで!? じゃあ早速……いただきまーす!!」


例の黒い悪魔から全力で走って逃げたおかげで、マコトのお腹はペコペコだった。

そのおかげで、目の前にあった魚やら肉やらはあっという間になくなってしまった。


「お姉さん! おかわり!」


マコトは近くにいた魔族のお姉さんに肉のおかわりを頼んだ。


「こら! ちゃんと野菜も食べなきゃダメじゃない!」


そういってクロエはマコトの目の前に大盛りのサラダをドンッと置いた。

ここまでくると、まるで母親が息子を叱っているようだ。


「……へぇーい」


マコトは不満そうな顔をしながらも野菜を食べ始めた。

その様子を少し離れたところから見ていたシエラは、なんだか羨ましそうな表情を浮かべていた。


「どうしたのシエラ?」


それに気づいたクロエは、シエラの傍により話しかけた。


「いえ……ただ、お二人は仲がいいんだなぁと思いまして」


「まぁ、何日も一緒に行動してたからね、最近では同じ部屋で寝ちゃっても平気なくらいにはなってきたかな」


とはいっても、同じ部屋で寝てしまうのは全能の加護の力を使ったマコトを心配しているときだけだ。


「なっ、もうそんなところまで……」


シエラは悔しそうな表情を浮かべている。

マコトだけではなく、クロエも、シエラがマコトに対して好意を抱いていることを知らない。


「私も、もっと頑張らなきゃ!」


シエラは瞳に闘志を宿らせて、メラメラと燃えている。


「?」


クロエは何の事だかさっぱりわからないという表情だ。

そんなクロエに、突然シエラが質問を投げかけた。


「……そういえばクロエさんは、マコトさんとどうやって出会ったんですか?」


「え? あぁ、マコトと出会ったときの話が聞きたいの?」


「はい、マコトさんが眠っているときに聞いた話では、マコトさんはこの世界の人じゃなくて、ずっと遠い、別の世界から来た人だって言ってましたけど……」


シエラは、この世界が今どうなっているとか、冒険の目的とか、マコトの不思議な力とかについては聞いているが、クロエとマコトがどうやって出会ったのかまでは知らない。


「……マコトと出会ったのは薄暗い森の中だったの、でも、そんなにいい出会い方ではなかったけどね」


「いい出会い方じゃなかった?」


「えぇ、マコトに出会った時、マコトは既に瀕死の状態だったの」


「っ……」


シエラは、驚きながらもクロエの話を静かに聞いている。


「あの時、マコトはAランクの魔獣に襲われてて、全身すり傷だらけなうえに、左腕を食べられちゃってたの」


「左腕を!? ……でも今は、普通に動かせているようですけど……」


シエラはチラッとマコトの方を見た。

マコトは野菜もきれいに完食し、村の青年たちに誘われてお酒をガブガブ飲んでいた。

この世界では十六歳から大人なので、マコトがお酒を飲んでもなんら問題はない。


「今はね、でも、あの力を授かるまでは腕が一本無い状態でずっと生活してたのよ」


「……ということは、あの腕も、例の不思議な力で治したんですか?」


「たぶんね、私もびっくりしたわよ、突然姿は変わるし、雰囲気も何か別の人と入れ替わったみたいで」


クロエもあの時混乱していて、あまり詳しくは覚えていないが、きっとそうなのだろうとは思っていた。


「その別の人っていうのが、ユピテルっていう神様なんですよね?」


マコトが初めて力を使ったとき、あの時だけは、ユピテルがサービスで代わりに戦っていたのだ。


「ええ、全能の神ユピテル……ずっと昔に書かれた本を読んだときに出てきたけど、まさか本当に要るとはね」


王城にはかなり昔の本から最新の本まで、数々の本が置かれていた、鍛錬とともに勉強の為に本を読み漁っていたクロエは、神話に関する本もいくつか読んでいた。


「その神様達の内の一柱が、今私の体の中にいるんですね……」


春の女神プロセルピナ、精霊に愛され、精霊を操る力を持っている。


「ねぇシエラ、本当に私たちについてくるの? きっとすごーく長い旅になると思うよ? 別についてこなくても、神様が全員見つかるまでこの村で暮らしてくれれば、それだけでいいのよ?」


