第3話曇りときどき麦茶③

 梅雨真っ直中の今日も、やはり外は雨が降っている。生徒たちが玄関から出てきて、前庭に傘の花が咲く。傘を差す日は、いつも以上に森山さんを容易に見つけることができる。彼女の傘は珍しい形で、普通の傘よりも少しすぼまったドーム型をしており、色は鮮やかな虹色だ。彼女の父親が海外出張の際買ってきてくれたものだというのを、彼女の友人に話しているのを耳にしたことがある。注意しておきたいが、決して盗み聞きではない。

 高校三年生、思春期なのに父親が買ってくれた物を嬉しそうに使っている彼女は、やはり素敵な人だ。ますます彼女のことが好きになった。

 今日の彼女は友人と相合い傘をしていた。彼女は徒歩通学なので、きっと傘を忘れた友人を駅かバス停まで送っていくのだろう。

 森山さんは優しいな。俺も森山さんと相合い傘がしたい。恋人としてなんて贅沢は言わないから、せめて友人として。もし女に生まれていたならば、今頃会話のひとつも彼女と交わせただろうか。

 そんなことを考えながら、図書室の窓から人知れず彼女を見送った。

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