第15話 -起業6-


 第15話 -起業6-


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 僕は、出かける準備をする。

 ついでに銀行に寄って、口座にどれくらいのお金が入っているか確認しておく必要があった。

 机の引き出しに入れてあった通帳を取り出し、上着の内ポケットに入れる。


 それから、出張用のバッグに入れておいた母から預かった封筒を取り出す。

 中には、母からの手紙と現金5万円が入っていた。


 手紙には、励ましの言葉が並べられていた。

 母からの心遣いに感謝して、5万円を財布に入れる。


 そして、葛飾区のアパートを出てから秋葉原に移動した――。


 ◇ ◇ ◇


 電車を乗り継いで30分ちょっとで秋葉原に到着した。


 僕は、ゲームは結構やるので、秋葉原にはゲームを買いに来ることはたまにあったが、美少女フィギュアを売っている店に入ったことは無かった。

 そのため、少し敷居が高く感じたが、仕事のためだと言い聞かせて、こういったものを扱う店に足を運ぶことにする。

 とりあえず、場所を知っている大型店に行くことにした。品揃えも豊富だろうし、素人の僕には丁度いいだろうと思ったのだ。


 店に入って案内板を見ると目的の階は3階のようだ。

 階段で3階に上り、美少女フィギュアの置いてある場所を探す。

 ガラスケースの中に美少女フィギュアを並べて展示してあるところがすぐに見つかった。

 元ネタを知らないものも多かったが、すべて何かしらのキャラクターのようだ。

 アニメ、漫画、ゲームといったものから立体化された美少女フィギュアが並んでいる。


 サイズもいろいろあるようだ。

 見たところ、1/12~1/3くらいの間でいろいろなサイズがあるようだった。

 1/4のフィギュアは、160センチメートルの身長のキャラクターがモデルなら、40センチメートルくらいになるということだ。

 勿論、フィギュアは、何らかのポーズを取っていることが多いので、40センチメートルもの長さがあるものは少ないと思われる。

 1/8くらいのサイズがボリュームゾーンに感じた。

 直立していても20センチメートル前後と手頃なサイズだからかもしれない。


 1/4くらいの大きなものは、2万円を超えているものもあった。1/8だと、価格は1万円前後のものが多いようだ。


『た、高い……』


 正直、僕にはこの値段の価値があるとは思えないのだが、これらの価格で売っているということは、その価格で売れるということだろう。

 確かにインテリアとして部屋に飾っておくのは悪くないと思うが、こういった趣味を理解してくれない人には白い目で見られるだろうと思った。

 ただ、高額で取引されているというのは、これから美少女フィギュアを売って生計を立てようと考えている僕にとっては良いことだ。

 仮に1体1万円で売れたら、月に10体売るだけで生活してゆける計算になる。


 これは投資だと自分に言い聞かせて、1体だけこの店で買ってみることにした。

 悩んだ挙げ句、僕でも知っているようなラノベ原作でアニメ化した有名な作品のヒロインの1/4フィギュアを買った。税込みだと2万を超える金額だった。

 電子マネーで支払いを済ませて、店の外に出る。


 次に銀行のATMコーナーへ向かう。

 平日の15時過ぎだったので、割と空いていた。

[お預入れ]のメニューをタッチパネルで選択する。

 上着の内ポケットに入れておいた通帳をATMにセットする。

 通帳がATMに呑み込まれて、現金投入口が開いた。

 そこに、財布から取り出した5万円の現金を入れる。大抵の支払いが電子マネーで出来るため、現金はあまり必要ないのだ。そして、電子マネーは、クレジットカードを通じて引き落とされる。

[確認]ボタンを選択すると、中で記帳が行われる音がした。

 流石に数ヶ月放置してあったので、処理が長い。

 数分待っていると通帳が吐き出された。

 最後に記されている金額を見ると、200万円を少し超えていた。


 思ったよりも入っていた。

 元々、大学の頃からのバイトなどでも少しは貯めていたので、100万円くらい入っていたはずだが、この数ヶ月で倍になったということだ。

 父が一年分の家賃を前納しておいてくれたようなので、家賃が減っていないということも大きいだろう。

 通帳にザッと目を通したところ、失踪した後、9月と10月分の給料が支払われていた。有給とかの関係で支払われたのだろう。これは、課長からも聞いていた。

 あとは、早速退職金が振り込まれていた。金額は、53万円ちょっとだ。

 決済の速度が高速化されている現代でも異様に早い対応だった。


 ――もしかして、労働基準監督署あたりに訴えられるとでも考えているのだろうか?