ユピテルの予想では、小さな村一つ一つまで探さなければ見つからないほど、封印されている者にはばらつきがある。

何十年かかっても全員が見つかるかはわからない。

その間に、ケイオスの気が変わって急に世界を壊し始めるかもしれない。

それでも、シエラは冒険に一緒に連れて行ってほしいという。


「はい、もう一つの場所に縛り付けられるのは嫌なんです、私は病気と火傷のせいで、ずっとここにこもっていました、私は死ぬまでずっとここにい続けるんだって、でも、マコトさんはそんな私を救ってくれました、誰もいない真っ暗な部屋から引っ張り出してくれました……短い時間でしたけど、一緒に笑ったり、一緒に綺麗なものを見たりしました……それで思ったんです、私も、この人と一緒に世界を回りたいって、もっと一緒に沢山笑いたいって……だから、私も一緒についていきます、一緒に、困っている人たちを救ってあげたいんです……だから……」


シエラはクロエの方に向き直り、ペコリと頭を下げた。


「お願いします! 私も一緒に連れて行ってください!」


シエラが突然大声を出したので、周りにいた村の人たちが一斉に二人の方を振り向いた。

急に大勢の人の視線を浴びたクロエは慌てて言った。


「い、いやいや! そんな畏まってお願いしなくてもいいわよ! むしろ女の子が増えて嬉しいよ」


「ほ、ほんとですか?」


シエラは頭を上げてクロエを見つめている。


「もちろん、仲間に女の子がいれば、マコトとは出来ないような話もできるしね」


それを聞いた瞬間、シエラの顔がパァーっと明るくなった。


「ありがとうございます!! これからもよろしくお願いします!!」


シエラはまたペコリと頭を下げた。


「いやだから、そんな風に畏まらなくてもいいわよ、私達はもう仲間でしょ? もっと軽い感じでいいってば」


クロエの口から仲間という言葉を聞いたシエラは、よっぽどうれしかったのか、まるで呪文のように「仲間」と唱え続けている。


「仲間……仲間……仲間……」


「シ、シエラ? おーい?」


「はっ! ……すいません」


シエラはまたまたペコリと頭を下げた。


(この癖はどうにかして直さないと……)


すると、シエラは頭を上げて、村の青年と肩を組んでわちゃわちゃしているマコトを見た後に、クロエにこんな質問をした。


「そういえばクロエさんって、マコトさんのことが好きなんですよね?」


「にゃっ!? にゃにを言ってりゅのよ!? そんにゃ訳にゃいじゃにゃい!!」


「クロエさん、顔真っ赤ですし口調が猫みたいになってますよ」


「はっ! ち、ちがうのよ! これはその……そう! お酒がちょっと回ってきちゃって……あれ、なんだか頭が……」


「クロエさん、まだ一滴もお酒飲んでないじゃないですか」


「ギクゥ!!」


まるで日本の昭和のリアクションだ。


「え、えっと……」


そんなクロエを見て、シエラはふふっと笑った。


「ど、どうしたのよ」


「いえ、そうやってあたふたしているクロエさんが、なんだか可愛くって」


「か、かわいい?」


「……あっ、すいません、可愛いだなんて上から目線なこと……」


「いや、いいのよ、シエラにそう言ってもらえてうれしい……そういうシエラだって、私なんかよりずっと可愛いよ」


クロエに可愛いといわれた瞬間、シエラは目を見開いて驚いた。


「そんな言葉、今まで言われたことがありませんでした……」


「あっ……」


シエラは今まで、化け物だのお化けだのと言われて生きてきた、気を遣って可愛いと言ってくれる人はいたが、本気で心の底から可愛いと言ってくれるような人はいなかった、だからこそ、可愛いという言葉に、目から涙がこぼれ落ちるほどに喜びを感じた。


