―――4
「タッシェル!貴様、主人を裏切るのか!!」
「ご主人様、この場を持ってお暇をいただきます」
メイドはそう言うと、俺の方を見て微笑みの表情を浮かべた。
「スライムよ!その半獣も、冒険者もろとも溶かしてしまえ!」
スライムは体の一部を突出させて、そのまま俺たちの方へ体を放出してくる。
俺達はそれに触れないよう、とにかく体を四方へ投げ出す。
「メイド!」
「タッシェルでございます!」
「タッシェル!一つだけ逃げ出す手がある!」
俺はそう叫ぶと、飛び出てくるスライムの体を飛び越えてタッシェルの元に降りると、彼女を抱き上げると、スライムに背を向けた。
ただ、走る。スライムも体を伸ばして、出口のへの道を塞ごうとする。
「タッシェルは目をつぶって、この後何が起きても取り乱さないでくれ」
「はい」
即答だった。
命がかかっているような状況で、出会って間もない男のいう事をこんなに素直に聞けるもんだろうか。
いや、深く考えている時間は無い。
この状況で俺に残された武器はたった一つだけ。
俺はタッシェルを抱いた状態で、目一杯、足に力を込めて、スライムの腕を飛び越えようとする。
「行くぞ!」
俺の背丈程に近い太さはあるだろう、スライムのその腕を飛び越えようなんて思っちゃいない。
人を抱いて飛べる高さなんてたかが知れてる。
下半身がスライムの腕に触れ、勢いでその柔らかい体を突き抜ける。
こびり付いたスライムの破片は服を溶かし、そして下半身には焼けるような痛みが。
クッソ、痛い・・・痛い・・・いてぇ、泣きそうだ・・・。
【GAME OVER】
『無茶な事を』
俺は下半身に感じた痛みで息が止まっていた。
最初は火傷ぐらいかと思っていたが、皮膚が溶け、中の肉が焼かれる痛みは想像以上だった。
「い、いいから、復活させてくれ」
『それが私の仕事ですから、もちろん復活させてあげますよ』
神はそう言うが、景色はすぐに明るくならなかった。
『タクヤ、このまま戻ってもまた同じことになりますよ?』
「んなこたぁわかってるよ」
『ではなぜ?』
「今の俺に出来るたった一つの力はこの甦りだけだ、だったら脱出できるまで繰り返す」
『仮に脱出できたとしてその先はどうするのですか』
「いいから復活させろ、今はコンマ一秒でも早く」
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