3、こんな触手は間違っている

―――1

 あれからミーニャを手当てして、何故こうなったかをアエラに身振り手振りと片言の言葉で説明した。

 幸い・・・、俺が死ぬときにアエラが話していた相手は村の衛兵で、ユエールという名前の女性騎士だった。

 ユエールは俺が倒した野盗たちをお縄にかけてから深々と頭を下げてお礼を言った。


「※※※※※※」


「いや良いですよ。アエラさんにはお世話になっているし。村の役に立てて良かった」


「??」


 言葉は通じなくても日本語で喋っちゃうんだよね。癖って怖い。

 それを見たアエラがすぐにフォローに入ってくれる。

 言っていることは分からないが、多分俺が言葉の通じない事とか説明してくれているんだろう。


「タクヤ※※※※お願い」


「お願い?」


 ユエールは俺にも分かるようなゆっくりした口調でこう言った。

 その後、絵や身振り手振りで話を聞くと、どうやらこの村で困ったことが起きているそうだ。

 野盗を二人も素手で退治した俺にぜひとも協力してほしいと。


「いや、良いけど、詳しく」


 ユエールはアエラに出された紅茶の様なものに口を付けると、紙に木炭でできたチョークで絵を描き始めた。

 見ると、村から女の子が長い紐の様な物で洞窟の中に連れていかれている。

 洞窟の中には・・・なんだろう、プリンに目と口が付いたような奴が居て、そいつから延びる紐で女の子を鞭打っている。

 ・・・まぁ事情は伝わった。伝わったが、この絵柄。

 ユエールは騎士だけあって体がガッチリしていて背丈も俺と変わらないぐらい大きい。顔もかわいいとは違い、きりっとした凛々しい大人の女性、髪の毛も短く切っており凛々しさに拍車がかかっている。

 そんなユエールが、まるで女子高生が描くようなかわいらしいキャラクターと女の子を描いて、真面目な顔で俺に説明してくる。

 必死なのは分かるが、笑ってしまう。


 俺はユエールが説明し終わると、絵を指さして。


「ユエール、コレ可愛い」


 そう言った。ユエールはキョトンとした表情を見せた後、顔を真っ赤にして俯いた。

 それを見ていたアエラもクスクスと笑う。


「※※※※※!」


 あら、怒らせちゃったかな?

 そう思ったがユエールも顔が赤いまま笑顔になって俺の背中をパン!パン!と二回叩い・・・ちゃダメだろ。


【GAME OVER】


「ちょっとしたボディータッチでも即死かよ」


『彼女・・・ユエールは女騎士でLv35です。攻撃力も高く、あなたへの二回のタッチで2.5のダメージを与えました』


 熱々の紅茶とお盆より上って・・・結構痛いなおい。


『ちなみに二回目がクリティカルヒットでした、まぁそれは置いておいて・・・あなたは残念ながら死んでしまいました、再度復活しますか?』


「それ決まり文句なんですね」


『規則ですから』


 嫌だわー。こういうの何度も聞いていると本当に自分がゲームの登場人物になった気分になるわ。


『ところでタクヤ、あなたはとてもツイていますね、早速イレギュラーを発見するとは』


「イレギュラー?って、ユエールが言っていた村の女のを子さらうプリン的なアレか?」


『そうです。そのモンスターはリーパーと言って、多数の触手を持ち体はブニブニしていて気味が悪い、見かけによらず体力は多く、素早さは低いものの、その触手を操って攻撃してくる厄介な敵です』


「知ってる。薄い本で何度か見たよ」


『その辺の記憶について私は触れないようにしています、とにかく、そのリーパーはイレギュラーな存在です、ぜひ退治してください』


「・・・思ったんだがやっぱり神様が頑張れよ、なんで俺が頑張らなきゃならないんですかね」


『ではタクヤよ頼みましたよ!!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る