「……マコトさんに出会ってからまだ数日なのに……こんなにうれし泣きするとは思いませんでした……」


泣きじゃくるシエラを見て、クロエはそっとシエラは抱きしめた。


「もう、何も抱え込まなくていいのよ……何かつらいことがあったら、すぐに私たちに言ってね、何でも相談にのるから、ね?」


「うぅぅ……はい……」


それからしばらくの間、クロエの腕の中で、シエラは泣き続けた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



踊り子たちの演舞が終わり、宴は終了に近づいていた。


「最後はシエラが楽器を演奏してくれるんですって……マコト? 大丈夫?」


「お、おう……だいじょ、おぇぇ……大丈夫だ……多分」


「全く……調子に乗って飲みすぎるからよ、初めてなんだからもっと慎重に飲みなさいよ」


マコトは村の青年たちと一緒に酒を飲みまくり、つい先ほど胃の中のものを盛大にぶちまけたのだ。

どうやらマコトはあまり酒に強いほうではないようだ、これでも一応村の白魔導士に回復してもらい、大分よくなっている方だ。


「ほら、しっかりして、せっかくの演奏なんだから聞かないと」


「うっぷ……わかってるって……おぇ」


マコトは吐きすぎたせいか、だいぶゲッソリしている。


「はぁー……あ、始まるみたいよ?」


舞台は、主役の顔がよく見えるようキャンプファイヤー的なものとは逆の方向に設置されており、そこにシエラが一人で立っていた。

手には何やらオカリナの様なものを持っている。


「……大勢の前で演奏するのは大分久しぶりなので、うまくやれるかどうかは分かりませんが、この日の為にいっぱい練習しました……それでは、聞いてください……」


シエラは、吹き口にそっと唇をつけ、演奏を始めた。


「……おぉー」


吐きすぎでゲッソリしていたマコトが思わず声を漏らしてしまうほど、その音色は美しかった。

とても、久しぶりに演奏したとは思えないほどの音色だ。

辺りはシーンと静まり返り、シエラの吹くオカリナの音だけが響き渡った。

時々ふく風の音が、シエラの演奏をより一層美しいものへと昇華させている。

マコト達や村の人達だけでなく、あたりの木々や動物までもが、この演奏に耳を傾けているように感じた。

シエラがオカリナを吹き続けている間は、まるで時が早く流れているようだった。

すると、シエラの周りの空間が、キラキラと輝き始めた。

そして……


「きれい……」


そこには、青色や黄色、緑色などの様々な色をした光の球体が浮かび上がっていた。


「なんだあれは……」


『どうやら、美しい音色に誘われて、微精霊たちが集まってきたんだろうね』


「微精霊が……」


シエラは精霊に愛される加護を持っている、だがそれ以上に、シエラの演奏の美しさに誘われてやってきた者がほとんどだった。

それほどまでに、シエラの演奏は素晴らしいものだった。

そのまま時が流れ、シエラの演奏が終わるころには、辺りの者達は皆拍手するのも忘れてしまうほどに、演奏に聞き入ってしまっていた。

それどころか、涙を流しているものさえいる。

そしてシエラが舞台の上で一礼すると、皆我が返ったように、一斉に拍手をし始めた。

そのまま舞台から降りたシエラは、まっさきにマコトの傍に駆け寄ってきた。


「どうでしたか? 上手く演奏出来ていたでしょうか……」


シエラは不安そうにマコトを見つめている。


「あぁ、もう最高だったよ! あんなの今まで聞いたことがなかった……ほんと、いいことはするもんだな」


マコトは演奏を聴いているうちに、吐き気もすっかり失せて元気になっていた。

もしかしたら、あの演奏には人々を癒す力があるのかもしれない。


「そうですか、マコトさんに喜んでいただけて私もうれしいです!」


演奏を聴き終わった村人たちは、宴の後片づけを始めていた。


「ほんとすごいよシエラ! 私でもあんな演奏初めて聞いた! ……ところで、その楽器はなんていう名前なの? 私たちの所では見たことがないんだけど」


「これですか? これはオカリナっていう楽器なんです、魔族の間にしか流通していない楽器で、とっても綺麗な音色を奏でられるんです、ずっと昔から形を変えないで受け継がれているんです」


(ほうほう、名前が一緒ってことは、これもお前が持ってきたやつか?)


