7、こんなフェアリーは間違っている

―――1

 北の森は村の中心街から防護壁を、文字通り北に抜けて街道をまっすぐ進んだ先に広がっていた。

 衛兵の話では、この森を貫く街道をさらに進むとアンバグルブの王都があるそうだ。

 冒険者たちの話では、こことは比べ物にならないほど賑やかで、このこの世界にあるギルドを統括するギルド本部もそこにあるとか。

 まぁいつか行ってみたもいいかな。

 いやまて、まだミーニャ達から離れる事はちょっと・・・。ならいっそ一緒に・・・。

 ほらほら、こんなに沢山の人が居たら迷子になっちゃうだろー、しっかり手を繋いで歩こうねー。

 あ、美味しそうなお菓子が売ってるぞー、よーしおにいちゃん農場で働いたお金で、なんでも買ってあげちゃうぞー。


 特に目標もなく、妄想全開の締まりのない顔で森の中を歩いていると、急に体が軽くなり、眼前の景色の天地がひっくり返る。

 足には蔦の様な物で作られた縄が巻き付き、完全に罠に掛かった獲物状態。

 そして思いの外、足が痛い。

 ・・・まさか足を締め上げられて死ぬとか無いよな・・・。


「獲物じゃー!しばいたれー!!」


 え、待って、こちとら人間ですよ。鹿や鶏とはわけが違うんですよ。


 ぶら下がっている状態で、声は背後の茂みから聞こえてくる。

 そして何かが風を切って飛んでくる音がする。


「ちょ、まてy」



【GAME OVER】


 この光景も久しぶりだなー。

 相変わらず神々しいガメオベラ。


『あら~、タクヤさんお久しぶりー、どうしたの?お仕事忙しかった?たまにはお店に顔出してくれないと、私寂しくて・・・、じゃぁ、今日はビールにする?それともいつもの復活?』


「・・・ビールで」


『未成年にお酒を出すわけないでしょう、バカですか』


「よしわかった、今すぐ俺の前に顔を出せ、お前が女だろうが容赦しねぇぞ」


『ちょっとしたゴッドジョークですよタクヤ、本気にならないでください』


 このクソ神、会う度に憎たらしくなっていくな。


『さて、ここで問題です!』


「いいから復活させてくれ」


『タクヤの残機はいくつでしょう、正解者には、なんとタクヤちゃん人形をプレゼントします』


「お前が持ってるんじゃねぇか!!」


『タクヤの残機はいくつでしょう♪』


「19だよ!今さっき死んだよ!!」


『んー・・・・・・正解!』


 さっきまで真っ暗だった周囲がばら色に輝き、頭上にミラーボールが降りてきて、舞い散る花吹雪。

 やかましいファンファーレが鳴り響き、そして足元にはぼんやりと光る・・・俺人形。


『やりましたねタクヤ、これで一回分チャラですよ』


「頼む、頼むから復活させてください」


 やだ、疲れた、この空間から一秒でも早く去りたい。


『あ、そう言えば新しく買ったお茶があるんです、ご一緒にいかがですか?」


「嫌がらせか?俺が嫌がっていると分かったら時間稼ぎか?」


『そんなことありませんよ?わりと真面目にお茶に誘っています』


「お断りだ!」


『タクヤにはもう少し、心にユトリを持ってほしいという神の粋な計らいを』


 絶対に楽しんでる。さっきから声がはしゃいでいるのには気付いているんだ。


「おーねーがーいーだーかーらー、復活さーせーてー」


『はぁ・・・わかりました、わかりましたよ、神の好意を無下にするタクヤにはヒントもあげません』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る