 世論がブラック企業に対して非常に厳しい時代なので、激務が原因で失踪したということになれば、会社は大損害を被るだろう。

 失踪理由を説明しなかったので、そういった不信感を拭えなかったのかもしれない。


 それはともかく、意外と軍資金が多いことが判明したので、もう少し美少女フィギュアの売っている店を回ることにした。

 そして、スマホで調べた店を何軒か梯子して、更に2体の美少女フィギュアを買ってしまった。

 また、暇そうな店員を見つけては、いろいろと質問してみた。

 素材や種類など、ネットで一応調べていたし、僕もオタクの端くれなのでフィギュアやガレキといったものについては、基本的な知識は持っていたのだが、流石にこういった店で働く店員は詳しかった。


 今後のフィギュアについて、どんなことを望むか聞いてみたところ、素材を何とかしてほしいということだった。

 基本的に美少女フィギュアは素材がプラスチックなので硬い。かと言ってソフビ――ソフトビニール製――では造形が甘くなる。部分的に柔らかいシリコンなどを使っているものもあるが、まだまだのようだ。

 製造についても、ソフビだと金型が必要で工場に依頼して製造しないといけないため敷居が高い。


 それに、髪の毛などもウイッグのようなものにできないのだろうか? アニメ絵がベースなのでそれだと逆に違和感が生じるのかもしれないが。

 あとは、装備させる衣類や武器などだが、こういったものは、【工房】で相当凝ったものを作れると思う。


 製造に関しては、【工房】のスキルで作成するため費用はかからない――魔法通貨は必要だが――のだが、どうやって作っているのか疑われるのはマズいだろう。

 アリバイ作りのために3Dプリンタを購入するという手もあるが、業務用のものはとても購入できる金額ではない。

 業者に発注するという方法もあるが、とりあえずは、そこまでしなくてもいいだろう。


 僕は、最後に本屋で美少女フィギュアの作成方法について書かれた本を買って帰った――。


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「秀雄、昼間のこと気にしてる?」

「……まぁ、少し……」


 涼子は、秀雄の部屋に来ていた。

 翌日には、仕事納めだったこともあり、秀雄の誘いに乗ったのだ。


 夕方の5時過ぎに待ち合わせて、一旦、涼子のマンションに寄った後、着替えなどを用意してから、スーパーに寄って食材を購入して秀雄のワンルームへ向かった。

 部屋に着いてから、涼子が作った夕飯を二人で食べて、一緒にお風呂に入ってから愛し合った。


 今日の秀雄は、いつもより激しかった。

 昼間のことを気にしているのだろう。

 ユーイチのことはともかく、先輩の話が堪えたのだと思う。


「気にしないで、と言っても無理でしょうけど、あなたが先輩に対抗する必要はないのよ?」

「でも、オレじゃ涼子を満足させられないんだろ?」

「そんなことないわ」

「ホントに?」

「ええ、あなたに抱かれると安心するわ。それは先輩にも無理だったことよ」

「正直に言ってくれ、先輩とのセックスのほうが気持ちよかったんだろ?」

「まぁ、体はね。でも、女はそれだけで満足するわけじゃないわ」


 体の気持ち良さという点では、昨日、ユーイチの使い魔のニンフたちにされたことが先輩に抱かれるよりもずっと気持ち良かった。

 行き過ぎた快楽は苦痛に感じるため、一種の拷問となるが、ニンフたちの愛撫は、その領域に達していた。

 そのため、ニンフに責められるだけなら、もう二度と御免だったが、近くにユーイチが居て、ユーイチに恥ずかしいところを見られたことが涼子を異常に興奮させ、下卑た快楽をもたらしていたのだ。

 昨日のことを思い出しただけで、ゾクゾクするような快感が背筋を走った。


「――――っぁあん……」

「大丈夫か?」

「ええ……」

「…………」

「誤解しないでね。今のは、別に先輩とのことを思い出したわけじゃないから」

「ユウちゃんなら、涼子を満足させられるのかな……」

「プッ、何それ?」

「涼子は、ユウちゃんに抱かれたいんだろ?」

「まぁね。でも、ユーイチとするなら、たぶんあたしが襲う側になると思うわよ?」

「でも、滅茶苦茶にされたいって言ってたじゃん」

「それは、負い目を無くすためによ。その後は、姉として主導権を握るわよ」

「そうなんだ……」

「だから、相手次第なのよ」


 そう言って、涼子は秀雄の上に跨った。


「フフフ……ユーイチにしてあげたいと思ってることをしてあげる……」


 涼子は、秀雄に奉仕し始めた――。


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