『うん、綺麗な音色だったから、寿命で亡くなった職人を若返らせて広めてもらったんだ』


(そ、そんな感じで連れてきちゃっていいものなのか?)


『まぁ、ちっちゃいことは気にしない気にしない』


(いやちっちゃくねーだろ!!)


マコト達が楽しく念話しているのも知らずに、シエラとクロエはずっと話し続けている。


「へぇー、オカリナっていうんだ……いいなぁー、私たちの国でもはやらせたいなー」


クロエは唇に人差し指を立ててじーっとシエラのオカリナを見つめている。


「こ、これはダメですよ!? これはお母様に貰った大事なものなんですから!」


シエラは、とられまいとオカリナをぎゅっと抱きしめた。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 私だってとろうとはしてないわよ! ただ、作り方とか教えてほしいなぁーって」


「あぁ、そういう事ですか……それなら大丈夫ですよ、きっともうすぐ迎えに来てくれますから、きちんと話しをすればきっと分かってくれます」


シエラがそう言った瞬間、クロエの表情が真剣なものに変わった。


「そうね……せっかくのチャンスなんだもの、無駄にしないようにしないと」


「……ん? なぁ二人とも、なんの話をしてるんだ?」


「あぁ、そういえばマコトさんにはまだ話していませんでしたね」


「話してない? 何を?」


「実は、マコトが眠っている間に、シエラに王都の人に連絡を取ってもらってたのよ」


因みに、この王都というのは魔族のほうの王都だ。


「王都に連絡? 念話石でも持ってるのか? でも、なんでシエラが持ってるんだよ、たしか念話石は貴重なはずだろ?」


「えぇ、確かに念話石は貴重で、私もお父様の分しか持ってないけど、シエラなら別に持っててもおかしくはないわよ」


「は?」


「マコトさん、ずっと黙っていたんですけど、実は私……」


シエラはニコッと笑ってマコトを見つめた。

そして……


「魔族のお姫様なんです」


「……………は?」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



なぜ一国のお姫様がこんな端っこの村にいるのか、話をまとめるとこうだ。


元々シエラは長女として魔族の王様とその妃の間に生まれ、皆からは姫と呼ばれていたような女の子だった。

父親よりも母親が好きだったシエラは毎日母親の元で遊んでいた。

だが暫くすると、大きな病を抱え、目が見えなくなり、徐々に体の自由を奪われていった。

オカリナの吹き方を教えてくれたのも母親だった。

目が見えない上に、うまく動くことのできないシエラを、神はまだ傷つけた。

なんと、召使いに扮した謎の男が、シエラの寝室に火を放ったのだ。

すやすや眠っていたシエラはそれに全く気が付かず、なんだか熱いなーと思って目を覚ましたら、辺りはすっかり火の海と化していた。

そのうえなぜか、部屋の外には火が燃え広がっておらず、その異常事態に気が付いたものはいなかった。

シエラは迫りくる炎から逃げようとしたが、身体がうまく動かせず、唯一うまく動かせる口で助けを呼ぶしかなかった。

だが、いくら助けを呼んでも、なぜか部屋の外には声が全く届かなかった。

そんな絶望的な状況の中、突如扉が開いた。

そしてその扉の向こうに立っていたのは、なんとシエラの母親だった。

シエラの母親は燃え盛る炎の中に飛び込み、なんとかシエラを連れ出して逃げ出そうとしたが、炎でもろくなった天井が崩れだし、二人の元へ落ちてきてしまった。

娘を守ろうとシエラを庇った母親は、そのまま天井の下敷きになり、身動きを取ることが出来なくなった。

徐々に息苦しくなり、薄れゆく意識の中でシエラと母親はある約束をし、そのまま意識を失った。

