第8章 再びあの夜へ ノータ

第22話 揺れる。

 夕食後、両手はパピと戯れながらも、その視線は男の手元に集中させている。

銃を扱う手元を食い入るように見つめ時折、不審に思われないよう視線を外した。

そうしながら頭の中で、何度もイメージを繰り返す。


構え狙い撃つ。


 実際に練習したいけどそれは無理。

長時間持ち出すことは出来ないし、何より撃ったりしたら音ですぐ見付かってしまう。

そうしたら今度は死ぬほどでなく、死ぬまで殴られるかもしれない。


 別にそれで構わない。

私はあいつを、あいつを撃てたら殴り殺されても構わない。

そしたら、父さんのそばに行けるんだもの。


それでも、ノータの心は揺れる。


父さんは言ってた。

「たった1つのパンに、どのぐらいの命が込められていると思う?植物の命だったり、卵だったり、それらを育む大地の命だったり、目には見えてこない沢山の命がそこにはある。だから決して、どんなに小さな命も、大切にしなくちゃならない、無駄にしたらいけないんだよ」


命。

1個にひとつ。

1匹にひとつ。

1人にひとつ。


それぞれ、この世でたったひとつきりの命。

それをこの手で奪おうとしてることを知ったら、父さんは悲しむだろうか。

きっとそうだ。

あいつの命でも、父さんは悲しむ。

父さんはそういう人なんだもん。


でも、無駄にされた父さんの命はどうなるの?


ふうーと息を吐きだし、両手を見詰める。

あの日から、止まったままの時間を見詰める。

そこでノータは考えるのをやめた。


構え狙い撃つ。

構え狙い撃つ。

構え狙い撃つ。













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