二章 こんな魔物使いの選択肢

1、こんな生活力無しの金策

―――1

 拝啓、ばあちゃん。

 いかがお過ごしでしょうか?僕はクソゲーファンタジーの世界で生きています。

 少々変わった人々ですが、新しい家族を作ることが出来ました。

 いや、正確には人では無いのですが、まぁ細かいことは置いておきましょう。

 一匹はロリコンで、もう一人はとても頭が残念なメイドです、ドMな萌声のイソギンチャクがペットとして付いてきました。

 それと、念願の妹も出来ました。

 もうこの子が可愛くて可愛くて、あぁ、僕はロリコンではありません、この気持は父性というか保護欲というか。


 と、ここで筆を止めた。

 だいたいうちの婆ちゃんはこの世界に居ねぇよ。どうやってこの手紙を届けるんだよ、届くなら手紙より俺を届けてくれよ。


「婆ちゃんの作った漬物食いたい、レアカードの出ないスマホゲーしたい・・・」


 軽いホームシック状態に浸って頭を抱えてみるが、結局どうにもならねぇし。

 何度寝て置きても、いつものシングルベッドに戻っていないし。


「はぁ」


「お疲れですかタクヤ様」


「タッシェル・・・まて、いつからそこに居た・・・」


 おかしい、この部屋にはオレ一人だったはずだ。

 珍しく日の出前に目が覚めて、水を一杯飲んでから服を着替えて、なんとなく物思いに耽っていたらばあちゃんを思い出して、そして無駄に筆を握って手紙を書いていた。


「タクヤ様がベッドに入られてからずっと」


「おかしいだろ!?お前はアエラの部屋で寝ることになっているだろう」


「ご主人様が就寝中に何かあってはメイドの恥ですし、それに寝る前に私が必要になると思いまして」


「なにに!?夜にお前が必要になる事なんてn」


 不覚にも股間に熱いものを感じる。


「さすがタクヤ様、お若い」


「お前も平然とした顔で言うなよ、ってかそういうのは必要ねぇよ!」


「本当ですか?」


「ホントウデス」


 嘘を付いてごめんなさい。


「分かりました、今後は添い寝だけにとどめておきます」


「以前は何か凄いことをしていたような言い方やめてくれませんか」


「添い寝は否定されないのですね?いえ、それ以上をお望みでも」


 若干頬を赤くしているタッシェルに、若干前かがみの俺。

 なんだこの光景は・・・。


「たーくーやーどのー」


 その声に驚いて振り向くと、窓の外には赤く輝く瞳でフェンリルが顔を覗かせている。


「我も添い寝したい」


「黙れロリコン犬、大体お前には牛を守るという大事な仕事があるだろう」


「やはり雌か!雌犬の方がいいと申すか!」


「フフッ、駄馬ではこの部屋にも入れまい」


 俺に向ける表情とは変わって、もの凄いドヤ顔を決めるタッシェル。


「くっ・・・憎い!この体がコレほど憎いと思ったのは初めてである!」


 この二人はとにかく仲が悪い。

 以前、フェンリルに何が気に食わないか聞いてみた。

 人の姿をしたウーと獣の姿をしたループは祖先を同じにしていたが、いち早く人間に従属したのがウーで、それ以来この二種は対立しているそうだ。


「そうよ、ダーリンと一緒に寝るのはこの私だけでいいの」


 ヌチャっと掴み、殺意を持って全力で床に投げつける。

 小気味いいビターンという音と、グッタリとするイソギンチャク。


「逝きゅ!」


 こいつの場合、揶揄でも無く本当にあの世に行っているだろう。

 頼むから早く残機なくなってください・・・。

 ちょっと前まで静かで穏やかな朝だったのに、どうしてこうなった。

 返して、ミーニャとのホノボノ日々を返して・・・。


「ミーニャ達が起きる前にウサギの世話しよう・・・体動かして色々忘れよう」

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