第26話 ギン。
火薬と血の匂い。
警戒メーターが一気に振り切れ、行っては駄目だと本能が叫ぶ。
カンナと子供たちの姿が瞼に浮かぶ。
だが俺はあの夜の救い主、その叫び声を聞いた。
地面を思い切り蹴り上げ走り出す、考えている間は無い。
禍々しい殺気が放たれる建物の窓をけ破り飛び込むと、その勢いのまま男に体当たりを喰らわせる。
「ぐはっ」
床に体を打ち付け転がる男と、壁際で咳込み崩れる少女の間に割り入った。
砕けたガラスが降り注ぐ中、驚きに目を見開いた男が身を翻し部屋の隅に転がる短銃に手を伸ばす。
ギンが振り返る。
少女が声を出す。
「君は………あの夜の!」
一瞬だけ交わった深い瞳は、とび色の瞳へとこう告げた。
「生きろ」
男が震える手で弾を込める。
ギンは動かない。
男が銃を向ける。
ギンは動かない。
ノータは告げられた言葉に従った。
跳ねるように立ち上がり、泣き続けている女の子の腕を掴みを突き飛ばすようにして外へ出る。
ギンがほぼ真上に跳躍すると同時に男が喚きながら引き金を引く。
轟音と共に赤い血と銀色の毛が舞った。
ノータの絶叫がこだました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます