第2話 腕の回転について

 名城線に乗っている。車内にアナウンスが響き渡る。

「……名城線右回りです。……clockwise」

 日本語で言うと右回りであるのに、英語であるとclockwise(時計回り)と説明するのだなと思う。


 私はあまり右回りという表現があまり好きではない。

 回転運動はデカルト座標でr半径、θ角度とすると

(x,y)=(rcosθ,rsinθ) ……(式1)

と表現されるが、

(dx/dθ,dy/dθ)=(-rsinθ,rcosθ) ……(式2)

(0<θ<π)の範囲ではdx/dθは負であり左方向への移動

(π<θ<2π)の範囲においてはdx/dθは正であり右方向への移動となるためである……数式での説明はいらなかった気がする。

 とにかく、右回りなのに左にも移動することがどこか突っかかるのである。そこで時計回り、反時計回りを私は使っている。一応、日本語では「のの字」と言う言い方もあるが対義語を寡聞にして知らないため使わない。


 さて、日記タイトルは「腕の回転について」である。これは現在頭を悩ましている問題である。

 ストレッチの際に腕を回すことをみなさんは何というであろうか。水泳のバタフライの様に腕を上、前、下、後ろと回転させることを前まわし、背泳ぎの様に腕を上、後ろ、下、前と回転させることを後ろ回しと言うと思う。ここで先ほどの問題が再浮上する。前まわしにおいて上半分で腕を回している際には確かに前方に腕が進むが、

下半分で腕を回している際には後方に腕が進んでしまうのである。


 この問題を解決するために時計回りを採用するのは不適切であると思う。「腕を時計回しにしてください」と言われたら(おそらくお笑いコンビ流れ星のひじ神様の踊りが見られるのではないか)右側から見て時計回りに腕を回す……くどい。バタフライの腕の回し方……時計回りに比べて微妙に長い。どうにかしていい表現はないのだろうか。今日も逡巡は続く。(ちなみに英語ではfront arm swing, back arm swingというらしい、同じかよ)


P.S.

 時計の概念は6000年前には存在している。影を日時計にすればいいので概念の獲得は容易である。とすれば日本でも時計回りという表現がマジョリティになっていてもおかしくないと思うのであるが、なぜか微妙に引っかかる右回りがマジョリティな表現となっている。歴史的な経緯を誰か知っていたら教えてほしい。

 南半球では時計回りはどちらの回転方向になっているのだろうか、現在では北半球と同じ方向を採用していると思うが、かつては日時計の方向である反時計回りを時計回りとしていたと思う。転換点はいつだったか。知っている人がいたら教えてほしい。

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