―――2

「ダーリン助けて」


 聞き覚えがある声なんですが?


「・・・・・・・ご主人、この中には何が?」


「見たいかね?私はこういう趣味は無いのだが、物好きもいるのだよ」


 商人がシーツを剥がすと、中には見覚えのある、ヌルヌルした体と触手。


「ダーリン!!」


「カバーかけて!!早く!!キモい!!!」


 もう二度と見ることは無いだろうと思っていたイソギンチャクに、思わず日本語が。


「ダーリン助けに来てくれたのね!」


「ちげぇ!お前を助けに来たわけじゃねぇよ!!」


 商人は少し怪訝な表情をして


「君はそういう趣味かね」


 違います!触手にまみれてアーッな趣味はありません!


「い、いえ、これは無いですね」


「そんな、酷いっ」


 頼むからその萌え声止めろ。


「そうかそうか、しかしお前が連れて来たあのフェアリー、あれは珍しい、本来のフェアリーというのは・・・」


 商人・・・いや、デブは近くにあった鳥かごを手に取ると、中にいたフェアリーを鷲掴みで取り出す。

 フェアリーは力無さそうに、その小さな手でデブの手から逃れようとするが、どうにもならず、呻き声を出すだけだ。


「こう、人間に対し敵対心をむき出しにして、いつまでたっても従順にはならない」


「はぁ」


「お前のフェアリーは私の前で泣いて見せたな、アレは良い、それに赤髪のフェアリーは※※だ、言い値で買おう」


「それはありがたい、でも、金は要りません」


「では他のものが欲しいと?」


「ええ、ここにいる全ての魔物と、お前の逮捕だ」


 ビシッと指を伸ばして、商人の鼻先を指す。

 すると商人はニヤリと笑いながら肩を揺らし始めた。


「ふ、ふふはははは!そうか、お前が王都から送られた刺客という訳か」


 え?いや、そういう訳じゃ・・・。


「私もバカではないぞ、数年前から目を付けられていた事ぐらい分かっておるわ、こんな若造一人で私を捕らえられると、その思い上がり、許さんぞ!」


「ダーリン素敵!!」


 お前は黙ってて!


 商人が懐から煌びやかな短刀を取り出し、指笛を吹く。


「お前は知っているか?この世で最も邪悪な魔物を」


 お決まりのようなセリフを・・・。この後が安易に予想できるわ。


「不死者でも、獣人でもない、スライムだ」


 ・・・・・・ドラゴンじゃないの?普通こういう時ってドラゴンじゃない!?

 なんだよスライムって、ヒノキの棒でも倒せるよ!俺今レベル8だよ、楽勝だよ。


 完全に気が抜けている、そういう時は大体フラグっていうんだよね。知ってる。

 そして、部屋の奥で壁が砕ける音がして、最奥からズルズルと音を立てながら近づく。


「・・・・デカくない?」


「おっきぃ♪」

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