第4話 床屋に行ったときに本当に起こった話

 あのー、これはですね、ぼくが床屋に行ったときに本当に起こった話なんですけど、ある日髪の毛がすごく伸びていましてね、それは呪いの人形の様に伸びていたんです。それでこれは良くないなー嫌だなーと思って床屋に行ったんです。あれは今思えば、行かなければ良かったと思うのですが……

 ドアをぎぃっと開いて床屋に入るとですね、理容師さん、男性の方がいらっしゃいませと話しかけてきまして、それでカットをお願いしたんですね。そうして椅子に座りまして、理容師さんにどのくらい髪を切るかの注文をして切ってもらっていました。

 暫く切ってもらっていますと、ふと店の外にある赤青白のストライプが回転しているものが目に付きましてね、

「そういえばあの外でぐるぐる回っている赤と青と白のあれ、一体何なんですか」

と聞いたんですね。そうすると理容師さんはそれまでサクサクと切っていた鋏をピタッと止めて、

「あぁ、あれですか、あれはですね、昔理容師は外科も兼ねていたそうでしてね、赤色は動脈、青色は静脈、白色は包帯を表しているそうなんですよ。その名残で今も床屋を表す目印にあれを使っているんだそうです……」

と意味ありげに答えました。そうしてまたサクッ、サクッ、と鋏を動かしはじめました。そうして考え始めてみますと、本当はこの人は外科なのではないだろうか、そうして私を解体するつもりではないだろうかと思いましてね、そうして鋏を見てみますとあの妖しく光る鋏は冷たく理知的でして、兇器としてこれより優れたものはないのではないかと、心臓がどきどきどきどきし始めました。汗がすぅっと首筋を伝って背中に落ちました。

 そうして髪の毛も切り終わり髪の毛を洗うところへと案内されましてね、そこに座って仰向けの状態で頭を洗面台に置いて目をつぶっていますと、上からばさっと布を被されましてね、これはまるで死人にかける白い布ではないかと思って、目は塞がれている、首は曝け出している、相手は兇器に鋏を持っていると思うとわたしは急に怖い、無性に怖い言いようも無く怖いと感じ、急いで店から飛び出しました。走っている後ろからはお客様!お客様!と理容師が叫びながら追いかけて来まして、追いつかれたら殺される、追いつかれたら鋏でばらばらにされてしまうと必死になって命からがら逃げて来ました……

 皆さまも床屋に行くときはくれぐれも気を付けるよう、というお話でした……

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日常生活日記 水金 @mizukane

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