シエラが気が付いたころには、全身包帯で、体中に激しい痛みが走っていた。

そしてさらに絶望を突きつけるように、母親の死を知らされた。

そのあと父親が娘を思い、念話石を持たせた後でこの村に来させたらしい。


「……なんか、そんな話を聞いてると、世界が残酷に思えてくるな」


「えぇ……そんなに小さい頃から、そんなにひどい目にあってきてたなんて……」


マコト達は今、シエラの住んでいる家に帰ってきていた。

村の人たちから貸してもらい、机や椅子などの家具が増えている。


「お母様は戻らないにしても、私の病気や火傷は治してもらいましたから、私はもう大丈夫です、ちゃんと最後にお母様と話をすることもできましたし」


「……そういえば、シエラはお母さんとどんな約束をしたの?」


クロエも最後に母親と約束をし、ずっとそれに縛られて生きてきた、それだけにシエラがした約束について気になるのだろう。


「そこまで大した約束はしていませんよ、ただ、自分の好きなように生きてほしいって、それだけです」


「そっか……」


「……なぁシエラ、実は俺たちも、小さい時に親を亡くしてるんだよ」


「えっ?」


突然の告白に、シエラも思わずキョトンとしている。


「ちょ、ちょっとマコト、話が急すぎるってば」


「いいんだって……だから、お前の気持ちはよーくわかる、俺はとっくの昔に立ち直ったからいいし、クロエも徐々に立ち直れて来てる、そんで聞きたいんだけど、シエラは母親の死から立ち直れてるか? もしまだ立ち直れていないんだったら力になりたいと思うんだけど……どうだ?」


早口で言うものだからシエラも少し混乱していたが、徐々に理解が出来たようで、はっきりとした口調でマコトの質問に答えた。


「はい、私はもう大丈夫です、一人で考える時間は嫌と思うほどにありましたから」


「そうか……それならよかった」


マコトはシエラに向かってニッコリと微笑んだ。

どうやらシエラは、マコトが思っていたよりも強い子のようだ。


「うし、じゃあ迎えが来ちゃう前に、村の人たちにお別れを言ってこないとな……あ、そういえば迎えはいつぐらいに来そうなんだ?」


「えーっとですね……ちょっと前妖精さんから聞いた話によると、明日の昼くらいには来るようです」


「そうか、じゃあ今日は遅いし挨拶は明日でいいか……はーぁ、今日は色々と疲れたなー……よし! 今日はもう寝るとするか!」


「そうですね、今日は三人で寝ましょう」


「……えっ? 俺もここで寝るのか? 昨日みたいに村の人に泊めてもらうんじゃないのか?」


「はい、マコトさんとはもう少しだけお話ししたいですし」


「いや、でもそれは二人に悪いし……」


「いいじゃないのマコト、それに、いくら優しいからって村の人に甘えるのは良くないわよ」


「いやいや、昨日村の人に泊めてもらえって言ったのはクロエじゃ……」


「マコトさん、今夜はいっぱいお話ししましょうね」


シエラはマコトを見てニッコリと微笑んだ、この笑顔を見ると中々に断りにくい。


「え、あ……はい……」


(なんでこんなことに……)


『まぁいいじゃないか、せっかくの親睦を深めるチャンスだよ』


(おいチビ、この場面でその言い方は、少しいかがわしく聞こえる気がするんだが?)


『ふふふ、気のせい気のせい』


「はぁー……まぁいいや、疲れたし寝よう……」


こうして、マコト達は、狭い家の中で並んで寝ることになるのであった。

因みに、やっと気持ちよく寝れると思ったマコトは、シエラが次々と質問攻めをしたせいで、この日はほとんど眠ることが出来なかった。


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