日常生活日記
水金
第1話 歯磨き
今日も寝入る前に歯を磨く。最近歯医者に行ったのもあり、丁寧に磨く。
2か月ほど前にふと思い立って行った歯医者では歯周病に罹っているから丹念に歯茎も磨けとのことと、虫歯が10本ほどあるから治療するとのことであった。歯磨きはそれなりにやっていたつもりであったのだが、結果はそうは言っていないので改善を行っていく必要がある。幸いにも虫歯は進行していないのでどの歯も一回で治療を終わらせることが出来、治療時もほとんど痛みはなかった。しかし歯医者は毎回一本ずつしか治療をしてくれない、一気呵成に歯を治してくれればいいものとと調べてみたらどうやら保険の点数がどうとかの話で無理っぽかった。社会人になって虫歯10本できたら仕事に忙殺されることで通院の間隔が開きすぎて治療している間に虫歯が進行していくのではないかと思う。
そういえば親不知も抜くと良いと言われていたのであった。生え方がまっすぐではなく斜めに生えているので歯としての存在意義がないと言われた。歯は真っすぐ生えた上の歯と下の歯のすり合わせによって食べ物をすりつぶす。斜めに生えた歯は面ですりつぶすことは出来ず、線ですることしか出来ないわけだから意味がないとのことである。おまけにこの歯は虫歯となっており、斜めに生えているために隣の歯を傷つけうるとのことで、存在意義がないばかりか、存在が他の存在に害をなしているのであった。この世に必要のないものはあるのだなと思った。私自身がこの世に必要かと考えようかとも思ったが、面倒くさいのでやめた。哲学は面倒くさいというのは父からの教えである。
丹念な歯磨きを終え、歯磨き粉を伴った唾液を吐き出す。洗面所のシンクに赤い飛沫が散る。この出血は歯医者の歯磨き指導の成果の1つである。歯周病の歯ぐきは強く磨いて血を出した方がいいとは歯医者の弁であるが、血を出すことが良いという概念は24歳にして初めて体感した気がする。中世ヨーロッパの瀉血療法は医学的根拠はないとされているが、歯ぐきに関して言えば医学的根拠はあるらしい。歯周病で不健康な歯ぐきだと言われたので、ではそもそも健康な歯ぐきとは何かと、健康な歯ぐきで検索したが、鮮やかなピンク色で無機物たる歯を固定している様が映し出され、グロテスクだな、と思った。そもそも人間の部分部分をまざまざと見たらほとんどグロテスクなもので構成されていると思う。人間の大半を覆っている皮膚からしてグロテスクなのだからしょうがない。無数の溝が存在し、縦横無尽に雑多に刻み込まれている。区画されていない土地の地図に似ていると思う。眼や唇や鼻や耳、どれをとってもよく見るとグロテスクである。そういう風に考えると、よく見ても気持ち悪くないのは髪と爪ぐらいであって、人間の気持ち悪くない部分は無機物によって担われているのだなと思う。他の哺乳類は全身を毛で纏っている。類人猿も毛むくじゃらだ。進化の過程で毛の専有面積をなくしていったと考えると、人間の進化の歴史は気持ち悪さの獲得の歴史なんだなと思った。
しかしどうにかこの気持ち悪い歯ぐきをきちんと守っていかないと、老後のQOLに直結していくのでこれからは歯磨きをちゃんと頑張っていこうと思う。気持ち悪いからといって粗雑に扱っていいものと大切に扱うべきものがあるのだなと思った。
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